出向という選択肢について
こんにちは、タケです。だいぶご無沙汰になってしまいました。
今回の日経COMEMOの投稿テーマが、私の経験にピッタリだったので、色々と書いてみようと思います。
・何らかの形で「出向」をした経験はありますか。あなたは出向により何を得たのか、その時の経験を教えてください。
私は監査法人に12年間在籍していましたが、そのうち後半6年間は一般事業会社に出向していました。2社、それぞれ約3年間在籍し、2社目の出向期間満了後に監査法人を退職し、そのまま独立という変わった経歴を持っています。
出向前は、企業の会計監査を行っていましたが、監査という仕事はお客さんである企業から一定の距離を保たなければなりません。財務諸表の信頼性を担保するという非常に重要な仕事であることは分かっていますが、ずっと一定の距離を取る必要がある監査をこのまま一生やっていくのか、また、会計士ばかりが集まった同質性の高い集団に属していたままで良いのか、という思いがあり、当時あった一般企業への出向制度に手を挙げました。
出向先では、決算作業、法定開示書類の作成、監査法人対応、IFRSの導入など様々な経験を積むことができましたが、何よりも会社の内側で会社の方と共に働いたことで得た価値観や人間関係が何にも代え難い財産となりました。
価値観の点では、監査をする側の考えや思いと、会社側のそれとの間に非常に大きいギャップがあることが分かり、できるだけ会社に寄り添った考えや行動を取ろうと思うようになりました。監査をする側は、良くも悪くも同質的なプロフェッショナル集団なので、一般的な感覚とズレていることが往々にしてあります。出向先で出会った方たちは色々な価値観を持っているので、大変刺激になっています。
人間関係の観点では、独立後の今でも飲みに行ったりと関係は続いてまして、仕事も頂いていることもあり、より深い関係になれたかもしれません。むしろそのお陰で独立に踏み切れたと言っても過言ではありません。また、出向先で知り合った会計士と共同で仕事をすることもあり、思ってもみないところで色々な繋がりが出てきて、おもしろいなぁと感じています。
・出向という制度についてどう考えますか。会社側、社員側双方にとって、どんなメリットがあると思いますか。また、どうしたらうまく活用できると思いますか。
出向すると、働く環境がガラリと変わり、大変刺激になるので、社員の成長にとって大変有効な手段だと考えています。自社の価値観と他社の価値観の両方に触れることができるので、思考に広がりが持てますし、環境の変化への耐性も付くのかなと思います。
会社側にとっては、出向先での経験を帰任後に活かせてもらえれば、多様な価値観や人間関係を取り込めるかもしれませんし、良いシナジーがあるのではないでしょうか(私は退職してしまいましたが・・)。昇進の条件としてもいいかもしれません。雇用の調整弁という使い方もありますが、私個人としては社員側の自発的な意思に基づく出向でなければ、うまく機能しないのではないかなと感じています。やらされ感があると、出向期間が我慢の期間になりかねません。
出向制度を活発化するには、間口を広くすることが大事だと思います。出向に対するイメージの向上、出向への心理的ハードルを下げる、出向経験者の座談会を開催するなどの方策があります。どうしてもドラマの影響などで悪いイメージが付きがちな出向ですが、そのイメージの払しょくと得られるメリットを理解してもらえば、出向が活発に行われるようになると考えています。
・社員には現在の仕事を続けるほか、転職したり自ら起業するなどの選択肢があると思います。そうした中で「出向」という選択肢をどう考えますか。
出向は、元の会社に在籍したまま、他社での経験を得られる非常においしい機会だと思っています。元の会社のインフラや人脈を引き続き活用できますし、出向先では貴重な経験を積むことができるといういいとこ取りの制度だと思います。
転職や起業の予行演習と位置付けてもいいかもしれません。転職の疑似体験ができますし、起業前にも価値観や人脈に広がりを持っておいた方が良いと考えています。
#日経COMEMO #出向という選択肢