人生100年時代どう生きる?(後編)
働き方の変革
企業は働き方をどのように変えていくべきか?
企業で働く、従業員の「無形の資産」について。企業はとかく利益や売上など目に見える数字に注意を向けがちですが、従業員が持つ目に見えない価値はなかなか評価できないのです。
まずは、社内で資産の評価を測る努力が必要です。
また、「無形の資産」について、いまの若い人たちは就職先を選ぶときに、会社の社会貢献度や働きやすさなど非数値情報にも目を向けます。したがって、企業側も自社の「無形の資産」を磨く必要があるのでは、と思いました。
ギャップイヤー」のタイミング。
日本の場合、だいたい65から70でリタイアして第2の人生ということになるので、ギャップイヤーはそこから始まるというべきしょうか。本当は在職中にギャップイヤーをとって1年かけて世界を見て回る、というようなことができればいいのですが、そんなことをしたら復職できるかどうかわからないという風潮。
企業文化の大掛かりな革新が必要です。世界を巡っていろいろな経験をするには、やはりお金が必要ですから。人生100年時代に向けて、企業も大きく変わっていかなければいけません。
海外にいけばよくある話なのだが「外国を旅することで自分の国の文化や価値がよくわかった」という声が多いです。いま日本の製造業はグローバルに活躍していますが、世界のためにものづくりをするのであれば、まず世界を知らなければいけません。そのためにはまず社員が海外に出ていく必要があります。
世界を理解するには、まずその場所に自分を置いてみないといけません。
ちょっと休んで別のことをしてみる、というのも大事です。企業もその必要性を認めるべきでしょう。社員が1年間世界を見て回れば、その社員はもっと魅力のある人間になるはず。会社にとっての価値も高まります。
過去に成功体験があると、違う世界をなかなか想像できません。これまでうまくいっていたことをどうして変える必要があるのか? でも、その成功はもしかすると長時間労働に支えられてきたものかもしれません。このような場合こそ、想像力が重要になります。想像力があれば自分には他にどのような可能性があるかについて想像することができるからです。いまあるものとは違うものを想像できるかもしれません。
企業が変わるためには、お手本も大事です。上司が変われば部下も変わることができる。その意味で、管理者がまず自分たちの働き方を変えていかなければなにも始まりません。身近なお手本が人々の想像力を刺激するのです。
想像力と会社の方針や戦略などがテクノロジーとうまく組み合わさっていくと素晴らしい新しい働き方ができていくのではないでしょうか。
「ヒューマンセントリックな働き方」をどう想像するかが重要です。そして、テクノロジーでそれを実現していく。
「ダイバーシティ(多様性)」も重要です。女性の社会進出という点でまだまだ日本は欧米に比べて弱いようですが、デンマークやスウェーデンのようにチャイルドケアを政策として推し進めると同時に男性がもっと子育てに参加するようにな流と、女性の働き方も変わっていくでしょう。
企業が現在の状態になった理由の一つに18世紀の産業革命があげられます。産業革命はもともとあった「家族」を分断してしまいました。女性は家、男性は外で働く、という考えができあがってしまったのです。ヒューマンセントリックなテクノロジーによって、もう一度家族を結びつける必要があります。そのためには、男性が家庭と職場の両立をはかれる環境も必要です。
日本の女性はパートタイムワーカーが多く、キャリアを作ることが難しいようですね。企業はもっと女性を積極的に登用し、能力の高いパートタイムワーカーではなく、キャリアを積んだ人材として女性を見るべきです。そのためには従来の考えを改める必要があります。難しければ政府が介入してそれを後押しするべきです。人生100年時代は、働き方を変えていくチャンスだと思います。
女性の登用については重要視しておきたいです。
少子高齢化で人材が減る傾向にあるなか、女性の活躍が必要となってきます。
「無形の資産」をどのように豊かにしていくのかが本質になってくると考えると、カムバック制度は必要です。つまりは、再雇用制度があるかどうか、会社を離れた後もまた戻ってこられるのかどうか、そういう慣例があるのかどうか、それもまた重要です。
また、「生産性(Productivity)」について、先進国の労働現場の課題のひとつは、長時間労働のわりに生産性が上がっていないという事実です。
鍵は創造性を引き起こし、新しい挑戦とその環境が課題です。
日本の終身雇用制度のデメリットは人材面で多様性が失われるという問題があります。企業は多様性を必要としているのではないでしょうか。特定のタイプの人間だけを雇用するようになると、創造性も損なわれます。
AIにエンパワーされた働き方
AIにはおよそ60年の歴史があり、1960年代、1980年代に続いて、現在が第3のブームといわれています。このブームの要因のひとつは、ビッグデータをもとに機械が自動学習する技術です。
ある調査によると、世界でAIを導入している企業はまだ全体の20%ほどで、日本ではほんの10%前後に過ぎません。AIはまだまだ世界でもの本でも全く浸透しておらず、その活用は始まったばかりの初期段階です。今後はもっと増えていくと予想されますが、経営者にとって大事なのは、まずAIでできることとできないことをきちんと把握し、そして企業としてどのように活用していくのか戦略を立てることだと思います。
画像認識などでは、最近はAIの方が人間の目よりも精度が高いと言われいます。AIは感覚や認識力、分析力など人間の能力を拡張するツールともいえますので、人間を強力にサポートしてくれる存在なのです。
AIの脅威論は払拭できないかもしれません。技術革新により産業革命が起こるたび、そこに新しい仕事が生まれ、古い仕事は消えていきます。
今、AIの性能向上が現実のものとなってきました。だとすれば、むしろそれをビッグチャンスと捉え、果敢にチャレンジしていくべきではないでしょうか。
AIが人間の能力を高めるものなら、それを使ってなにをするかというところを人間が決め、中間処理はすべて任せればいいのです。
一番大事なのは目的となります。
なんのためにAIを使うのか? それは人や社会の幸せのためです。
一例として、ゴールドマンサックスのトレーダーの数は2000年に600人でしたが、AI導入後なんと2名にまで減ったのです。残りの598人はそれぞれ社内で別の仕事に就いたということです。つまり、AIにはできない仕事がまだたくさんあり、人間のやるべき仕事が残されているわけです。
人々の不安の原因は予想不可能な未来です。先にいくものが理解し語源化することを求められており、今後どうなっていくのかそのシナリオを事前に伝えることができれば不安は減っていくと思います。
人を中心に置いて、人の幸せのためにいかにテクノロジーを活用するかということです。
先駆けるリーダー不足
今、必要な人物は海外に出て、広く世界を知り、その流れを読んで、それを経営に活かすこと。そういうリーダーが増えてもらうことです。
リーダーにはリベラルアーツの素養が必要です。つまりは、多様性を受け入れるベースになります。部下を惹きつける魅力に溢れ多様性をマネジメントする能力と感性を備えている、そんなリーダー像が環境や時代、起業を変えます。
今この社会に必要なのは、明るい未来を語ることができるリーダーでしょう。会社が今後この時代をどう生き抜いていくのか、ポジティブな「ストーリー」として語れる人物。
そのためには振り返りをする時間と、情報を外から取り込む姿勢の2つが必要です。偉大なリーダーはいつもこの2つを備えていました。周囲をよく見る。振り返って考える。見たことを咀嚼し、自分の価値に結びつけていく。
そうした外向きと内向きのバランスが適切に組み合わさっていることが、明日を導くリーダーの条件なのかもしれません。