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娘がえらんだ日本の学校

ずいぶん間が空いてしまいました。

この2ヶ月半、何をしていたかというと、新しい学校に通う娘のケアとか、自身の仕事の繁忙期をこなしたりとか、3年ぶりの日本の夏を楽しんだりとか、書くことから距離をおいて、日々の生活にフォーカスしておりました。

「~ねばならない」「~しなくちゃいけない」をいったんやめて、自分のやりたいことを優先させています。自分を甘やかす、いたわる、が、今の自分のテーマで(笑)。

さて、久しぶりに書きたいな、と思うことがありました。
それは、娘が通う学校についてです。

アメリカの学校のことはいろいろ書いてきたけど、じゃあ日本に戻ってどんな学校に通っているのか、どんなふうに学校を選んだのかを書いていなかったなーと。娘が新しい学校に慣れてきたいま、書けるかなと思ったんですよね。ずいぶん時間がかかってしまったんですけど。


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↑これは学校で飼ってるカメ

どんな学校に通ってる?


娘が通っているのは、小学4年生~中学3年生までの生徒を受け入れているフリースクールです。たぶん、ここに通うみんなが不登校を経験しているのではないかな? 長く通っている子もいれば、転入したばかりの子もいるし、娘のように海外から帰国(移住?)してきた子もいました。

webサイトを見た時に、アメリカで通っていた学校に雰囲気が似ているなと感じて、候補のひとつだったんです。デモクラティックスクール、サドベリースクールとうたっていませんが、教育理念はイギリスのサマーヒルや、きのくに子どもの村学園のものに近く、娘はこの学校に通うことを強く希望していました。

生徒数は、まぁ、どの学校もそうですが年々人数が変わります。
多い年もあれば少ない年もある。
今年は小・中合わせて10人前後かな。
もう少し人数が増えて、子どもたちの関わりが流動的になったらいいなーと感じます。

どんなふうに学校を選んだのか


私と夫、それぞれが「気になる学校」をリストアップして、実際に見学する学校を決めました。
本当はもっと日本各地の「気になる学校」を見学したかったんですけど、 2月は新型コロナウィルスが全国に蔓延しつつあり、2校に絞りました。

娘は、アメリカから日本に引っ越すと決めたとき、自分の意見をもっと聞いてほしかったらしいんですよね。
今回、学校を決めるにあたり、「私も家族の一員だから、家族の話し合いには私も参加させてほしい。どの学校に通うか、決定権は私にもある」と主張してきました。
うわー!デモクラティック!

というわけで、2つの学校を見学し、それぞれの学校の環境やプログラム、自分たちのライフスタイルについて3人で話し合って決めました。娘はほぼ即決だったんですけどね(笑)。


ちなみにもうひとつの学校はデモクラティックスクールで、サドベリーに偏らず、もっと自由な解釈の学校でした。不登校の子どもが通う、というより、自ら進んでその学校に通わせている家族がほとんどで、キラキラしたエネルギーに満ちていましたねー。なので、小学校低学年から中学年の子どもが多く、娘よりも年上の子どもは少なかった。主催の方が、日本の学校の「普通」を持ち込む子どもがいない、と語っていたのが印象的でした。


親としては、どちらの学校も捨てがたく、本当に迷いました。
ただ、娘自身が9歳になり、

・知的なものへの好奇心が強くなっていった(もっと勉強したい)
・年上の生徒と話して、文化的な刺激を受けたい
 (好きなアニメやYou Tube、音楽の話がしたい)

そしてがっつりデモクラティックスクールに身を置いた本人が

「ほんとうの自由は、かなりキツイ! 私は、ゆる~く枠が決まっているところで、その中で自由な切り口で学ぶのが好きだって気づいた」

と言っていて、今の学校を選んだのです。


サドベリースクールに行かなかったわけ
(Deschoolと娘)


サドベリースクールを選ばなかった理由は、娘の言う「ほんとうの自由はかなりキツい」に尽きるんですけど、もう少し彼女の背景から話を深堀りしてみます。

カリキュラム/学習内容が細かく決まっていて、いつまでに○○を覚える、とか、理解するという日本の学校から、いきなり勉強したい内容を自分たちで決め、クラスを選択し、参加するかどうかも含めて自分が判断する、という状況に放り込まれた時に、かなり混乱していました。

言葉の問題もある中で、娘にとっての自由とは、アメリカで最初に立ちはだかった大きな「もうひとつの壁」だったんです。
勉強してもしなくても、好きにやっていいの?ワーイ! みたいなものはみじんもなく、常に退屈と戦い、一日をどうやって過ごすか、毎日頭を悩ませていました。ストレスで甘いものを食べたがったりして、このころは私も毎日学校に付き添っていましたね。

そのときに学校のディレクターに言われたのは
「ハル(娘)は今、Deschoolの最中だからね」
ということ。

「Deschool? それはどういうこと?」 と聞くと、

簡単に言うと、既存の学校教育からの離脱、っていうことよ。ハルは今、これまでの受け身の学習体験から、自ら学びを摘み取る体験に移行しているんだよね。最初は好きなことをして楽しいかもしれないけど、だんだんこの自由が退屈になってくる。それがいつまで続くかは人それぞれだけど、退屈を抜け出すころには、自分の興味や関心のおもむくままにものごとを学び始めるようになるよ。

