【連載】10倍成長物語⑩

10. パラダイムシフト：ビジネスモデルの再構築

大志は重い足取りでオフィスに向かった。

昨夜も一睡もできず、頭は混乱し、体は疲労困憊だった。彼の心の中で、不安と焦りが渦巻いていた。

オフィスに着くと、予想外の光景が彼を待っていた。会議室には、ほとんどのスタッフが集まっており、その中心に健太が立っていた。

「みんな、ここに集まってくれてありがとう」健太は静かに、しかし力強く話し始めた。「私たちは、このプロジェクトの未来について重要な決断をしなければなりません」

大志は部屋の隅に立ち、驚きと不安で固まっていた。彼の頭の中で、これまでの決断や行動が走馬灯のように駆け巡った。

健太は続けた。

「このプロジェクトは素晴らしい理念で始まりました。しかし、最近の方向性には多くの問題があります。私たちは、原点に立ち返り、自分たちの手でプロジェクトを正しい軌道に戻す必要があります」

スタッフたちの間で、同意のつぶやきが広がった。大志は、自分のビジョンと現実のギャップを痛感した。

「そのためには...」健太は一瞬躊躇したが、決意を固めて言った。

「大志さんをプロジェクトから外し、私たちで主導していく必要があります」

部屋中が静まり返った。全ての視線が大志に向けられた。

大志は言葉を失った。彼は口を開こうとしたが、何も出てこなかった。その瞬間、彼は自分の内なる声に耳を傾ける必要性を感じた。

数時間後、緊急の役員会議が開かれ、大志はプロジェクトの責任者から正式に解任された。健太が新しいリーダーとして就任することが決まった。

大志はオフィスを後にした。彼の頭の中は混乱していたが、同時に奇妙な解放感も感じていた。

数日後、大志は会社を自主退職した。スマホの電源を切り、外部との連絡を一切絶って過ごした。

しかし、これは単なる引きこもりではなく、自己反省と内省の時間だった。彼は日記をつけ始め、自分の過去の行動や決断を振り返った。

ある夜、大志は瞑想中に、久しぶりにセージの声を聞いた。

「大志、どう？少し落ち着いた？」

大志は目を開け、微笑んだ。「セージ...久しぶりだ。そうだね、少しずつだけど」

セージは優しく言った。「大志、10倍成長の本当の意味を思い出してごらん」

大志は深く息を吐いた。「10倍成長...それは単にビジネスを大きくすることじゃなかった。俺は、他人の期待に応えようとするあまり、自分自身を見失っていたんだ」

セージは説明した。「そうだ。10倍成長とは、君自身の内面的な成長のことだ。他人の期待や社会的な責任にとらわれるのではなく、自分自身の価値観に目を向け、真の幸福を見出すこと。そして、その幸福を通じて周りの人々にも良い影響を与えていくことなんだ」

大志はゆっくりとうなずいた。「分かったよ、セージ。俺は...自分自身と向き合う時間が必要だった。そして、本当の自分を見つけ出す。それが、俺の新しい10倍成長の始まりになるんだね」

セージは同意した。「その通りだ。この旅は簡単ではないかもしれない。でも、それは必ず価値のあるものになる」

大志は立ち上がり、窓の外を見た。夜明けが近づいていた。彼は深呼吸をして、静かに言った。

「ありがとう、セージ。俺は、これから本当の自分を見つける旅に出る。そして、本当の意味での10倍成長を遂げる」

その日から、大志は新たな日課を始めた。毎朝15分の瞑想、日記をつけること、そして自分の価値観と向き合うこと。彼は、以前のように外部の評価や成果に囚われるのではなく、内なる成長に焦点を当てた。

数ヶ月後、大志は小さな NPO を立ち上げた。その目的は、若者たちが自分自身の価値観を見出し、真の幸福を追求するのを支援することだった。彼は、自身の経験を活かし、10倍成長の本質を伝えていった。

プロジェクトは小規模だったが、参加者一人一人に深い影響を与えた。大志は、数字や規模ではなく、個々の変化と成長に喜びを見出していった。

大志の新たな旅は、まだ始まったばかり。しかし彼は、この旅こそが本当の意味での10倍成長であることを、心の底から理解していた。