GⅠ朝日杯FS
序文 血統の証明
2015年の朝日杯は、歴代の中でも特に印象深いレースだった。
まず武豊の平地GⅠ全レース制覇がかかった一戦だったこと、もう一つはその武が騎乗するエアスピネルとライバル・リオンディーズの血統関係にあった。
デビューから2連勝、GⅡデイリー杯を制して1番人気で乗り込んできたエアスピネルは父・キングカメハメハ、母・エアメサイアの良血馬。
対する2番人気、Mデムーロ騎乗のリオンディーズは父・キングカメハメハ、母・シーザリオというこれまた超良血統だった。
エアメサイアは秋華賞馬、シーザリオはその年のオークス馬。つまり2頭の母親は同期としてクラシックを争った仲だったわけだ。ダービー馬を父に持ち、母はライバル同士、その子供が時を経て競い合う…。競馬ファンがいかにも盛り上がりそうなストーリーである。
結果は後方一気で差し切ったリオンディーズの勝利。Mデムーロが武豊のGⅠ完全制覇へ待ったをかけた。そして注目の血統対決は、2頭の母が2005年オークスで演じてみせた、1着・シーザリオ、2着・エアメサイアの結果を再現することとなった。下馬評ではエアスピネルが圧倒的人気だったにも関わらずこの結果に…。当時の多くのファンがこう思ったはずだ。
「やはり血は争えない」と。
※このレースを観たことない方は是非。
レース直後、両ジョッキーが顔を見合わせる瞬間…
痺れます。
2頭のその後の足跡を追ってみよう。
朝日杯を制したリオンディーズは、弥生賞で2着、皐月賞で5着、ダービーも5着で終わった。
その後、菊花賞を前に左前脚浅屈腱炎を発症。一度もレースに舞い戻ることなくその現役生活に終わりを告げた。
一方のエアスピネルだが、菊花賞までクラシックに出走。戴冠は果たせなかったが、その後もマイルを中心とした重賞戦線で活躍。晩年はダートに転向し9歳まで現役で走り続けるも、GⅠ制覇の夢は遂に達成できなかった。
5戦2勝(内GⅠ・1勝) 獲得賞金1億3千万
34戦4勝(内GⅠ・未勝) 獲得賞金4億6千万
どちらがより偉大な戦績といえるだろうか?
より大きなレースを制した。
より多くの賞金を稼いだ。
各々の判断基準によってその評価は変わってくるはずだ。
自らの血統をかけて挑んだライバル対決は2歳GⅠを最後に語られることはなくなった。引退の時、惜しむ声もあったが、2頭の因縁を思い出す人がどれだけいただろうか…。
どれだけ話題を集めようと、戦績次第ではその馬の持つドラマ性は次第にファンの記憶から薄れていってしまう。残酷かもしれないが、それもまた勝負の世界の習わしだ。
別にドラマ仕立てに語られる競馬の世界を批判するつもりはない。私自身、競馬にまつわるストーリーを見聞きするのは大好きだ。某ウマアニメも欠かさず鑑賞している。
だがこうも思う、サラブレッドたちに無理やりドラマやストーリーを押し付ける必要もないだろう、と。
父の意思を受け継ぐ、母の無念を晴らす、たしかに感動的だが、冷静に考えればそれは誰かが書いた脚本に過ぎない。
サラブレッドがひたむきに走る姿は、ただそれだけで美しく、そこに後付けの理由などいらないのだから…。
目に焼け付けよう。
彼らは血統を証明するために走るのではない。
自らの存在を証明するため、今日も走り続けているのだ。
「GⅠ朝日杯
フューチュリティステークス
まもなく出走です。」
見据える先はクラシック戴冠!
" Supremacy Road "へ!!
はじめに
2023年もあと僅か…。2歳王者決定戦・朝日杯FSです。
2歳重賞の中でもとりわけその重要度は高く、次年のクラシックを占う一戦となります。かつてはミホノブルボン・ナリタブライアン、近年では21年のドウデュースなどダービー馬を輩出しています。
今年大きく注目されているのがジャンタルマンタル、ダノンマッキンリー、シュトラウスの3頭、上位人気を独占しています。この中から2歳王者が誕生するのか、はたまた伏兵が現れるのか…。注目の一戦です。
コース攻略
14年に中山から阪神1600へ移設。前週JF同様、向こう正面からスタートする外回りコース。速い流れからの直線で、差し追い込み馬が突っ込んでくることが多いです。過去10年朝日杯に限ると、堅く収まるか穴決着になるか両極端で読みづらく、展開予想だけでなく、当日のトラックバイアスまでチェックして馬券を見極めたいです。
次項では過去10年のデータを参照にしていきます。
本命か穴馬か、好走データを洗う
マイル重賞に勝った馬が有力候補
前走重賞勝ち馬は「4-5-4-14」で9連対と微妙ですが、芝1600重賞勝ちで今回2番人気以内に絞れば「4-3-2-0」と複勝率100%。今回はジャンタルマンタルが該当か。馬券には絡めたほうが無難そうです。
穴狙いの好走パターンはココ
6番人気以下で連対した6頭のうち3頭が前走重賞で1,4,7着でした。京王杯2歳を勝ったモンドキャンノ以外の2頭は、逃げ・先行タイプ。
また残る3頭は1勝クラスもしくは未勝利戦を上がり最速で勝っていました。穴党は、
に注目です。
また①で波乱を演出した2頭は「1枠に入った関西馬」。枠順発表後、この条件を満たしていた場合は激アツです。
OP特別組の評価は?
