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【自由大学メルマガコラム】本当の知性とは、黄金の中庸を探し続けること

「知性」と「知能」の違いとは、何でしょうか?

知能とは「答えのある問い」に早く正確に答えを出す能力のこと。知能テストがあるように、知能は数値で測れます。

では知性はというと、答えのない問いを問い続ける力です。答えなど出ないとわかってもなお、深く向き合い問い続けることができるかどうか。

例えば、勇気は、臆病と無謀の中間のどこかに位置するわけですが、どこだか考えてみてください。寛容は、放任と統制の中間のどこかに位置するわけですが、最適なバランスはどこなのか?

もし白か黒か、どちらか両極が答えであるなら簡単な話です。ですが、人生における問題で割り切れる問いなどほとんどありません。

知性のない人は、宙ぶらりんの状態に耐えることができません。居心地が悪いのです。早く結論を出してスッキリしたい。

「私のこと好きなのか嫌いなのか、はっきりしてー」と。でも、ほとんどの場合「そのどちらでもない」です。両極の間のメモリを行き来しています。

「友達を切った」という悲しい話を、いい歳をした大人から耳にすることがあります。結婚式を欠席されたから。秘密を漏らされたから。とにかく傷ついたのでしょう。だけど10年の付き合いが、たった一度の不義理で絶交とはあまりに短絡的ではないでしょうか。

「もういい、別れよう」

些細なことで絶交してしまうカップルも多いです。短時間で「あの人は悪い人」と決めつけてしまう。そう割り切れば気持ちは楽になります。自分は被害者。さっさと忘れて前に進もう、と言うわけです。

「悩んでる時間がもったいない!」

確かにそれはわかる。生存戦略上では有効かもしれません。でも、知能はあっても、知性はない。

コロナ禍でも、命か経済か。ロックダウンかノーマスクか。みんなスッキリしたいので、どちらか極論に偏ります。大衆には、極論がウケやすい。だからメディアも極論ばかり。命派と経済派に分断されます。

オリンピックもやるのかやらないのか「早くはっきりせい!」と責め立てる。でもね、あれだけ複雑な事情があり、そんな簡単に決められないでしょう。みんな宙ぶらりんになるとイライラするから、森さんもたった一つの失言で、何年も尽力してきた要職を追われてしまう。それもたった1日2日くらいの短時間で。別に森さんの肩を持つわけではありませんが、社会に知性が欠如していないか心配してます。長引く不安で、思考が弱ってしまうのもわかるのですが。

善か悪か。どちらか100%の人間などいないのです。本当に知性のある人は、中庸のどこが正解かを忍耐強く考え続けています。

もしあなたがリーダーで、たった一つの失言でチームのメンバーを辞めさせますか? 何年も一緒にやってきたメンバーを。

人間を扱う「教育」「経営」「芸術」「政治」は、白黒はっきりしないことばかりです。知能の高いお受験エリートが必ずしも成功しないのは、知能と知性が別物だからです。

あなたも責任あるリーダーであるならきっと、辞めてもらった社員がいるし、断った企画もたくさんあるはずです。面接やオーディションで泣く泣く落とした人もいるでしょう。

日々、目の回るような忙しさの中では、早く楽になりたい、手放したい。

「これでよかったんだ。しょうがない状況だった」

「これが本人のためでもある」

などと自分を納得させようとするけど、やっぱり割り切れなくて。本人に不採用を伝えてからも

「本当にこれでよかったのか」

「どうにか救う方法はなかったのか」

「もっと適切な言葉があったのではないか」

考え続ける。中庸の細かいメモリを一つずつ検討したその経験が、知性を鍛えることになる。

知性が浅いと、安易な極論に逃げたくなりますが、そこに正解はありません。アリストテレスが言ったように「万物は中庸に還っていく」のが自然の摂理です。

黄金の中庸はどこにあるのか。疲れるけれど、それぞれが考え続けなければなりません。例え「一生かけても唯一の答えなど出ない」とわかっていても。

TEXT:自由大学学長・教授  深井次郎

※このコラムは、自由大学メールマガジン(無料)にて配信しました。


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