「休んだり遊んだりすることに、罪悪感を持たないで」freeeラジオvol.1 アーティスト/妄想インベンター・市原えつこさん
3月27日に下北沢「BONUS TRACK」で開催されたイベント、「フリーランスゆるつな会〜オールfreeeデイspecial〜」。確定申告を無事に終えたであろう個人事業主やフリーランスが集まり、“ゆる”く“つな”がって一年の労をねぎらうことをテーマとした本イベントは、当日約400名もの方々が集まり大盛況となりました。
イベントでは様々な職種のフリーランスをゲストに迎えたトークイベント「freeeラジオ」を実施。履歴書を書く機会がほとんどないフリーランスの方々に「フリーランスの履歴書」を作成していただき、これまで歩まれてきた人生の変遷を振り返りながら、仕事、お金にまつわる話を聞きました。
本記事では「freeeラジオ」の、当日のトークの様子をお届けします。
一人目のゲストはアーティスト、妄想インベンターの市原えつこさん。聞き手はme and youの野村由芽さんです。
それではfreeeラジオ、オンエアです!
足を折ったので、会社を辞めました
─トップバッターということで、どうぞよろしくお願いいたします。市原さんはアーティストとしての活動の傍ら、現在は東京藝術大学大学院に在学されています。まず、どういう経緯でフリーランスに?
もともと物作りが好きで、デザイナーになりたいと思っていたんです。運よく LINEヤフー株式会社にUI/UXデザイナーとして入社することができ、会社員として一生骨を埋めようと思っていました。でも、やってみたら「デザイナーに向いてないかも」と思い始めて。そんなとき、大学の卒業制作で作った作品「喘ぐ大根」がバズったんです。
─会社で働き始めてから、作家として話題になり始めたんですね。
本業の仕事を一生懸命やってもあまりヒットしないのに、個人でやっていることが話題になった。そういうこともあり、フリーランスになる選択肢が頭をよぎりました。でも、会社で仕事を続けていたら、安定した生活を送ることができる。悩んでいた頃に、たまたま占いを受ける機会があったんです。それで綺麗な占い師さんに、神妙な面持ちで言われたんですよ。
「早めに辞めたほうがいいですよ。そうしないと多分、足の骨を折ります」って。
─そんな具体的に(笑)。会社に入って何年目くらいのことでしたか?
五年目ですね。作家活動も忙しくはなってきていたけど、それで稼げるかと聞かれると……という時期。で、その話を忘れた頃に、会社の階段から落ちて本当に足を折ったんです。「あ、これは」と思って……。
─占い師さんの予言を思い出した。
そうなんです。それで、「足を折ったので会社を辞めます」という謎の退職理由でフリーランスになりました(笑)。でも振り返ってみると、占い師さんに背中を押されてよかったなと思います。だから私も、ある程度の素養があったうえでフリーランスになるか迷っている人には、気軽に背中を押しがちなんです。みんな押されたがっているような気がして。幸いにも全員、うまくいっていますね。
稼ぐことも、世界観を強めることも大切
─2023年4月に東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻の博士課程に入学されています。フリーランスをしながら、社会人大学院生として学び直しをされているのですね。
34歳、現役作家として大学院に入って、自腹で学費を払っています。まだ学び中ですが、普通に仕事してお金を稼いでいるだけだと得られない経験が、たくさんできています。機材利用費、セミナー受講費、先生のコンサルティング代だと思えば、十分元が取れていると思いますね。実は今日この後、ゼミの卒業パーティーの幹事をやりに行くんですよ。
─大学院生活も、楽しまれているのですね。仕事面では、フリーランスだと経理作業などの事務作業も求められますが、いかがですか?
正直、得意ではないですね。フリーランスで経理作業が得意っていう人は、あまりいないんじゃないかな(笑)。でも私は“ある場所”で事務作業をやるのにハマっているんです。
─ある場所、とは?
鳥貴族です。一人で“ソロ貴族”として事務作業をすることもあれば、個人事業主の仲間が集まって、みんなで黙々と作業することもあります。その中には、まさにfreeeで領収書のインポート作業をしていた自営業仲間もいたのですが、普段、自分以外の人が経理作業をどうやっているかなんて知らないから、情報交換になったり、新たな発見もあったりしました。一人でやると心が折れそうになることもありますが、仲間がいると頑張れますね。
─フリーランスは「食べていく」のが難しいともよく言われますが、市原さんはお金の面で意識していることはありますか?
特に私の業種、アーティストはどう食べていくかが難しい職業だと思います。アートの分野は総じて、予算が潤沢ではないことが多いので……。なので作家活動を軸にしながらも、活動範囲やお取引先をアート業界以外にも広げて色々チャレンジしてみて、稼ぐための仕事もしています。
その一方で、ブランディング・世界観のための仕事も大切。自分の世界観が出ている作品や展示を面白がってもらえることで、新しい仕事の依頼が来ることもあります。稼ぐための仕事と、世界観を強めるための仕事。両方やると、息の長い活動ができるかな。
こまめに休んだほうが、コスパがいい
─ではここで、freeeユーザーのすみれさんからお便りが届いています。「アウトプットや成果を出すことに比重を置きがちで、インプットや休み方がわかりません。市原さんが大切にしている、仕事と休みのバランスなどがあれば教えてください」とのことですが、いかがですか?
私自身、ちゃんとは休めていない可能性もありますが……(笑)。とはいえ、繁忙期とそうではない時期があるので、繁忙期でなければ予定を立てすぎず、遊びながらほどほどにやるようにしていますね。
フリーランスってどうしても、休むのが怖いという意識があると思うんです。私もそういう考えのもと働きすぎた結果、メンタルがダメになってしまった時期がありました。働きすぎて動けなくなってしまうよりは、こまめに休む方がコスパがいい。だから、ある程度休むようになりましたね。基本的に土日は働かないとか。
─ありがとうございます。仕事と休みのバランス感覚についてなど、市原さんはnoteなどでもたくさん発信されているので、ぜひチェックしてみてください。それでは最後の質問です。経理作業のとき、どんな音楽を聴いていますか?
「Lucky KilimanjaroのDeadline Dancer」です。デッドラインという名の通り、まさに確定申告にぴったりな歌だと思います(笑)。ちょうど一年前、ギリギリに追い込まれた中、申告作業を頑張って進めているときに聴いていました。経理作業を溜め込んでしまうフリーランスには必ず刺さる、グサグサくる歌詞です。ちなみに私はこの歌詞を反面教師にすることで、今年は前倒しで経理作業を進められました。
─市原さん、ありがとうございました!次は武田俊さんにお越しいただきます。おたのしみに!
〈オールfreeeデイ〉
毎月最終水曜日は『オールfreeeデイ』
確定申告の提出期限ギリギリの3月に、領収書の山を取り込んだ経験はありませんか?
【有料ユーザー様限定】で領収書の整理をする“もくもく作業イベント”をオンラインで開催中!『みんなで』税務相談もできます。
開催日:4/24(水)・5/29(水)・6/26(水)
開催時間:AM10時〜AM12時
お申し込みは下記のURLから
〈市原さんの履歴書〉
〈プロフィール〉
市原えつこさん(アーティスト、妄想インベンター)
日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。第20回文化庁メディア芸術祭で優秀賞、アルスエレクトロニカで栄誉賞を受賞。近年の主な展覧会に「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(森美術館)等。2016年にYahoo! JAPANを退社し独立、フリーランスの作家に。現在、東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻に在学中。