すきなもの、こと
「これが好きなんだよね」という内容のお話、私はどうもこの手の話が苦手です。人が好きなものを語っている楽しそうな顔を見たり、その話を聞くのが苦というわけではありません。しかし、自分から「これが好き」と言ってしまうと、なんだか安っぽく、取ってつけたように思えてしまう。
私は確かに「これが好き」なのに。
私は好きなものをなんとなくずっと好きでいて、それを言語化したくない節があります。言語化してしまうとどうも薄っぺらい理由でそれを好きなのではないかとその対象に申し訳なくなってしまうし、自分よりもそれを語れる誰かがいると不安で仕方がない。「あなたはその程度なのね」と思われてしまうのではないか、と、自信がない。
お付き合いしている人がいる場合、「こういうことをしてもらった」「こういうところが好き」という話をするのは簡単です。わがままですが、それはその人を公に特別好きでいられるのは、私だけだから、という理由。
数年前の自分はお付き合いしている人の話を周りの人にそれはもう呆れるくらいしていたのですが、やめました。よくないことだと気づくことができたので。
私が何を好きなのか、知っている人はあまりいないんじゃないかなと思います。
なんだかそれはそれで悲しくて、「あの人はこれが好きだよね」なんて知られていることによって生まれるメリットもあるのか、と気づいたので、最近は「これが好き」と、軽く話すことにしています。
それでも、やっぱり本当に好きなものは独り占めしたくなってしまいます。
だいぶ心が狭い人間なんだと思います。
私には好きなアーティストがいますが、そのことも、言えるときと言いたくない時があります。
ある1曲をきっかけに、いまだに彼の船に乗せていただいています。これからも私は彼に支えてもらいながら立っていくのだと思います。
誰かに聞かせているというものではないので、少し話をしてしまいました。
彼のことも、「好き」なんて少ない言葉で話しているけれど、本当は「好き」だけだと不安になります。
でも、「ずっと好き」なんていうと、期間は関係ない気がする、と思ってしまうし、そもそも「本当に好き」なんて言ってしまえば、むしろ嘘っぽく聞こえてしまう気がして。
好きなデザイナーさんもいます。シンプルなのに安心感もあって、かわいらしい雰囲気の作品を作る方。彼女を追っていまの進路を選びました。
数年前に実際にお会いすることができました。初めて緊張と嬉しさで泣いてしまいました。当時同じ場所から去ってしまって申し訳ないとおっしゃっていただきましたが、そんなこと関係ありません。私はずっと好きです。
ときどき違和感を感じることもありますが、そんなものはどれだけ近しい人でも感じるものなので、嫌いになる要因ではありません。むしろ、ある程度距離があるから好きでいられるのかもしれません。
「好きなもの」ひとつ語るだけでもこんなに難しいと思ってしまいます。「これが好きなんだよね」と私に楽しそうに語る友人はすごいです。好きなものを語れるのは強い。聞き上手になりたいものです。
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