幸福日和 #103「一日を繋いでゆくこと」
世界は今日も繋がっている。
先日、そう感じた出来事がありました。
この孤島から、遥か北欧の地に住む友人と
オンラインで会話をしていたんです。
彼女は新入社員時代にともに同期として働いていた仲で、
互いに世の中のことを何も知らない状態から、
社会人としてのいろはを学んできた戦友でもありました。
彼女も僕と同じ地方出身だったこともあり、
競争激しい会社の中でも、
互いに心ゆるして共感できることが多い
数少ない存在だったんです。
また、時には恋愛相談の相手として、
時には夢を語り合う友としても。
彼女はその後、
国際結婚でフィンランドへ渡ることになり、
今では子供も生まれて穏やかな生活を過ごしているんです。
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久しぶりに
オンライン越しに見た彼女の表情は、
とても穏やかで、東京で働いていた時の
思い悩んでいた表情に比べると
まるで別人のように見えました。
彼女は幼い頃から、北海道の故郷で雪に親しんで、
雪の降り注ぐ光景を眺めて育ったのだそうで、
日本から遥かはなれた北欧の雪も同じように
彼女の心をまっさらな気持ちにしてくれるのだそう。
オンライン画面の彼女の背景に見える窓の向こうでは、
穏やかに降り注ぐ雪の表情がみえて、
孤島で海風と日差しを受けている僕も、
その雪の白さに心洗われた思いがしました。
画面の向こう側の彼女にも、
こちらの波音や風音が届いている様子。
そうして、それぞれの環境を共有しながら
互いの近況を語り合っていると、
気がつけば数時間が過ぎていました。
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「夕日が沈む時間だから、もう戻らなきゃ」
オンライン越しの彼女が
何気なくに呟いたその言葉に、
思わずはっとしたんですね。
この孤島から外を眺めると、
水平線の向こうから
空が少しづつ明るくなろうとしていましたから。
向こうでは一日を終える夜も、
こちら側では、その日を迎える朝へと
移りゆこうとしている。
世界は本当に一つにつながっているのだと
身をもって実感した瞬間でした。
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個人の目線で眺めれば
一日なんて朝になったら起床し、
夜になったら就寝する。
ただそれだけのことなのかもしれません。
でも、人はそんな単調な中だけを
生きているわけではないのだとも思う。
世界は今日も、
ひとりひとりの人生を繋いでゆきながら
巡り巡っています。
誰かの一日を受け止めて、
自分の一日をはじめ、
別の誰かに繋いでゆく。
そんな思いで一日を過ごしてゆけたらと思うんです。