デザイナーの社会人遍歴 【番外編】 ~俺、歌手になる?~
【最終回】プロダクトデザイナー下積み時代編~後編~
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今年40歳になり、30歳までの社会人としての自分を振り返ってきたデザイナーの社会人遍歴。自己満上等の精神で、感動の最終回を迎えました。
実はひとつ、これは書いておきたいな~というお話があるので【番外編】として書かせていただきます。
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90年代カルチャーのひとつであるカラオケ
今年40歳。青春の10代は90年代になる。自分はバブルを体験した世代ではないが、バブルがはじけた後でも余韻がまだまだ残っていて、ファッションや音楽などのカルチャーが凄まじく元気があった時代。
音楽では、ミリオン(100万枚)ダブルミリオン(200万枚)セールスなど普通にあったし、90年代を代表する邦楽バンドのひとつであるGLAYは、伝説と言われている20万人ライブを行うなど、今では考えられない勢いがあった時代に青春を送った。
これだけ音楽にパワーがあった時代。その時代にとにかく流行ったのがカラオケだ。世代の人は分かると思うが、この時代のシングルCDにはインストゥルメンタルというヴォーカルの声が入っていない、曲だけのカラオケ バージョンも収録されていたほど。
高校の友人たちも皆、音楽・カラオケ大好き。高校時代の遊びといえば、ランキング1位だったのがカラオケだった。
今ではひとつの建物内に部屋が分かれているカラオケが一般的だが、昭和の名残で一部屋一部屋が独立した離れの部屋のようになっているカラオケ屋。いわゆるカラオケボックスと言われていた時代のカラオケ屋で、みんなでオールナイトでのカラオケも結構やった。楽しかったな~。
今でもしっかり付き合いのある高校の友人達。皆が皆、なかなかの歌唱力を持っており、中には20代前半で子供2人を授かり、もう子育てを8割方完了している友人は、楽器が弾けないアマチュアアーティスト活動なんかもやっているほど。(←俺がこれまで出会った中で一番コミュ力が高い生命体)
そんな俺も歌には自信あり。専門学校時代にやった合コンにて、友人が女の子に「○○は、ケミストリーのオーディションでテレビに出る一個前まで勝ち進んだ」という大嘘をつき、その後のカラオケで、その嘘を本当だと思わせる事ができたので、そのまま種明かししなかったほどだ。←それほどでもないエピソード
他に歌に自身あるエピソードといえば、いわゆるハモリの音程が、主旋律のメロディが分かれば、自動的に勝手にハモリの音程が分かるという能力がある。
若い頃は、どうやってハモってるのかと良く聞かれたが、感覚的に分かるだけだし、音楽の専門知識が皆無なので説明する事もできなかった。
ゴスペラーズが昔テレビで言っていたが、【相対音感】という能力があると、1音と1音の距離を掴む事ができて、ハモるという事が容易になるそうだ。(絶対音感ほどの希少性のある才能レベルではないみたい)
あとは以前、喋るプロの方と話をさせていただく機会があったのだが、「普通に喋る声が複式呼吸になってますね」「普段の喋りから複式の人は歌が上手」「声の仕事されないんですか?もったいない。」とかなり自分の声を褒めていただいたことなど。
21歳。ブラック印刷会社 完全敗北の時に。
これまで書いてきた【デザイナーの社会人遍歴】の一番最初のお話である、VS ブラック印刷会社編にて、ブラック印刷会社に完全敗北して精神に大ダメージを負い、無職のプータローをしていた期間。
この話の中では、古着屋スタッフを目指すという目標に向かって、再び立ち上がる事ができ 職を探し出す話を書いたのだが、実はここにもうひとつのエピソードがある。
職探し中に求人誌で見つけた【イベント ヴォーカリスト募集】
イベントや結婚式等で歌う、プロとしてのヴォーカリスト募集。1ステージ 1万円~と書かれていた。21歳のぺーぺーだった俺は「1ステージ 1万円?? めっちゃぼろい商売やな!! 」と思った。
大人になった今なら分かる。その1ステージをお金を頂くレベルで歌う。その1ステージの為に、歌詞を頭に叩き込み、何度も何度も何度も練習を重ね、ダメ出しをくらいながら人前で歌えるものに仕上げていく。そうだ、1万円ではとてもじゃないが割に合わない大変さだったはずだ。
そして歌に自信がある俺は、その若さゆえの勢いで応募した。
どの曲でオーディションに臨むか。
歌に自信があるとはいえ、最高のコンディションじゃないと出ない音域がある曲は避けた方がいいと思った。(高音部が出ない曲は論外) どんな状況でも確実に歌い上げる事が出来る曲を選ぶ。そして歌い上げる為には、バラード系がいいな。フフフ…とほくそ笑みながら選曲したのがこれだ。
福山雅治 - Squall
難易度も低めでゆったりした曲調、もうカラオケで歌い倒している一曲。この曲で当日は勝負だっ!!!!!!!!!!