と、説明してくれました。

このアメリカでのDeSchool体験が、娘の「自由」の概念に大きな影響を与えたのは間違いないんですけど、もうひとつサドベリースクールを選ばなかった理由があります。

それは、このDeSchoolの反動で(?)、逆に決まったカリキュラムに興味を持ったこと。

自分の苦手なことも、授業が決められているおかげで取り組めるメリットに気づいた、ということでしょうか。
自分の好きなことを表現するには文章を書くことが必要で、そのためには読み書きを勉強したほうが良さそうだ。自分ひとりで勉強のモチベーションを維持するには難しいから、システムを使おう。でも、自分の好きなモチーフを使って勉強したい。それくらいの自由度がないとおもしろくない。

娘の気持ちを翻訳するとこんな感じかな?

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↑たいくつーって言われてもなー、と、ぼんやり窓を見てることが多かった(私が)。


学校の学習プログラム


この流れで、学校の学習プログラムについて書きます。

小学生は、週4日の授業でスタートは火曜日から。
国語と算数のクラスのほかに、それぞれのプロジェクトに取り組んだり工作したり。
理科の実験や英語、環境、社会なども入るかな。


そしてアウトドアのクラスでは課外授業や大きな公園に行ったり、農業体験があったりして、娘はこのプログラムが大好きです。一緒に参加してる中学生もやさしいし、研修に来てる教育学部の大学生たちと遊ぶのも好きで、そこから自分の未来の姿を想像したりしているのかもしれません。異年齢ミックス、多様な人間関係のいいところ!


国語と算数は、それぞれの能力に合わせてプリントをやったり質問したり課題をやる感じです。
ここは少人数のよさを享受できているなーと思います。
ていねいに見てもらって、娘の書字が格段にアップしました。書字よりも読字が苦手なので、音を聞いて文字を書くほうが本人はやりやすいようで、オールひらがなですけど、作文も書けるようになりました。
今は頭に浮かんだ自分の意見や物語が逃げないうちに、文字に書き起こせるのが楽しいみたい。字を書くことにハマっています。


まわりのクラスメイトは、小学1年生みたいなことをしてる娘をばかにしたりすることはなく、自分の課題をやっています。その点は本当にありがたいな、って思っていて。みんな、いい子なんですよね。ただきっと、少し繊細なだけで。まわりの子どもたちよりも、いろんなことに気付きやすいだけで。
おかげで娘は自己肯定感が高くて、もしかしたら私、天才かなって思ってるかもしれない。うらやましいかぎり(笑)。


だから大事だよね、学校経営


そうそう、もうひとつ学校を選ぶときのポイントは、学校が継続するかどうかでした。

いくらいい学校でも、経営がうまくいかずに解散ということがあります。小規模な私設の学校では特に。志の高い個人がデモクラティックスクール/オルタナティブスクールを作るにあたって、壁に当たるのはお金のこと。自宅を開放し、生徒からの授業料とボランティアだけで運営しているところもありますが、それだけでは長く存続させるのは厳しい面もあるだろうなと思います。

アメリカの学校は、学校のスタッフと学校運営が別れていて、学校運営のカウンシルメンバーは主に生徒の親、そして外部の人で構成されていました。

授業料はそれなりに高かったのですが、他の私立校に比べるとリーズナブル。でも多様性を重んじる学校では、親の収入に関係なく生徒を受け入れる方法として、親の収入によって授業料を決めることにしました。授業料以外の収入源として助成金と資金調達は欠かせません。

特に資金調達の時期(サンクスギビングあたり)は、いろいろなアイディアでお金を集めていましたね。フェイスブックの資金調達キャンペーンに参加したり、寄付してくれそうな人リスト(ノルマは1人20人分!)を集め、Go Fund meでリンク先を送ったりして(今思うとすげー怖いな…)。


お金持ち私立校は、ガラ(資金集めのチャリティイベント/パーティー)を開催したり、公立校でも修学旅行に行くための資金集めでパンケーキブランチを提供したり、ゴージャスなものからユニークなものまで、お金を集める工夫がすごかったです。

アメリカの資金調達って楽しいものが多かったなって思うんですよね(おそろしいノルマのことは忘れて…)。
これ、楽しそう! おいしそう! おもしろそう! みたいな遊び心があるとみんな喜んでお財布を開いてくれるし、すばらしい理念や高い志だけじゃなくて、人を楽しませるアイディアも、運営には必要なんだなって感じました。


おっと、娘の学校の母体ですが、いくつかのNPOが集まって運営していて、実はなんだかよくわかりません(笑)。
でも、使っている校舎の建物とか、教育大学とのコネクションとか、長年築いてきたものがあるんだなと感じました。その点も決め手になったかな。


名称未設定-1

↑めっちゃ踊ってる2人



ちょっと書こうかな、と思ったら、結構長くなってしまいました。
なにか書きたい欲がでてきたら書くみたいなスタンスが、今は自分でも楽しく、けっこういい純度で続けていけるんじゃないかな、と思います。
自分を甘やかす、自分の心地よさを意識する、しばらくはこの流れに乗ってみようと思います。



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