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#5 故郷って、こういうことなんだ
優勝すべきコンクールを決めたわたしは、徳島県からご紹介いただいた「徳島県人会 in 東京」にも、なんとかどうにか絡みたくて。
そして色々探っていくと、夫の懸念は「フレンチモンスター」というレストランブランドの邪魔になるような下手をこくのはやめてくれ、ということのようだった。
確かにお菓子コンクールの応募概要をきっかけにお菓子製造について調べてみると、レストランでデザートをお出しするのとはちょっとというか、かなり、考え方が違う。
目の前で作って目の前で食べてもらうレストランと違ってお菓子はお客様の手に渡った後、どう持ち帰られるのか、どんな場所で保管されるのか、
どんなシーンで召し上がるのか、はたまたどなたかに差し上げるのか、それはもう、その行き先はもう、千差万別なわけであります。
だから、賞味期限を決めるのに検査したりその期間ちゃんと日持ちするパッケージを検討したり、「素敵」だけじゃ許されない「お客様との約束」が色々があって。
だから当然、県人会で販売できるような仕上がりには、まだまだなっていなかった。
でも私は。
このお菓子を食べて感想を言い合っている「徳島の人」にまだ会ったことがなかった。会いたかった。
だからなんとかしたいと「レストランのPRとしてお菓子を持って行って、
皆さんに試食してもらうマーケティング企画」としたらどうかと。
夫を説得し、徳島県人会の事務局の方に正式に申し入れをし、上原くんに、たくさんお菓子を作ってもらった。
「月へ鳴門へ」というブランド名は伏せてレストランのパンフレットを作ってフレンチモンスターの鳴門金時のお菓子ですって来場された皆さんにその場で召し上がっていただけるよう裸のお菓子をペーパーでキャラメル包みにしたものをお渡しした。
果たして。
この1日は、私にとって、財産となる大切な1日となりました。
「故郷って。こういうことなんだ」
私は千葉県のベッドタウンで生まれ育ったので「故郷」ってあまり実感がなくて。だから、皆さんの徳島愛に、本当に驚いた。
会場では阿波踊りのショーを見ながらお食事されたり、徳島をテーマにした映画が上映されたりして皆さん本当に誇らしそうに楽しまれていたのが印象的でした。
徳島銘菓をつくっちゃおうって、それ、わたしにできる仕事なの?ってむしろ心配になったけれど。
上原くんが作ってくれた「月へ鳴門へ」は雄弁に、徳島愛を奏でてくれました。
「これ、ほんとうに美味しい!買いたいんだけどおいくら?」って何度聞かれたことか。
中には、「あのね、鳴門金時の甘さをもっともっと引き出すにはね、じっくり焼き芋状にするのがいいんよ」って耳打ちしてくださる方もいらっしゃった。
「月へ鳴門へ」は大丈夫。
100人の徳島の人が召し上がって、皆さん笑顔だった。美味しいって言ってくれた。このお菓子で、徳島の魅力を伝えていくことがきっとできる。
根拠のない自信に少し、徳島の皆さんにおかげで、土台が出来上がった体験でした。