前走OP組は「1-0-2-22」で1勝のみ。21年のドウデュースです。同年3着だったダノンスコーピオンもOP戦勝ち馬でしたが、この年を除けば不発に終わっており、前走OP特別勝ち馬は基本割引きでいいかもしれません。
ローテーションに注目
・中2週で出走
ベゴニア賞勝ち馬は6番人気以内なら
「2-0-0-0」で勝率100%
今年は坂井瑠星騎手の
オーサムストロークが該当するか…?
・中4~9週で出走
連対した9頭のうち6頭が前走芝1400~1600を
上がり最速で勝利していました。
・中9週以上で出走
サウジアラビアRC組が「3-2-1-5」
それ以外は「0-0-1-16」で不振傾向
サウジRC3番人気以内だったら「3-2-1-1」
以上が朝日杯の気になるデータです。ここから森タイツが本命とする予定の馬を一頭挙げて、今回のnoteを締めたいと思います。
未来のGⅠホースを目指して…本命推奨馬
ジャンタルマンタル
まず前述したとおり、前走芝1600重賞をしっかりと勝ってきた点を評価したいです。また前走が『1番人気で1着(OP特別を除く)』だった馬は「5-2-4-15」と好走データが上積みされます。さらにここで鞍上が川田将雅騎手に乗り替わり。賛否があるようですが、鞍上強化として好意的に受け止めたいところです。というのも直近5年、川田騎手の当該コース(阪神芝1600)の成績は「45-16-24-69」で勝率29.2%・連対率39.6%とまさに驚異的な実績。今年絶好調のCルメール騎手すら上回っています。
新馬戦では発馬を決めてからイン好位につけ、直線でグンと伸び圧勝。京都2歳馬戦のレコードを記録しました。
外国馬血統で、今年の春天を制したジャスティンパレスを半弟に持ちます。本来の距離適性を考えると、1800~中・長距離やダートでの好走も見込めますが、マイルへの適性は前走で見せた通りで、スタートも上手くレースセンスの高さが伺えます。最大のライバルは世代の「怪物」シュトラウスですが、先方は現状折り合いが難しく、安定感でいえば本馬の方に一日の長がありそうです。
最終追切では掛かった様子もなく、川田騎手も手ごたえを感じているようです。大いに期待出来ると言っていいでしょう。
最後に~穴馬2頭を推奨して~
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。
前回のnote投稿後は好意的な反応をいつにもましていただくことが出来、本当に嬉しく思いました。今回もどうにか仕上げることが出来ましたので、少しでも多くの方に読んでいただけるよう今後も努力を重ねていきたいと思っています。おそらく前日夜にはXの方でいつもの指数表をアップできると思いますので、そちらも合わせてご参照ください。
最後になりますが、上位3頭以外で注目してる穴目の馬を2頭紹介して終わりにしたいと思います。中心視するにまでには至らないかもしれませんが、本明サイドの馬にも負けず劣らずな素質馬だと思っています。
展開が向けばあるいは…?
では、また。
オーサムストローク
デビューから勝ちきれない競馬が続いてましたが、前々走の未勝利戦で初勝利を収めると、前走のベゴニア賞でイクイノックスの妹ガルカサブランカ相手に快勝、ポテンシャルの高さを見せつけました。
ベゴニア賞勝ち馬は阪神開催以降「5-1-3-0」と必ず馬券内に入ってきており、軽視は禁物。坂井瑠星騎手は昨年もこのレースをドルチェモアで制覇してますし、今月に入ってからチャンピオンズC、全日本2歳優駿とGⅠレースを2勝しています。鞍上の勢いそのままに好レースを期待したいです。
エコロヴァルツ
7月、福島での新馬戦はパドックで馬っ気全開(笑)も、蓋を開けてみれば好位差しで2着のルシフェルに1馬身差以上つけ勝利。次走函館のOPコスモス賞では他を寄せ付けない圧倒的な走りで確かな成長を感じさせました。
今回は長期休養明けで、初マイル戦・急坂コースと不安要素も少なからずありますが、鞍上・武豊騎手の復帰の報で否が応でも期待が高まります。上位3頭への食い込みは難度の高いミッションとなりますが、+14キロと休養中にスケールアップした馬体で豪快な走りを見せてもらいたいです。ドウデュースの再現なるか…?