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玩具屋の集客率アップをマーケティング視点で考える。

東京の西、M市に古い玩具屋がある。

僕はたまさか用事があってM市のその通りを歩いていた時、偶然その玩具屋を発見した。僕が子供の頃よく目にしていた、昔ながらの玩具屋で、いかにも当時物の超合金などが眠っているであろう魅力的な佇まいの玩具屋だ。

当然僕は足を止めた。

ところ狭しと陳列された玩具の箱を、1メートルほど離れた位置から僕はしばらく凝視していたが、意を決して恐る恐る店の奥を覗いてみた。すると少々無愛想なオヤジさんが椅子に腰掛けて退屈そうにしているのが見えた。

お客さんは誰もいない。迷った。入るかどうか。しかし結局、僕は勇気が出せなくてその日は入らなかった。

実はそんなことが何回かあった。いつも1メートルほど離れた位置から玩具の箱を凝視しているだけで、僕はいまだにその玩具屋に入ることができていない。ものすごく、入りづらいのだ。

お目当ての玩具が見つかれば、僕は買う。当然値段にもよるけれど、少なくとも買いたいと思っている人間だ。しかしどうしても入ることができないのだ。これはその玩具屋にとっても、決して良いことではない。今まさにここに需要があるのに購入どころか入店にすら至らないのだから。

お店のスタンスとして、別に趣味で経営してて買ってくれなくともやっていけてる、ということならばとやかく言う必要はないのだが、少なくとも店を開けているということは、売りたい気持ちは店主側にもある筈だ。にもかかわらず、入店しづらいこの雰囲気はなんだろう。

そこで今回はこの玩具屋を例に、集客率を上げる為に改善すべきポイントをマーケティングの視点から考えてみようと思う。

まず消費者の行動パターンをフレームワークに落とし込んでみる。大きく4つのブロックにこれは分かれているので順を追って説明してみる。

件のM市の玩具屋のある通りに一日平均どれくらいの人数が通り過ぎているのかは、僕も地元の人間ではないのでまるで予測はつかないが、ここではあまり具体的な人数は関係ないので仮に300人程度、としておく。

その300人が玩具屋の前を通り過ぎている。これはWEBマーケティングに当てはめるとインプレッション(imp)ということになる。ツイッターをやったことがある人は記事の「ツイートアクティビティ」を見るとわかることだが、「ユーザーがTwitterでこのツイートを見た回数」というのがインプレッションだ。

次にその通行人の中から何%かの人たちが、玩具屋に興味を持ち入店する。これは同じく当てはめるとCTR(クリック率)となる。CTRとはClick Through Rateの略でインプレッション数のうちユーザーがクリックした回数の割合を示す言葉だが、これはYouTubeに例えるとわかりやすい。つまりサムネをクリックした率ということになる。

CTR(%)はクリック数÷広告の表示回数(インプレッション数)×100で求める事ができるが、玩具屋に例えると「入店者数÷通行人数×100」ということになる。

3つめに玩具屋に入店して購入した人、つまり成約に至った人はCVR(コンバージョン率)に例える事ができる。CVRとはConversion Rateの略で、WEBではサイトに訪れた人の何人がコンバージョン(成約)に至ったのかの割合を示す言葉で、玩具屋に例えた場合は入店した人の中で何人が玩具を買ってくれたか、その人数の割合になる。

基本的な計算式はCVR(%)=コンバージョン数÷サイト訪問数×100だ。これも玩具屋で表現すると「購入者数÷入店者数×100」という事になる。

最後に、購入者が一回の来店でどのくらい購入してくれるか、あるいは再来店して購入した場合も含め、一顧客あたり生涯でどのくらい玩具屋に売上をもたらすか、顧客生涯価値という考え方があり、マーケティングの領域ではLTV(Life Time Value)と呼ばれている。

当然一回限りで終わることなく、なるべくリピートしてもらうこと、つまりLTVを上げることがお店にとって重要課題だ。LTVの式はいくつかあるがLTV(円)=購買単価×購買頻度×継続購買期間、などが一般的だ。

以上4つのブロックの掛け合わせが、消費者の行動パターンであり、そのお店にとっての売上ということになる。

これは僕の尊敬する経営者・株本祐己氏が紹介していた公式であり、彼独自のものなのか、広くマーケ業界では有名な公式なのかはわからないが、ここに引用させていただく。※問題があれば削除致します。

売上=imp×CTR×CVR×LTV

これを玩具屋に当てはめると「通行人数×入店率×購入率×生涯トータル購入額」ということになるかと思う。

では実際のM市の玩具屋の集客率改善策をどのように考えていくかだが、概ね売上が芳しくないとimp(通行人数)とCTR(入店率)に注力しがちだ。もちろん通行人数をコントロールすることは市長にでもならなければ不可能なので、多くの場合は入店率の方を改善する。つまりチラシやポスター、看板などの宣伝にばかり注力してしまう

