飛行機が海の上を長時間飛ぶには
飛行機が海の上を飛ぶ場合、飛べる距離(厳密には時間)に制約を受けます。
まずは原則からお話します。
飛行機は陸地の近くを飛びます。
理由は、飛行中に何かトラブルが発生して緊急着陸が必要になっても、近くの陸地に空港があれば着陸できるからです。
例えば飛行機の2つのエンジンのうち1つが停止すると、緊急着陸するような決まりになっています。
しかし、日本ーアメリカのような路線は、緊急着陸が必要な状態になってもすぐに着陸できる空港がほぼありません。(緊急着陸ができず非常に危険です)
そのような陸地が遠すぎる路線の場合でも、運航できるようにするため「ETOPS」という制度が定められています。
E:EXTENDED
T:TWIN ENGINE
OPS:OPERATIONS
の略称です。
これは飛行機の性能を上げたり、規程をしっかり定めておけば、飛行ルートに陸地がなくても長距離飛んで良いよというルール(運航方式)です。
以下はより詳細な内容です。
改めまして、これは海の上(洋上)を飛ぶ時の制限の話です。
(太平洋や大西洋など)
エンジンを2発異常搭載している飛行機が対象です。(TWIN ENGINE)
従来の制限であれば、海の上を飛んでいる時、エンジンが1発停止してしまうと、60分以内に最寄りの空港に着陸しなければなりません。
言い換えると、陸地(最寄りの空港)から離れられる距離は、60分間で移動できる距離です。
ETOPS120の許可を得ている飛行機は、120分以内に最寄りの空港に着陸すれば良いというように制限が緩和されます。
言い換えると、陸地(最寄りの空港)から離れられる距離は、120分間で移動できる距離です。
単純計算できるものではありませんが、2倍の時間と距離、飛行することができるようになるイメージです。
他にもETOPSの時間の種類には
90.180.240等があり
路線に合わせて、時間(距離)に設定しています。
ETOPSを取得することのメリットは
・効率的なルートを組める
・燃費の軽減
・新しい路線を開拓できる などがあります。
例えば日本〜ハワイの飛行ルートのちょうど真ん中で、緊急着陸しなければならない事象が発生したとしましょう。
羽田空港、ホノルル空港には7時間かかるとします。
60分ETOPSの承認を受けた飛行機だと、事象発生から60分しか飛行が許されないので、そもそも飛行ルートの許可が国から下りません。
240分ETOPSだと、事象発生から4時間の飛行が許されているので飛行機を飛ばすことができるのです。
羽田~ヨーロッパの路線でも長時間ETOPS対応機の方が、北極付近を通るようなルートを設定でき、結果消費燃料が少なくなるようなメリットもあります。