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EXCoders(特別な印を持つ者たち) 第11話:「目でみるな!感じろ!」
前書き
人は「選ばれる」ことで、幸せになれるのだろうか?
才能を持つことは祝福か、それとも呪いなのか?
この物語は、ある一人の少年が**「選ばれた存在」として運命を背負いながらも、その意味を問い直していく物語である。
日本最大の製薬企業「ミネルヴァ・バイオテック」が掲げるスローガンは、「遺伝子は、選ばれた者を求める。」**
しかし、その言葉の裏には、誰もが知りたくない残酷な真実が隠されていた。
「SSP(スペシャル・サポート・プログラム)」――それは、特異な才能を持つ子供たちを集め、能力を開発する極秘計画。
だが、その本当の目的は、「次世代兵器の創出」にあった。
そして、その計画の犠牲になった少年がいる。
彼の名は相馬海斗。
選ばれながらも捨てられ、力を持ちながらも知らされず、戦う理由すら与えられなかった彼は、やがて自分の「真実」に向き合うことになる。
これは、運命に抗い、自分自身を取り戻そうとする少年の戦いの記録である。
――たとえ「選ばれた者」としてではなく、一人の人間として生きるために。
📖 霧崎からのメッセージ——心の目を信じて
コートの外に退場した霧崎紗月は、額に汗をにじませながら迅也に頭の中で呼びかけた。
(迅也……聞こえる?)
「……霧崎?」
(あなた、目で見てはダメ。感じるのよ!)
迅也は思わず眉をひそめた。
「何を言ってるんだ? 目で見なきゃ、どうやってボールを避けるんだよ……!」
(私の知っている人も、同じ能力を持っていた。だから、あなたもできるはずよ。)
「……誰だ、それ?」
(あなたも……いや、今はそれより集中して。)
霧崎の声が妙に冷静だった。
まるで、何かを隠しているような気がして、迅也は少しだけ引っかかりを覚えた。
「……わかった、やってみる!」
霧崎の言葉を思い出しながら、周囲の空気の流れに意識を向ける。
目を使わず、音、風の動き、相手の気配を頼りにする。
——シュンッ!!!
鋭い音とともに、アレックスの投げたボールが迫る。
(来る……!)
通常ならば、ギリギリまで目で追い、最適なタイミングで避けるところだ。
だが、今回は違う。
視覚を捨てた分、他の感覚が研ぎ澄まされる。
音が歪み、空気が震え、皮膚が僅かな衝撃を感じ取る。
空気が肌をかすめる感触が、まるで軌道を描くように伝わってくる。
「そこだ!!」
迅也は反射的に体を横にずらした。
——風を切るような感覚とともに、ボールが頬をかすめる。
「お、おおおっ!?」
周囲から歓声が上がる。
📖 心の目で捉えた回避
「さぁ、これでどうだ……!」
アレックスが再び直角カーブの球を放った。
——シュンッ!!!
(来る……!)
迅也は目を閉じたまま、その球の存在を感じ取った。
「そこだ!!」
迅也はすっと体を横にずらし、ボールをギリギリでかわした。
観客から歓声が上がる。
「やった……!」
「すげぇ! 今の見たか!?」
アレックスは舌打ちをした。
「へっ……上手いじゃねぇか。でも、これで避けられるか?」
今度は、さっきよりも複雑な変化球——通常の動きではありえないほど、急激なカーブを描いて迫ってくる。
(これは……避けられ……るか!?)
迅也の頭の中で、一瞬迷いが生じる。
その瞬間——
(迅也! ボールがどの辺に来るか予想できるか?)
頭の中に、カイトの声が響いた。
(……右後方、約30度の角度……!)
(よし、任せろ!)
カイトは素早く迫るボールの重心を捉え、時計回りに体を回転させた。
——シュンッ!!シュルシュルー!
片手にボールの回転を感じた瞬間、カイトは無意識に重心を合わせ、流れるようにキャッチした。
カイトは人差し指でボールを回しながら余裕の笑みを浮かべた。
「さて……次はこっちの番だな。」
観客たちが一瞬静まり返った後、驚きと歓声が巻き起こる。
「すげぇ……!」
「あんなに曲がる球を受け止めるなんて!」
「カイト、カッコいい!!」
📖 アレックスの焦り
「な、なんだと……!? そんな……俺の投球を……止めただと!?」
アレックスは明らかに動揺していた。
カイトは指先で回していたボールを軽く弾きながら言った。
「これが俺たちのチームワークだ。」
アレックスは悔しそうに唇を噛み締めた。
「ふざけやがって……なら、力ずくで終わらせてやる!!」
彼はルール無視の勢いで、さらに激しい投球を始めようとした。
しかし、その時——
「カイト、頑張れー!!」
「迅也、負けるなー!!」
「霧崎さん、すげぇ避け方だったよ!」
クラスメイトたちが次々と声援を送り始めた。
「……」
カイトはその声を聞いて小さく頷いた。
「ありがとう……俺たちは、ただ避けるだけじゃ終わらせない!」
迅也がニヤリと笑った。
カイトはアレックスにボールを投げて渡し、
「さぁ、もう一度来いよ、アレックス!」
アレックスは険しい表情のまま、再びボールを握りしめた。
(こいつら……思ったよりやるじゃねぇか。)
「次の一球は、もう“避ける”ことも“受ける”こともできない……お前らの“選択肢”を奪う球だ!」
📖 次回、第12話——「守りの先にあるもの!」
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