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『エクスコーダーズ(特別な印を持つ者たち)』

前書き

人は「選ばれる」ことで、幸せになれるのだろうか?
才能を持つことは祝福か、それとも呪いなのか?

この物語は、ある一人の少年が**「選ばれた存在」として運命を背負いながらも、その意味を問い直していく物語である。
日本最大の製薬企業「ミネルヴァ・バイオテック」が掲げるスローガンは、「遺伝子は、選ばれた者を求める。」**
しかし、その言葉の裏には、誰もが知りたくない残酷な真実が隠されていた。

「SSP(スペシャル・サポート・プログラム)」――それは、特異な才能を持つ子供たちを集め、能力を開発する極秘計画。
だが、その本当の目的は、「次世代兵器の創出」にあった。
そして、その計画の犠牲になった少年がいる。
彼の名は相馬海斗

選ばれながらも捨てられ、力を持ちながらも知らされず、戦う理由すら与えられなかった彼は、やがて自分の「真実」に向き合うことになる。

これは、運命に抗い、自分自身を取り戻そうとする少年の戦いの記録である。
――たとえ「選ばれた者」としてではなく、一人の人間として生きるために。



プロローグ:消された真実

遺伝子は、選ばれた者を求める。」

それが、日本最大手の製薬企業――**「ミネルヴァ・バイオテック」**の掲げるスローガンだった。

表向き、ミネルヴァ・バイオテックは**「次世代の医薬品開発と子供の発育促進」**を研究する企業として、世界的な支持を得ていた。
特に、子供の知能向上や身体能力向上を助けるサプリメントを開発し、多くの家庭に浸透している。

しかし、それは表の顔に過ぎなかった。

その裏で、彼らは密かに**「SSP(スペシャル・サポート・プログラム)」**を運営していた。
それは、IQが突出した子供たちを選抜し、“超人的な能力”を開発するための極秘計画だった。

このプログラムの真の目的は、**「能力開発による人間の育成」ではなく、「兵器として利用可能な個体の創出」だった。
政府関係者や軍事組織とも密接な関係を持ち、その成果は「次世代兵器開発」**に直結していた。

