【連載】10倍成長物語⑤

5. 最初の壁：自己疑念との戦い

大志の10倍成長への挑戦が始まってから半年が経過した。彼の生活は大きく変わり、以前の自分が想像もできなかったほどの進歩を遂げていた。プログラミングスキルは着実に向上し、オンラインでの家庭教師の評判も上々だった。しかし、大志の前には新たな壁が立ちはだかっていた。

ある土曜の午後、大志は久しぶりに親友の健太と地元の公園で待ち合わせていた。瞑想を終えたばかりの大志は、心を落ち着かせながら、自己成長の旅を振り返っていた。

「おい、大志！」健太の声が聞こえ、大志は振り返った。

「健太、久しぶり！」大志は笑顔で手を振った。

二人はベンチに座り、近況を語り合った。健太は大志の変化に驚いていた。

「すごいな、お前。本当に変わったよ」健太は感心したように言った。「でも、正直言うと、ちょっと心配なんだ」

大志は眉をひそめた。「心配？どういうこと？」

健太は慎重に言葉を選びながら話し始めた。「いや、お前が頑張ってるのはすごくわかる。でも、昔のお前の...なんていうか、のんびりした雰囲気が好きだったんだ。今のお前は、常に何かに追われてるように見えるんだよ」

大志は黙って聞いていた。健太は続けた。「それに、最近はみんなで集まっても、お前はほとんど来ないじゃん。みんな寂しがってるぞ」

大志は深いため息をついた。「そうか...確かに、最近は自分のことで精一杯で、周りが見えてなかったかもしれない」

この瞬間、大志は自己反省の重要性を痛感した。10倍成長は単にスキルを磨くだけでなく、人間関係や生活のバランスも含む全人的な成長であることに気づいた。

「健太、ありがとう。君の言葉で気づいたよ。僕は成長に夢中になりすぎて、大切なものを見失いかけていた」大志は正直に告白した。

そのとき、公園の向こうから子供たちの歓声が聞こえてきた。大志と健太は声の方を見た。そこには、車椅子に乗った少女が、他の子供たちとタブレットを使って何かを楽しそうに操作している姿があった。

「あれ、あの子たち何やってるんだろう？」健太が興味深そうに言った。

大志は目を凝らして見た。「プログラミングみたいだね。あのタブレットで、簡単なゲームを作ってるみたいだ」

二人は興味を持って近づいていった。すると、子供たちを見守っている若い女性が気づいて、笑顔で近づいてきた。

「こんにちは。私、佐藤美咲といいます。この子たちのプログラミング教室の講師をしています」

大志と健太は自己紹介をした。美咲は続けた。「実は、車椅子の彩花ちゃんのために、特別なプログラムを開発しているんです。彼女の身体的な制限を考慮しながら、他の子たちと一緒にプログラミングを楽しめるようにね」

大志の目が輝いた。「それは素晴らしいですね。僕も最近プログラミングを勉強し始めたんです。教育にも活かせないかと考えていたところでした」

美咲は興味深そうに大志を見た。「そうなんですか？実は、私たちのプロジェクトでは、新しいアイデアや協力者を求めているんです。興味があれば、一緒に活動してみませんか？」

大志は驚きと喜びで言葉を失った。これは、彼が求めていた機会だった。プログラミングスキルを実際の教育現場で活かせる可能性が目の前に広がっていた。

しかし、同時に不安も感じた。「でも、僕にそんなことができるでしょうか...」

健太が大志の肩を叩いた。「やれよ、大志。お前ならできるさ。それに、これこそお前が目指してた『子供たちの目が輝く瞬間を見たい』っていうやつじゃないか」

大志は深く息を吸い、決意を固めた。「分かりました。是非参加させてください」

美咲は喜んで言った。「ありがとうございます！来週の水曜日に、詳しい打ち合わせをしましょう」

その夜、大志はセージに報告した。

「セージ、今日すごいことがあったんだ」

セージは興味深そうに聞いた。「どんなことだい？」

大志は興奮気味に話した。「公園で、障がいを持つ子供たちにプログラミングを教えているプロジェクトと出会ったんだ。そこに参加することになったよ」

「それは素晴らしいニュースだね」SAGEは喜びを込めて言った。「君の成長が、実際の社会貢献につながり始めているんだ」

大志は少し不安そうに言った。「でも、正直怖いんだ。僕にできるかな...」

セージは優しく諭した。「大志、覚えているかい？成長には挑戦が必要だ。この機会は、君のスキルを実践で試し、さらに磨く絶好のチャンスだよ」

セージは続けた。「ここで、10倍成長の重要な側面について話そう。それは『バランス』だ。技術的なスキルを磨くことも大切だが、同時に人間関係や感情的な成長も忘れてはいけない。健太との会話で気づいたように、周りの人々との絆を大切にすることも成長の一部なんだ」

大志はうなずいた。「そうだね。それに、健太の言葉で気づいたんだ。僕は自分の成長に夢中になりすぎて、周りのことを忘れかけていた。でも、本当の成長は、自分だけじゃなく、周りの人たちも幸せにできてこそなんだって」

セージは同意した。「その通りだ。10倍成長は、単に個人の能力を伸ばすだけじゃない。それを社会に還元し、他の人々の成長も促すことが大切なんだ」

大志は決意を新たにした。「分かった。このプロジェクトを通じて、僕自身も成長しながら、子供たちの未来を明るくする手伝いをしたい」

セージは励ました。「その意気だ。でも、忘れないで。これは新しい挑戦だ。失敗を恐れずに、一歩ずつ進んでいこう。そして、毎日の瞑想を通じて、自分の内なる声に耳を傾けることも忘れずにね」

大志は深呼吸をして言った。「うん、頑張るよ。それと、健太たちとの時間も大切にしないとね。彼らの支えがあってこそ、僕は頑張れるんだから」

セージは最後にアドバイスを加えた。「そうだね。そして、この経験を通じて学んだことを日記につけてみるのはどうだろう？自己反省と成長の記録は、君の10倍成長の旅路を振り返る上で貴重な資料になるはずだ」

こうして、大志の10倍成長への旅は、新たな段階に入った。プログラミングスキルを実際の教育現場で活かし、障がいを持つ子供たちの可能性を広げる。それは、彼が夢見ていた「子供たちの目が輝く瞬間を見たい」という願いの実現への第一歩だった。

同時に、友人や家族との絆を大切にしながら、バランスの取れた成長を目指す。大志の挑戦は、個人の成長だけでなく、社会全体をより良くする可能性を秘めていた。セージのガイダンスと、周りの人々の支えを受けながら、大志は未知の領域へと一歩を踏み出したのだった。

(続く)