その理由は確かなのか
世の中では商品が売れると、売れた理由について様々な意見が飛び交う。「あれが売れた理由は」「実はココに秘密があるんだ」。ただ、こういった意見が飛び交う一方、きちんとそれを検証する人は少ない。そして柳の下のどじょうを狙って、他社からも同じような商品が登場する。ところが、売れ行きはさっぱり。
中国では売れると聞くと、我先にと沢山の人がそれを真似して売り出す。そしてブームが去るとみんな一斉に販売を終了するという。日本も中国と同様で「なになにが9割」という本が売れた途端、出版社からは我先にと「9割本」が続出し百冊以上の9割本が発刊された。そこにはなんの考えもない。世の中からリベラルだと思われている出版社でさえ先の中国人と何も変わらない。
9割本の中のいくつかは売れたかもしれない。すると出版社は「タイトルを9割にしたから売れたんだ」と思い込み、また9割本を出す。もはや思考停止状態。タイトルに9割と書かれてしまった著者には哀悼の意を表します。
ワークマンでは女性向け店舗「ワークマン女子」を止めるという。ワークマンは元々男性しか買いに来ない店だったが、近年のキャンプブームで女性が買いに来る頻度が高くなった。そこでワークマンは女性向けとして、かわいい色やきれいなウエアを取り揃えた。ところが意に反して売れずワークマン女子は閉店することになった。これも先程の例と同様「売れた理由を捏造」してしまったからだ。
きれいなウエアが欲しい女子はワークマンでは決して買わない。男性と同じウェアが欲しいから、安くて性能が良いウェアが欲しいから。こうした理由で女性はワークマンに来店していたのだ。女性だからかわいいウェアというステレオタイプな考え方が今回の敗北を生んだと言える。
本質を捉えようとしない愚行は、いつも繰り返されては終わりを迎える。経営者は、もしモノ真似をするならば、売れた理由を徹底的に分析し、商品を開発、販売しなければならない。本質がズレたものはたとえ見た目が同じでも全く違うものなのだ。