脚本『「創作 苦しみ 軽減」検索』
【登場人物】
平川:画家。
丸井:画家。平川の家に遊びに来た。
平川のアトリエ。大きいカンバスの前で座っている平川と丸井。
平川「もう本当にやだ。」
丸井「駄々っ子じゃん。」
平川「丸井だって描いてねえじゃーん。」
丸井「俺はいつも描いてねえから。」
平川「なーんでそれが許されんだよ。」
丸井「許されてはねえよ。いつも怒られてるよ。」
平川「今回も怒られちまえ。」
丸井「珍しくかなり荒んでんな。」
平川「もう今回のコンクールやだ。」
丸井「辞退すりゃいいんじゃねえの?」
平川「描きたいのがある。もう構成も下書きもしてる。」
丸井「ああー。」
平川「描きたい……。俺しか描けない……。いや、俺以外にも描けるけど、でも俺が描きたい……。」
丸井「おお。」
平川「でもきっつい。」
丸井「平川がここまででけえカンバスやるの、あんまり見た事ねえな。」
平川「ない。何で脚立使いながら絵描かなきゃいけないんだ。」
丸井「何でキレてんだこいつ。」
平川「はあー。すっげえ疲れる。」
丸井「……これ下書き?この横の表何だ?色か。やべえな。」
平川「助けて。」
丸井「無理無理。」
平川「知ってる。俺が描く。」
丸井「どうしたまじで?」
平川「……生みの苦しみ。」
丸井「一生ついて回る奴だ。」
平川「一生慣れない。」
丸井「分かるー。」
平川「今回は特にきつい。もう眠い。」
丸井「寝ろよ。」
平川「嘘嘘。眠くない。」
丸井「めんどくせー。今日のお前めんどくせー。」
平川「創作、苦しみ、軽減で検索。」
丸井「ねえよ。ネットにも載ってねえ。」
平川「この時代でもまだ答え出ないのか。」
丸井「人それぞれだからな。……俺まじでつらかった時、神絵師にDM送ったことある。」
平川「何で?」
丸井「つらかったから。」
平川「どういう内容送ったの?」
丸井「はじめましてー、みたいな。いつも拝見しております。あなたの絵のこうこうこういうところが好きです。いつも応援してます。僕も絵を描いていますが、描くのがつらくなったらあなたの絵で元気をもらっています。これからもお体に気を付けてお過ごしください。みたいな。」
平川「ファンの鏡かよ。」
丸井「ビジネスメールみたいになった。」
平川「いや形式はいいよ。丸井偉いな。」
丸井「偉くねえよ。俺そん時本当につらくて、どうにか作品作り終わった時に自分のご褒美としてそれ送ったの。正直滅茶苦茶緊張した。コンクールだのインタビューだのの比じゃないレベルで緊張した。やべえよ?手汗だらっだらだもん。返事が来た時、うわあって。超嬉しかった。すげえ楽しかった。」
平川「……やっぱご褒美って大事だよな。」
丸井「大事大事。」
平川「……俺もちょっとDM送ろ。」
丸井「そうしろそうしろ。推しは推せるときに推せ。」