当然ながらそれらが集客率アップの足を引っ張っているのであれば改善すべきだが、原因がimp(通行人数)とCTR(入店率)とは限らない。分解して考える事が重要だ。

先ほども述べたように通行人数はコントロールできない。M市の玩具屋がある通りの通行人数が300人で、その数が他の通りと比べて極端に低い数字であったとしても、既にオープンしている店であれば引っ越しするわけにもいかないだろう。

しかしツイッターの説明にもあるとおり、インプレッションとは「ユーザーがTwitterでこのツイートを見た回数」である。そこに玩具屋があると認知してもらえる人数はある程度コントロール可能だ。

300人通行人がいたとしても全員が全員、玩具屋がそこに存在していると認知しているとは考えにくい。この点は改善の余地があるわけだ。

僕は玩具屋にもともと興味があるから見つけられたが、興味の無い人にも認知されているのか、この点を改善するとすれば、わかりやすい店構えや看板になるわけだが、これはCTR(入店率)にも関係していることだ。

実際見たところ、店構え的にもわかりやすかったし、看板は平凡だとはいえ、そこに玩具屋があることは初めてその通りを訪れた、まったく玩具に興味の無い人でも概ね気付くのではないかと感じられた。ゆえにこの玩具屋に至ってはこの部分は特に何も策を講じることはないのかもしれない。

次にCTR(入店率)をどう改善するかだが、これはかなり重要だと感じた。なにしろ実際僕は店の前まで行ったにも関わらず、入店に至ってないのだから。

僕が入れなかった理由、それは店の奥にラスボスのごとく鎮座している店主の圧迫感だ。もちろん割引セールのPOPや玩具の入荷情報の告知なども必要性は感じたが、最終的に入店しなかった理由はこのボスキャラの存在だ。

非常に入りづらい。最早「入ってくるな!」という威圧感さえ感じる。

ここはかなり改善の余地ありで、結論からいうとボスキャラの前に中ボス、もっというと親しみやすいスライムのようなモンスターを配置すべきである。倒すというより仲間にしたいような、そんな親しみやすい人材が必要だ。

おそらく浜辺美波のような美少女が適任だろう。

ここを改善するだけでも僕は必ず入店するし、買う気もない玩具まで余計に購入することになるだろう。

いや、これはなにも僕だけじゃない。玩具に興味のない人にとっても、店に浜辺美波が立っているだけで、入店したくなる筈だ。間違いない。確信している。

次にCVR(購入率)を改善する場合はどうすべきかを考えてみよう。これは僕に関していえば簡単だ。ビーダマンゼロヨンQ太の秘技レースセットタイムボカンシリーズの超合金など、当時物の玩具があれば間違いなく購入率は上がる。

1メートルほど離れた位置から見たところ、それらの商品があるかはわからないが、「何かひとつくらい掘り出し物がありそう」な雰囲気はあった。しかしこれは入店前の印象にすぎず、実際入店してからの購入率を上げる為には、やはり在庫の豊富さや希少性は重要だ。しかも他より安ければなお良し。

とはいえこれもボスキャラの存在が実際は邪魔をするだろう。これは予測だが、仮にそれらの商品があったとしても、だ。あのボスキャラから購入できるかどうかはわからない。もし接客態度が悪かったなら、買いたい玩具があったとしても、ここでは買うものか!という結論に達するだろう。

やはりここでも浜辺美波が重要であるといえる。

次にLTVの改善。生涯トータル購入額という表現をしたわけだが、仮に目当ての玩具を購入したとして、再度来店して買うか、という点だが、最初の購入で気持ちよく取り引きできていたのであれば(むろん在庫状況にもよるが)再来店は期待できる。

例え買わなくとも入荷チェックの為に何度となく訪れる可能性は大いにある。が、接客態度や商品の不具合など、嫌な体験や不満点などを感じれば、LTVは上がる事はない。

最悪それらの点がイケてなかったとしても、クリアできる方法、LTVを上げる唯一の方法がある。

浜辺美波だ。

浜辺美波に接客されたのであれば、用もないのに通うことになるだろう。

このように、集客率上げる為には各ブロックごとに改善点を洗い出す事が重要で、単純に集客率が悪いからとチラシやポスター、ネット広告で宣伝しまくろう、というのは(それはそれで大事なことではあるが)根拠の無い改善策、ということになる。

今回の玩具屋の場合は、実際入店していなので机上の空論ではあるけれど、考え方としてはこのようなフレームワークに落とし込んでみると改善策は練りやすい。

机上の空論ではあるけれど、最後にあの玩具屋に関してこれだけはひとつ、喫緊の課題としてはっきりといえることがある。

浜辺美波。

やはりあの玩具屋には彼女が必要だ、ということである。

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フラッペ|グラフィックデザイナー(HHH WORKS ハイスコアワークス)
ずっともやしを食べて生活してます。。。サポートしていただけたら野菜炒めに昇格できます。よろしくお願いします。