#33 人生 x 猫を飼う
昔3匹の猫を飼った
1匹目は雑種
名前は「嵐」
中学の頃
当時『T-BOLAN」というバンドが人気で
よく聴いていた
そのバンドのボーカルが「森友嵐士」
その名前から「嵐」と名付けた
ヤンチャでとにかく庭に出たがるやつで
ある日学校から帰ると
庭に嵐が横たわっていた
近寄ると嵐があさっての方向を見て死んでいる
びっくりしていると姉と母が家から出てきて
嵐が車に轢かれた
そう告げられた
僕の家の周りは団地で
交通量も少なくない
かくして嵐とお別れするはめに
2匹目の猫の名前は「ルナ」
名前は誰が付けたかは覚えていないが
白い毛の長い
キャットフードの表紙に載っているような猫だった
こいつはオスで
発情期には良く手足にしがみついて
腰を振っていた
当時ゴジラの足を模したふわふわのスリッパに
しがみついては腰を振る
僕は意地悪なので良く行為中にからかった
そんなルナも手術が終わりおとなしくなった
それから数年後
姉が一人暮らしで飼っていた猫を実家に連れてきた
それが3匹目の猫「ミミ」だ
スコティッシューフォールドで
とにかくこの子は人懐っこくて
可愛かった
ルナはもともと臆病でいつも一人でいる猫だったので
この2匹は剃りが合わなかった
仲良くしていた記憶がない
それでもお互いの距離を保って
2匹は生活していた
そんなルナも老衰で
ガリガリになって死んだ
それでも15年くらい生きた
最後の日
焼き鳥を買ってきて匂いを嗅がせた
もう食べる気力もない中で
鼻をクンクンいわせていた
家族で夕食を食べていると
ルナが家族の方へ歩いてきた
途中よれよれで倒れながら
近くまで来て座った
何か食べたいわけでもなく
多分家族のそばにいたかったんだと思う
そしてすぐにまた元の場所へ戻った
食事を食べ終え様子を見に行くと
ルナは死んでいた
最後にミミの話
とにかく人懐っこくて
いつも人の膝の上に乗り
誰かのそばにいた
ミミはかつおぶしが大好きで
いつも小分けのパックを貪るように食べていた
冬は布団の中に入ってきて一緒に寝た
いつまでも元気いっぱいで
僕はミミが大好きだった
でもそんなある日
仕事から戻ると
ミミの下半身が動かなくなっていた
家の人が病院に連れて行って
お医者さんがいうところ
血管が詰まって血が通っていない
切断するしかないといわれた
とにかく突然だったので
どうしていいかわからなかった
1番戸惑っていたのはミミ本人だった
上半身はいつも通り
でも下半身だけ動かない
動かない足を引きずりながら
前足だけで僕の方へこようとする
その夜は交代でミミの看病をした
夜中ずっとミミは叫んだ
かわいそうだった
どうやっても苦しそう
撫でることしかできなかった
朝方にはもう衰弱しきっていた
それでも仕事がある
ミミを母に預けて仕事へ出掛けた
すぐに帰宅してミミを見ると
もうすっかり泣き声もか細く
疲れ切っていた
母と父に相談し
もう一つの選択
安楽死を先生に頼んだ
最後の瞬間は両親には見せたくなかったので
僕一人で段ボールに毛布を引いて
病院まで連れて行った
先生は優しく対応してくれた
ベットに乗せて
ミミの顔をじっと見ていた
すぐに注射が打たれた
目が一瞬大きくなり
あっという間にミミは死んだ
ごめんなぁ
ごめんなぁ
涙とその言葉しか出てこなかった
いっぱい泣いた
20年分の涙じゃないかってくらい
泣いた
僕の意思でミミを楽にさせる方を選んだ
本人の意思などわからないけど
その時思っていたのは
この先ミミを思い出した時
悲しい思い出は1日だけでいい
ミミを思い出すときは
かつおぶしを貪り食う顔だ
そう思って決断した
すぐに体は硬くなって
死んだことをより実感した
次の日
火葬場には父が休みをとって行った
骨はもらわなかった
これが3匹との思い出だ
猫はいい
大好き
いつでも飼いたいなって思う
でもそれ以上に死を受け止めることを考えてしまう
そう思うともう飼えない
だから今はYoutubeで「モモと天空」の動画を見て
癒されている
猫はいい
今日は一日中別の作業で文章を飼いていたので
簡単なヤツにしようと
猫をテーマにしたのに
いざ書き出すと
止まらなくなる
これを書きながら
ミミを思い出す
世の中には可愛い猫はいっぱいいる
でも僕にとってはミミが
生涯最後のネコだった
お暇な方は「かつおぶしミミ」で検索してみて
お遊び動画がいくつか残っている