見出し画像

コラム:Ready Study Go! 「毎瞬を充実させた先に、天職はある」

「毎瞬を充実させた先に、天職はある」

天職は、最初から天職の顔をしてやってくるわけではありません。自分だけの天職を求める多くの人がつまづいている勘違いがあります。運命の人が突如あらわれ、稲妻に撃たれたような衝撃が駆け抜ける。「ああ、ようやく出会えた... あなたでしたか!」駆け寄り抱擁する、そんなインパクトのある出会いを想像しているようです。だから、「ちょっと良いかも」「なんか面白そう」くらいのライトな惹かれ具合は無視してしまうのでしょう。

そもそも、会った瞬間にわかる運命の出会いなんて、今までの人生でありました? 稲妻が落ちた人もいるでしょうけど、全員にそうやってわかりやすく現れないのが人生ゲームの妙理なんですね。「これが自分の天職だ」と胸を張って言える先輩たちも、最初は「少し惹かれる」をくり返した先に、結果として現在地に行きついています。初めから具体的な目的地が見えていたわけでもないし、稲妻も落ちていません。

例えば、「自分の本をつくる方法」の受講生の話ですが、Hさんは会社員としてWEBディレクターをやっていましたが、行き詰まりを感じていました。今いる部署も閉塞感があるし、「他社のWEBサイトばかりつくっても、自分にとって意味があるのだろうか」「うまくできる人は他にもいるし、別にこれ自分じゃなくてもいいな」そんな思いが去来するようになったそうです。

「他人のではなく、自分のメッセージを発信したいかも...」「上手さを競うのではなく、自分にしかできない研究に明け暮れられたらいいな」これも「絶対にこれだ!」ではなく、「おそらくそっち方面だ」くらいの確信度です。

そういうフワッとした思いがあって、Hさんは出版の講義に参加したわけです。自由大学のメルマガにあった「ピンときたらゴーだと思うよ」というゆるいキャッチコピーに促されて。「ちょっと気になる」程度の引っかかりでも、行動に移したのです。

講義では、「まだ書きたいものが決まっていないのですが...」と申し訳なさそうに自己紹介していました。それでも講義中に戦国時代の歴史や城に惹かれている自分を思い出し、WEBサイトもつくって発信を始めました。今では、著者として10冊以上の本を出版し、テレビやラジオでも活躍しています。生き生きとしていて、自他ともに天職を生きているなぁと感じます。

そんな転機に寄り添ってきてわかるのは、みんな10年先の未来よりも「今の充実感」を優先しているということです。今に閉塞感があるなら、少しでも惹かれることをやってみる。ラジコンが好きだったのを思い出し、小さくて安いドローンを買って飛ばしてみる。映像をYouTubeに公開してみる。絶対に天職にしてやろうとか、経済的に成功してやろうとか、これが誰かのためになるのかとか重く考えずに「ピンときたらゴー」でいいのです。

毎瞬を充実感で満たすように生きる。充実とは、ただ楽しい、好き、美味しいとかの快楽だけではなくて、ハードなトレーニングは苦しいけど心は満たされていますね。恥をかいても、競争に負けても新しい発見があったり挑戦した自分が誇らしかったり。個性的な本来の自分を発揮できて、嬉しかったり。

邪魔になるのは、己の古い常識です。こんなことして何になるんだ、良い歳して大人げない、モトを取らなきゃ、賞賛されなきゃ、とか。忙しいのに遊んでる場合じゃないとか、そんな冷や水で「ちょっと良いかも」の火は簡単に消えてしまいます。

証券会社を辞めて家具職人になったり、銀行を辞めて理想の宿をひらいたり、シェフを辞めて農家になったり。そんな劇的な変化を遂げた人たちも、小さな火が消えないうちに一歩を踏み出しただけです。

天職は天啓のように降りてくるわけではありません。天啓を待っていたら、一生が終わります。充実した日々を生きていて、気づいた時にそばにいた人が、運命の人。天職もそういうことなのでしょう。

心の琴線に触れたものは、すべてに意味がある。そう信じて、少しの揺れにも敏感に反応してみてください。思い返してみると、あなたの転機の発端も、当時はそれとはわからないような小さなきっかけではなかったですか?


もしいま閉塞感があるのなら、「もっと努力して競争に勝とう」ではなくて、ピンときたものに自分をひらくことをおすすめします。好奇心と充実感をコンパスにして進んでいけば、気づけばきっと天職の中にいるはずです。だから、ピンときたらゴーだと思うよ。

TEXT: 深井次郎(自由大学 学長)


ご感想はこちらまで(お気軽に)
info@freedom-univ.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?