そして今――その実験の一環として、選ばれた子供たちが研究施設で育てられていた。

10年前――ある夜の研究施設

「この計画は間違っている……!」

研究施設の奥深く、2人の研究者が緊迫した表情で向かい合っていた。

相馬直哉(そうま なおや)と相馬玲奈(れいな)。
彼らはSSPの主任研究員であり、“選ばれた子供たち”の能力開発に直接関わっていた。

しかし、ある日――彼らは恐ろしい事実に気づいてしまった。

「SSPの実験は、ただの知能開発じゃない。“能力を引き出せなかった子供”は……廃棄される。」

「しかも、その『成功例』は軍事転用を前提にした兵器プログラム……!」

玲奈の手には、一枚のデータチップが握られていた。
そこには、SSPの真の目的が記された極秘文書が保存されている。

そして、彼らはある事実を知ってしまった。

「私たちの息子、海斗も……“選ばれた”のよ。」

直哉はうめきながら吐く、

「こんな実験に、海斗を巻き込ませてたまるか!」

「もしもの時は頼む」――長内との約束

直哉には、学生時代からの親友がいた。
同じくSSPの研究員であり、戦闘能力開発部門の主任を務める長内大輔(おさない だいすけ)。

直哉は、長内に極秘裏にコンタクトを取った。

「もし、俺たちに何かあったら――海斗を頼む。」

長内は最初、冗談だと思った。
だが、直哉の真剣な眼差しを見た瞬間、何かが起きようとしていることを察した。

「お前、何か掴んだのか?」

「……俺たちは、SSPの秘密に触れすぎた。」

直哉は、データチップのコピーを長内に渡した。

「これはSSPの極秘データだ。もし俺たちが消されたら、海斗を連れて逃げろ。奴らは、“子供たちを実験体としてしか見ていない”。」

長内は、データチップを受け取ると無言でうなずいた。
そして――直哉の最後の言葉が、彼の耳に焼き付いた。

「俺たちは、お前を信じてる。」

暗殺――事故として処理された夜

その数日後、相馬夫妻は”事故死”した。

公式発表は、**「研究施設の爆発事故に巻き込まれた」**というものだった。
だが、長内は真実を知っていた。

これは事故なんかじゃない。“処理”だ。

長内は、震える拳を握りしめながらSSPの上層部を見つめた。

彼は知っていた。
自分もまた、SSPの内部にいる限り、いずれ”不要”とされたら消される存在であることを。

だが、直哉の最後の言葉を無駄にはしない。

「海斗だけは、俺が守る。」

第1話:選ばれた子供たち

SSP 研究施設 / 訓練場

暗闇の中で、機械の駆動音が低く響く。

広大な訓練場。
そこに10人の子供たちが整列していた。

彼らは、SSPの被験者。
選ばれた子供たちだった。

その中に、相馬海斗(そうま かいと)の姿があった。

しかし――彼は、何も知らない。
なぜここにいるのか。
何のために”選ばれた”のか。

記憶は曖昧だった。

「第47回戦闘シミュレーション、開始。」

合成音声が響く。

目の前に並ぶのは、戦闘用ロボット。
各子供たちは、それぞれの特殊能力を使い、ロボットを撃破していく。

⚡雷を纏う少女。
🌫霧を生み出す少年。
👀超人的な動体視力を持つ子供。

しかし、海斗だけは動けなかった。
ロボットが襲いかかる。
だが、海斗は攻撃を避けることも、反撃することもできない。

ただ、殴られ、蹴られ、転がるだけ。

研究員たちは、モニター越しに彼を見つめる。

「ハズレだな。」

「防御型の可能性もあるが……この子はこれ以上実験継続の価値はない。」


ロボットの暴走と自爆

⚠ ガシャン――!

ロボットの動きが異常を示す。

「システム異常発生。」
「プロトコル違反。過剰攻撃モードへ移行。」

「――過剰攻撃?」

次の瞬間、ロボットが子供たちに襲いかかった。

叫び声が響く。

そして、生体反応がある相馬海斗に
ロボットたちの照準がロックオンされた!
海斗の前に、複数のロボットが殺到する。

「やめろー!」

海斗は心の中で叫ぶ。

次の瞬間、全てのロボットが異常な形に折れ始める。
装甲がねじれ、関節が逆方向に折れ、機械の中枢に異常なきしみ音が鳴り響く

と同時に――

⚠ 「緊急警告。自爆安全装置、起動。」

――轟音。

爆炎が施設を包む。

しかし、
爆心地の中心には――

無傷の少年が立っていた。

誤解と放逐

海斗は、調査を受けた。

・なぜ彼だけが生き残ったのか?
・なぜ彼は傷一つないのか?

その結果——

「これは……回復能力?」

研究員たちは**「自己修復型のヒーラー能力者」**と結論づけた。
本当の能力には、誰も気づかなかった。

そして——

「戦闘能力がないなら、こいつは不要だな。」

「放逐処分とする。」

長内は、その決定を聞くとすぐに動いた。

「……これで、海斗を助けられる。」

こうして、海斗は記憶抹消のための電極カプセルに入り、記憶を抹消された。
長内は、正式に「失敗作の子供たちの調査員」としての役職を受け、表向きはSSPのサポート研究員として海斗を引き取ることを申請した。

しかし、それはただのカモフラージュに過ぎない。

長内は、SSPの計画を転覆させるために、密かに情報を集め始めた。
まだレジスタンス組織は存在しない。
しかし、確実に”異変”を感じている者はいる。

「このままじゃいけない。」

長内はSSPの動向を探り、彼らの計画の全貌を暴く決意を固くする。

「そのためにはまず必要な情報を集め、やがて同じ考えを持つ者を見つけるのが先決。」

それが、長内の新たな戦いだった。

カプセルから解放された眠った海斗を抱いた長内。

「今日から、お前は長内海斗(おさない かいと)だ。」

海斗はまだ何も知らない。
自分が何者なのかも——本当の”戦い”が、これから始まることも。

次回予告


第2話:「普通の生活」

記憶を失った海斗は、高校生として普通の生活を送っていた。
だが、“違和感”に気づき始める。


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