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頑張っている自分への陶酔【電子書籍「反対側へのダイアリー」制作日誌】

ふれるま たみ子初めてのエッセイ「反対側へのダイアリー:わたしが見つけた、もうひとつの世界」についての制作背景や想いなどを書き綴っています。

第2章 心に抱えていたもの(2017年10月 前半)
■ 11 持ち帰り仕事の日々に家族は【回想】同年10月3日

 異様な私、険悪な私と夫、その波動に息子もまた息苦しさを感じていたのだろう。
 その日も寝室から
「ぎゃーっ」
と悲鳴があがった。泣きわめく息子を抱え、ドタドタドタっと階段を降りてくる夫。
「ヘビがこわい、ヘビがこわい」
(またそれか…)

 私が息子の寝かしつけをしなくなって数ヵ月が経とうとしていた。ちょうど受注した制作物の納品が重なっていたこともあり、夜間作業がないと日々のボリュームをこなしていけなかった。最初のうちは、わけもわからない様子で大人しく夫と一緒に眠ってくれていたが、段々とそうもいかなくなった。

「ママはお仕事?」
 息子の言葉が耳に痛い。癇癪が過ぎて、ひきつけを起こしそうな息子を抱き
「大丈夫だよ、ヘビはいないよ」
となだめるも、なかなか呼吸が戻らない。

「はぁーっ」
と大きなため息をつく夫。モヤっとする。
「ヘビだの鬼だの、いつも脅してるからビビッてるんやないの?」
「そんなこと言ってない。お前の方だろ」
 
 ダメだ…カオス。ここは誰も繋がっていない。
 息子の心も、夫の心も、私の心も。(本文より)

制作背景:頑張っている自分への陶酔

映像やデザイン制作の依頼がいくつか重なっていたこともあり、この頃はずっと夜の作業が続いていました。思えば、ビジネスの内容的に制作業務は向いていなかったのかもしれません。時間をかけてやっと納得のいくクオリティのものが作れますが、それだけで食べていけるほど、数をこなしていくだけのスピードがありませんでした。日中務めている会社での業務、個人の仕事は帰宅してからの作業に限られていたので、残りの時間を育児と家事と仕事の時間として割り振るのはあまりに無謀なことでした。

ですがこの頃は本当に視野が狭く、映像とデザインが専門なのだから「作ることが仕事」という概念を超えられなかった。異様な義務感と頑張っている自分への陶酔もあったのでしょう。心配する夫へ当てつけのような態度をとり、息子に寂しい想いをさせてしまっていた、自分が自分でないようなおかしな時期でした。


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