《自作脚本》せめて「月が綺麗ですね」くらい言ってくれ
とあるバー。男女がカウンターに座って飲み物を飲んでいる。
師匠「お前、愛してるってセリフにどのくらい愛してるって気持ち入れてる?」
弟子「何ですか、いきなり。どのくらいって?」
師匠「だから何%くらい愛してるって感情込めながら愛してるって言う?」
弟子「えー、30%くらいですかね。」
師匠「思ったより少ねえな。」
弟子「そういう師匠は?」
師匠「じゅ、15とか?」
弟子「少な。私よりも少ないじゃないですか。」
師匠「だって込められねぇんだもん。」
弟子「いやまあ、それはそうなんですけど。逆に何込めてます?」
師匠「場面にもよるな。告白だったら、相手もどうか同じ気持ちでありますようにって願いが強い。」
弟子「あー、良いですねえ。私もほぼ同じです。私の気持ちを知ってください。その上で拒まないでくださいって思いますね。」
師匠「恐怖と緊張と、傲慢な期待だよな。」
弟子「告白ならそんなもんでしょ。愛を確かめる時の愛してるはどんな感じです?」
師匠「性欲。」
弟子「くそ。」
師匠「ごめんて。あー、可愛い可愛い好き好き大好きって感じ。」
弟子「可愛らしく言いましたね。」
師匠「可愛いでしょ?」
弟子「ムカつきますねえ。愛を確かめる時でしょ?この時をずっと続けたいってか、ずっと一緒にいたいって思いですかねえ。」
師匠「キャー、可愛い。」
弟子「褒めてます?」
師匠「いや別に。褒めてもいないし否定もしてない。ふうんって感じ。」
弟子「情緒不安定かよ。」
師匠「じゃあよくある死ぬシーンで恋人に言う愛してるは?」
弟子「うわ、むず。」
師匠「まあ俺はさようならだね。」
弟子「ああ、それはそう。いやでもなあ、死にたくないとかもあります?」
師匠「あるんじゃねえの、知らんけど。死にたくないを愛してるに置き換えたら激重じゃない?」
弟子「忘れないで、よりは重くないでしょ。」
師匠「忘れないで、忘れないでー?思うかー?いや、思う人は思うか。俺は、あとはね、綺麗だなって思いながら言う。」
弟子「え?」
師匠「最期の景色で最期に見る恋人だろ?綺麗っつーか、もうなんか美しすぎて、思わず愛してるって出るわ。」
弟子「めちゃくちゃ良いこと言うじゃないですか。光景が目に浮かぶ。」
師匠「もっと褒めてもいいぜ。」
弟子「うざ。」
師匠「ごめんて。」
弟子「逆に愛してるって感情が高ぶってるときって何て言うんでしょうね。」
師匠「無言で抱きしめる。」
弟子「何か言ってくださいよ。」
師匠「今日シていい?」
弟子「下ネタかよ。」
師匠「えー、逆にお前何て言うの?」
弟子「……うーとかあーとかじゃないですかね。」
師匠「おめーも喋ってねえじゃん。」