▶️自作脚本◀️Tempo Rubato 5場
スリーパーとヒーローが作曲している。
そこへ、ユメウリがやってくる。
ユメウリ こんばんは。これ差し入れ。
スリーパー ありがとう。
ヒーロー ありがとうー!ちょうど小腹空いてたんだよね。
スリーパー 飲み物も助かる。
ユメウリ ここ飲食大丈夫なスタジオだよな?
ヒーロー そうだよ。良かったね。
スリーパー ユメウリ遅かったけど、仕事大変なの?無理しなくてもいいよ。
ユメウリ いや、確かに残業はちょっとしたけど、それより、報告があって。来ねえとなって。
スリーパー 報告?
ユメウリ ……こういうのは本人がいる時にする話なんだろうけどさ、カズナリ、好きな人ができたって。
スリーパー えっカズナリ君?
ヒーロー カズナリって、え?
スリーパー 好きな人?恋人?
ユメウリ バイト先で出会って、もう付き合ってるんだと。
スリーパー 男?女?
ユメウリ そこまでは知らねえよ。
ヒーロー いや性別なんてどうでもいいよ。問題はトワだろ。
スリーパー トワは知ってるの?
ユメウリ ……さあ。でも、カズナリなら真っ先にトワに報告するだろうさ。
ヒーロー トワ、大丈夫かなあ。
スリーパー 本当にトワよりも特別な人ができたの?
ユメウリ 分かんねえけど、でも、あいつのあの時の歌は本当に嬉しそうだった。
スリーパー ……。
ヒーロー ……。
ユメウリ 俺は祝ったぜ。おめでとう、恋人大事にしろよって。そしたら、満面の笑顔で頷いてた。好きなんだろうなあ。
ヒーロー ……恋って難しいね。
スリーパー ……カズナリ君は、トワのことを唯一の人だと思ってて、トワも同じ思いだったろうさ。トワにとっても、カズナリ君は唯一だった。でもトワはそれに加えて欲を孕んだ。
ヒーロー 欲を抱くのは悪いこと?
スリーパー いや。トワはその欲を制御してたから、カズナリ君を傷つけなかった。でも、欲をぶつけなかったから、トワの思い通りにはならなかった。
ヒーロー トワは優しすぎるんだよ。
ユメウリ 臆病とも言う。
スリーパー ……応援していたこっちも、なんだかしんみりしちゃうね。
ヒーロー 歌にしよう。二人のことを。
ユメウリ 結局それかよ。
ヒーロー それしかないよ。俺たちには。歌にすることで、乗り越えるしかないんだ。
スリーパー 音楽家ってのは、つくづく不器用な生き物だね。
ユメウリ 悲しいもんさ。
ヒーロー なに他人事みたいに言ってるのさ。
スリーパー いや。きっとトワも同じだと思ってね。
ユメウリ だろうな。
ヒーロー 俺たちも負けられないよ。
ヒーロー、ユメウリ、スリーパーが去る。