《脚本》今夜、愛は俺たちのもの
少女「ねえねえ、起きて!」
青年「起きてる。」
少女「今夜愛が支給されるんだって!ニュース見た?」
青年「見てない。」
少女「もう今日はそれで持ち切りだよ。ラジオ聞いてないの?」
青年「ふうん。」
少女「愛があったらどうしよう。何に使おうかな?」
青年「それ本当なの?」
少女「本当だよ。」
青年「誰がそんなことすんの?」
少女「流れ星だよ。」
青年「何だよ、デマかよ。」
少女「デマじゃないって。知らないの?流れ星。」
青年「知ってるよ。あんなの、本当か分かんねえじゃん。」
少女「本当だって。だってこの間また愛が大量に盗まれたって。」
青年「あの会社のところだろ。あんなに持ってりゃ、流れ星が来なくてもバレてた。」
少女「もう何だよ、流れ星嫌いなの?」
青年「嫌いではないけど、信じてもいない。何でそんなことするのか分からない。」
少女「えー?前あの会社の事件のとき、愛が枯渇した地域に愛が空から降ってきたって、あんなにニュースになったじゃん!」
青年「何でわざわざ盗んだものを人にやるかね。」
少女「人助けでしょ。正義の義賊だよ。」
青年「そんなことしても、愛が枯渇してる人はこの世界に山程いる。捕まったら終わりだろうに。」
少女「でも独占してる奴らから盗んで、皆にあげるって、格好いいじゃん。」
青年「……ヒーローねえ。悪いのは上の奴らばっか愛があって、枯渇してる奴らに寄附しねえこの社会のシステムだろ。そのシステムを変えてこそのヒーローだろ。盗みなんて犯罪をしなくてもなあ。」
少女「なら、今日の夜、流れ星にそう言ってみたら?」
青年「は?」
少女「こんな犯罪はもうやめてくださいって。捕まっちゃいますよってさ。」
青年「会えるわけねえだろ。」
少女「会えるかもしれないじゃん。予告では、この地域に来るって。」
青年「は?ここに?どこから盗んで?」
少女「セントラルの。」
青年「ここに?いやいや、誰も見たことない流れ星だろ?会えねえ会えねえ。そもそもこの地域っつっても広いだろうが。もっと枯渇してるところに行くだろ。」
少女「急に喋るじゃん。」
青年「何で予告なんてアホなことすんのかね。」
少女「ポリシーとか?」
青年「だっせ。捕まりてえのか。」
少女「ねえ、今日流れ星探しに行く?」
青年「行かねえよ。」
少女「何で?」
青年「会えるわけねえからだよ。」
少女「愛いらないの?」
青年「いるけど、自分で働いて買うからいい。」
少女「また高くなったよ?」
青年「……生きるためにはしゃーねえよ。」
少女「……なら、私もここにいる。」
青年「行ってくれば良いじゃねえか。」
少女「治安悪いからあんまり一人で出掛けんなって言ったのはそっち。」
青年「……。もしもうちにも流れ星が来たら、良いな。」
少女「なあに?さっきと言ってること違う。」
青年「お前に悪いと思って。楽しみにしてたんだもんな。ごめんな。」 少女「……ねえ、今夜もしもこの家にも本当に流れ星が来てさ、一個ずつ愛を支給してくれたら、半分あげよっか?」
青年「いらねえ。自分で使え。」
少女「私は大丈夫だよ。」
青年「駄目。ちゃんと自分のために使えよ。」
少女「……へへ。それ、流れ星に会えたら言いなよ。」