オーディション当日
そして運命のオーディション当日を迎える。
そこは福岡市は天神という中心街にあった「駅から始まるオーディション」というキャッチコピーでやっていた音楽事務所。
女性が出迎えてくれて、名刺をいただいた。その名刺を拝見させていただくと、音楽プロデューサーと書かれていた。裏面に当事務所出身アーティストが書いてあった。
出身者として書かれていたのが、MISIA(長崎出身 高校から福岡) / w-inds 橘慶太(福岡出身) / うたいびと はね(福岡/佐賀 出身)書かれている中で知っているアーティストはこの3名だったが、す.…すげぇ..…となった。
事務所の説明をして下さったのだが、この事務所はソニー・ミュージックと提携しており、半年に1回程度 ソニー・ミュージックの人が来て、その人達の前で歌い、才能を見出されるとソニー・ミュージックに引っ張り上げてもらえるそうだ。(MISIAはソニー・ミュージック所属 高まる信憑性)
そんな話を聞いていると早々に
女性プロデューサー「じゃあ早速歌ってもらいましょうか。オケのCDかテープは持ってきてる?何歌うの?」
俺「あ!あ、はい!福山 雅治のスコールです!」
俺「親が付けたいと思った字の 雅 と親父の一文字を合わせて、当初は雅治っていう名前になる予定だったらしいですオレ!」
女性プロデューサー「あぁ、そう 笑」
歌う部屋に通される。
そんなに広くない部屋だったが暗い部屋にステージがあり、照明がそのステージを照らしていて、ステージの前には席がしっかり作られている。それを見て急激に緊張する俺。
女性プロデューサー「はい。じゃあそこのステージに立って、目の前の席にはお客さんが満帆に詰まっているのをイメージして歌って」
俺「ハイ、ワカリマシタ… (カタコト)」
そして事件が勃発する。歌詞カードが見れない…という。21歳ぺーぺーの俺は、当然歌詞カードを見ながら歌えるものだと思っていた。我ながらぺーぺー過ぎて考えが甘い。まずい…!!!まずいッ!!!と思っている内にイントロが流れてきた。
トゥン...トゥン…♪ トゥトゥトゥトゥトゥトゥ~ン♪ トゥルルル ジャッ ジャーン♪
俺「さっ~きまでの~♪ 通~り雨が~♪」
散々カラオケで歌ってきた曲だ。体が覚えてらぁ!!!!!!
すると、2番のBメロ辺りで
─────── 歌 詞 が 飛 ん だ ───────
俺「・・・・・・・・・・・・・・( ^ω^)・・・」
俺「私~恋をして~いる♪ 苦しいくらい~♪」
サビでなんとか歌いだすことができて、そこの部分以外は歌いきることができた。
女性プロデューサー「は~い!ありがと~。じゃあ最初の部屋にいきましょう。」
(移動)
女性プロデューサー「結果から言うと、不合格」
俺「チョス…」
女性プロデューサー「理由は3つ。途中歌詞が飛んで固まってたよね。プロでも歌詞が飛ぶことはある。でもプロなら、適当にその場で思いついた歌詞を作ってでも歌わないとダメ。 あともう1つは、緊張して僅かだけど声が震えてた。これもお金をいただくレベルにない」
「最後に、人の為に歌っていない。自分の為に歌ってる。」
俺「チョス…」
女性プロデューサー「求人誌っていう媒体に出したから、まったくイメージしてない明後日の方向みたいな人ばかり来ちゃってね.…」
俺「チョス…」
女性プロデューサー「音楽経験が無いってことだけど、本当に無いの?バンド経験とかでも無いの??」
俺「チョス??」
俺「はい!カラオケだけです!!(カラ元気)」
女性プロデューサー「…………......… 」
女性プロデューサー「○○君。才能あるよ」
俺「チョス?? チョス!!!」
女性プロデューサー「今回の募集に対しては不合格だけど、○○君は才能がある。 今回の不合格で諦めないで絶対に音楽は続けて!!!!!」
女性プロデューサー「まずはプロの元でしっかりボイストレーニングをするべきだね!」
(お金だけが目的の不純な動機で来ていて、音楽の道を志していなかったので困惑するも、プロの音楽プロデューサーが、興奮気味に褒めてくれたのが凄く嬉しかった)
女性プロデューサー「ほら!こんなチャンス滅多にないよ!何でも質問して!」
その熱量に圧倒されながらも、なんとか質問を絞り出す。面接で「質問はありますか?」と聞かれたら、何か1つは絶対に質問すると自分の中での決めごとがあったからだ。
俺「低音はかなり下まで出るんですが、高音があまり高い所まで出ないんです。出せるようになるんですか?」
女性プロデューサー「1オクターブくらいまでならトレーニングで出せる様になるよ。鍵盤持ってる? 弾きながらドレミファソって歌って、例えばファ・ソの【ソ】が出ないとすると、出なくてもファ・ソを引きながら繰り返し歌う。これを続けると【ソ】が出る様になる。そしたら次は【ラ】を同じ様に進んでいけばいいよ!」
俺「おぉ~~~」
女性プロデューサー「ほら!他には!」
俺「モウ、ダイジョウブデス…」
事務所を後にした俺は、不合格なのになぜかルンルン♪状態。プロの音楽プロデューサーに自分の歌を認めてもらって才能があると言われた事がめっちゃ嬉しかったのだ。単純野郎だ。
同じ専門学校で、共にブラック印刷会社を耐えた友人に速攻で電話をする。
俺「こないだ言ってた歌のオーディション落ちたんやけどさ!!! めっちゃ褒められてさ!!! ちょ…今晩呑みに行こうぜっ!!!!!」
友人「いいぜ!!!」
オーディション合格したかのようなテンションで報告して、その晩は酒を吞みながら語り明かしたのだった。
もしこの時合格していたら? 人生の進む道が大きく変わっていて、もしかしたら今頃
4大ドームツアーをしていたかもしれない ───────────
書いた内容は嘘や盛ってる箇所(妄想でもドームツアーは盛りすぎである)はなく、記憶に忠実に書いています。19年前の話ですが、自分の中ではなかなかの面白体験だったので、言われた言葉なんか鮮明に記憶に残っています。
当時は結構色々な人にこの話をしたと思うんですが
この話、オチが弱い。
(最後呑みにいくだけ.…)
これにて【デザイナーの社会人遍歴】終わりです!
拙い文章を読んで下さり、ありがとうございました!!!