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気分が晴れる言葉をください

降ったり止んだりの、傘マークの空模様。
そんな連休のさなか、とある本について書いてみたいと思います。

『なんか気分が晴れる言葉をください』 
  塩谷直也著(2013年 保育社)


厚さ1cm ほどの薄めの本。
ちなみに、マンガではありません(っぽい表紙ですが)。

牧師さんが書いた本で、「聖書が教えてくれる50 の生きる知恵」というサブタイトルがついてます(ここで引いちゃう人もいるのかしら・・)

青山学院大学・法学部で「キリスト教概論」の教鞭もとる著者。
ふだん、学生達から、いろいろな悩みごとの質問をされるそう。

聖書の言葉をガイドにしながら、“応答” するそうで(解答ではなく)、そんな質問の中から、50個を選んで編集された「Q&A」式です。


Q&A(出版社抜粋)より


Q 「生きがい」が見つかりません……
A それ、要りますか?

Q 「あんたなんか産まなきゃよかった」って言われました。
A その言葉に、乗っかるなよ~。

Q 「人生、お金ではない!」と言われましたが……
A その方はお金で苦労したことがない人でしょう。

Q 将来○○の仕事に就きたい、と気持ちばかり焦ります。何から始めればよいでしょう?
A まず、失敗しなさい。

Q 「マザコン!」と、彼女にさげすまれました。ただ親を愛しているだけなのに……
A 「愛」は自由で対等、「マザコン」は拘束と支配。

Q 「人間、学歴ではない!」ですよね?
A そういう人に限って、そこそこの学歴があったりします。


えっ・・・牧師さんですよね?

私はクリスチャンではないけれど、牧師といえば、「右の頬を打たれたら、左の頬をも差し出しなさい」なんて静かに諭すイメージ。生真面目で慈悲深く、かつ、少しばかり説教臭い感じ(すみません)。

ところが、この牧師さん・・・上の概要を見ただけも、ちょっと型破りと思いますよね?

1つ1つの詳細を読み進めると、実にユニークで柔軟、かなり視野が広い方だと感じます。例え話など交えながら、フランクに解りやすく。クスッと笑えたり、ジーンときたり、「そうきたか~」と、ぽんと膝を叩きたくなるような。

若者なら、「かったるいなー」なんて思わずに、いったん受け入れられそうな。

年齢や信仰に関係なく、気軽に読める内容。私もコロナ禍の頃、たまたま目次を見て、興味をそそられたのがきっかけでした。


中身を3つ程、ご紹介します。
(Q :質問。A:回答)


Q 立ち止まったまんまです・・・。

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【引用】

わたしは魂を沈黙させます。
わたしの魂を、幼子のように
母の胸にいる幼子のようにします。
(詩編 131-2)


A さぞかし広い景色が見えるでしょう

高速道路を運転する。
速度が増せば増すほど、視野は狭まっていく。

いつもは自転車で通る道を、たまには歩いてみる。
思いがけないお店を発見し、美しい木々の緑に思わず立ち止まる。

ゆっくりすればするほど、
実は視野は広がる。

とりわけ今は立ち止まったわけだから、
360° 見渡せるはず。

今はその景色を十二分に楽しむときじゃないかな。

「母の胸にいる幼子のように」力を抜いてみる。

大切な落とし物を拾うとき、
人は立ち止まるのだから。

見落としてはいけないものを注視するとき、
人はたたずむのだから。



Q 神がいるなら、どうして「生きもの」の命がなくなるような世界を造ったの?

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【引用】

しかし、言っておく。
栄華を極めたソロモンでさえ、
この花の一つほどにも着飾ってはいなかった
今日は生えていて、
明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、
神はこのように装ってくださる。
(マタイによる福音書 6/29~30)


A 終わりがあるから美しい

大学生活は楽しい?
そう、楽しいんだ~。
でもさ、一生大学生をやってろと言われたら、地獄だよ~。

大学時代は
いつか終わりが来るから美しい。

どんなに精巧な造花も、今朝花開いたばかりの、命の香りを漂わせる朝顔にはかなわない。
なぜか。
朝顔は枯れるから。

今日の君の若さは、おじさんから見るとあまりに美しい。
なぜか。
いつか老いるから。
いつまでも若かったら、それは造り物(にせもの)だ。

すべて死ぬ。すべて終わる。悲しいね。
でもだからこそ、一瞬、一瞬、息が詰まるほどの美しさに世界は満たされているのではないだろうか。小さな花の美しさが、
ソロモンの虚飾きょしょくを上回るのではないだろうか。


Q 昨晩、気がつくと、飛び降りようとベランダに立ってました・・・(戻ってきましたが)

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【引用】

苦難の中でわたしが叫ぶと
主は答えてくださった。
陰府よみの底から、助けを求めると
私の声を聞いてくださった。
(ヨナ書 2/3)


A  ベランダは景色を眺める場所。
  外出は玄関から。

予備校時代の倫理社会の先生、とても変わっていた。
なぜ生きるのか、それをいつもくどいほど語っていた。
そう語らずにはいられないほど、
私たち浪人生の姿が危なっかしく見えたんだろうな・・・。

その彼が語っていたよ。
「人生、歩いていると不思議な窓に出会う。
ふと外をのぞくと深淵が見える、そんな窓。
見つめていると吸い込まれ、つい飛び込みたくなる。
でも、そこでストップ!
帰ってきてください。
みなさん、窓は眺める場所です。
眺めるのが終わったら、帰ってきてください!」

君も、ベランダから、陰府の底をのぞいたんだよね。
そして、戻ってきたんでしょう?
やったね、君は「窓」を通り過ぎたんだ!

さあ、準備はできた。
支度したくして、玄関から出発だ。


『なんか気分が晴れる言葉をください』塩谷直也 著より


このように「Q&A」が続きます。

全体に、軽妙洒脱なA(答え)でありながら、本心に敏感な若い人たちに真剣に向き合った視点で、解答ではなく「応答」というのも、謙虚さを感じました。

応答に対して、別の生徒から新たな質問が生まれ、対話が生まれ、やがて対話の向こうに、新たな景色が見えてくる。新たな景色が生まれれば、若者たちは新たな一歩を踏み出すことができる――そのように前書きにもあったけれど、やっぱり上からでなく、共に学ぼうとする立ち位置なんですね。聖書にあるような、「謙遜」という心の在り方も教えられた気がします。


実母に貸していて、最近手元に帰ってきた本だけど、久しぶりに読むと、何だか「心に響く詩のようでもあるなぁ」と思いました。
本を閉じ、見上げた梅雨空も少しだけ明るくなってきたようです。



長文お読み下さり、ありがとうございます。



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※出版社様 

一人でも多くの方にこの良書を知って頂きたく
内容のご紹介をいくつかさせて頂きましたが、
著作権等の問題があるようでしたら、
引用文を削除いたしますので、その場合は
コメント欄よりお伝え下さいますようお願い申し上げます。


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