脚本『MADE for ME(仮題)』の書きたいところだけ
演劇企画フラテとレオ
『MADE for ME(仮題)』
作 小西里
少女「歌うまいですね。」
歌手「ありがとうございます。」
少女「歌手なんですか?」
歌手「ああ、まあ。歌だけじゃ食べていけないから、別に働いてますけど。」
少女「……ここでいつも歌ってるんですか?」
歌手「ええ。そこにいるマスターと知り合いでして、ステージを使わせてもらってるんです。」
少女「こういうところはもっと怖いところかと思ってました。」
歌手「初めて?」
少女「はい。私まだ未成年ですし。」
歌手「ヒェッ!」
少女「大学生です。」
歌手「ヒュッ!」
少女「あっ大丈夫です。ちゃんと終電までには帰ります。」
歌手「そっそっか……。」
少女「えっと、歌う前に、最初、名前言ってましたよね?えーっと、ユメウツツでしたっけ?」
歌手「ユメウリです。」
少女「うわ、すみません!」
歌手「いや、ユメウツツはこのクラブの名前なんで、あながち間違ってないですよ。」
少女「どっちもユメなんですね。」
歌手「俺の名前決めたのマスターなんで。」
少女「へぇー。」
歌手「俺は歌手として、歌で聞いた人に夢を見せたいから、そういう人になりたいって言ったらあいつが、歌手も商売なんだから、タダで夢を見せるのは趣味の域だって言われて。それでユメウリ。」
少女「……かっこいいです!かっこいいですね、ユメウリ。夢を売ってくれるんですか?」
歌手「はあ。まあ。」
少女「じゃあ、夢が見たい人はユメウリさんの歌を聞きにくればいいんですね。」
歌手「あなたは夢があるんですか?」
少女「夢ですか?夢……。私は、そうだなあ。あんまり夢っぽいのないんですけど。健康で、長生きしたいですね。80歳くらいで、眠るように。ああ、あと、働いたお金を推しに貢ぎながらそこそこの生活したいです。」
歌手「……夢ありますね。」
少女「そうですか?」
歌手「はい。」
少女「私に夢売ってくれます?」
歌手「必要ないでしょ?」
少女「そんな言い方します?」
歌手「あっすいません。」
少女「えっ私に夢売ってくれないんですか?」
歌手「そんなに欲しいんですか?」
少女「だって私夢ないんで。」
歌手「いや今のはあ!?めちゃくちゃあったじゃないですか!?」
少女「そんな無いですって!」
歌手「ええ!?」
少女「じゃあ、ユメウリさんが夢売ってくれるようにここ通いますから!」
歌手「いや、学生はこういうところずっと通うのはどうかなって。」
少女「うーん、じゃあユメウリさんが歌うときに来ます!」
歌手「いや、俺も別の仕事があるんで。」
少女「マスターに聞きます!マスター!」
歌手「うわっすっげえ行動力!」