ペライチ挿絵02

ダイアリーの始まり【電子書籍「反対側へのダイアリー」制作日誌】

ふれるま たみ子初めてのエッセイ「反対側へのダイアリー:わたしが見つけた、もうひとつの世界」についての制作背景や想いなどを書き綴っています。

プロローグ: 猫さまとの出会い(2017年6月1日)

「つまらなそうですね」
 猫さまは私の作品集を見て、そう言った。
「作品がつまらないのは、つくっているあなた自身がつまらないんじゃないですか?」
と、猫さまは続けた。



15年間、クリエイターとしてプロの現場で培ってきたデザインと映像の「技術」を引っ提げ、意気揚々と起業したものの、自分にも自分の価値にも自信のないところを見抜かれたのだろう。クライアントの下僕のように、クライアントの感性を形に起こすだけの、面白くもない作品ばかりをつくっていた。

初めて猫さまをFacebookで見つけた時、そのプロフィール画像に私は釘づけになった。誰もが同じように晴れた日の新緑の中で白い光を浴びながらカメラに向かって微笑んでいるプロフィール画像である中、まったく違う、笑わない自分を貫いた芯の強い眼差しの女性がそこにいた。こんな魅せ方をしている人は他にはいなかった。

 何でも見透かされているような気がして、この人がどんな人なのか無性に知りたくなった。それからブログを読み漁り、Facebookの投稿を追い、今の案件が終わったら絶対にこの人の仕事をするんだと心に決めた。

 書いては消して、書いては消して。何度も迷いながら、まるでファンレターのような営業メールを、勇気を振り絞りエイッと送った。心臓がバクバクしていた。

 ポロンと返ってきたメールを見て、私は驚きで真っ赤になっていたと思う。猫さまからのメールには「知っていました」と書いてあった。それを読んだ私は、たぶんこの先、この人にはずっと頭が上がらないだろうなと、なんとなく感じていた。その後会社の取引先との打ち合わせがあったのに、何を話したのかまったく覚えていなかった。(本文より)

制作背景:ダイアリーの始まり

私がSNS個人事業をスタートしたのは2016年の秋頃だったと思います。その頃は10人程度の小さなCGプロダクションにいて、比較的自由に自分の意見が言えるような立場だったこともあり、会社公認でダブルワークを始めました。当時「起業」で流行っていたプラットフォームがFacebookだったので、その流れに乗りFacebookの女性起業家界隈にダイブします。そこには本当に沢山の様々な「キラキラ起業女子」がいて、皆が独自の肩書きを名乗り、芸能人バリのプロフィール写真で自分というものを競い合って表現しているように見えました。

そんな起業家の中でもとりわけ異彩を放っていたのが、ダイアリーに登場する「猫さま」でした。他の起業女子とは一線を画するような独特の世界観に魅了され、デザイン制作の営業をかけたところから物語はスタートします。

ダブルワーク・育児・夫婦間の感情の齟齬に疲れきっていた私が「猫さま」との関わりで生活がみるみるうちに一変していく。そんな中で感情の変化を記録する「日記」を書くよう勧められるのです。自分の感情と過去の記憶との向き合い、そして夫や家族との関係性の変化は、全てこの出会いが始まりでした。


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