
拝啓 ~腐っていた頃の俺へ~
転機は高校に上がった頃だった
中高一貫校だった俺は、周囲の環境にさしたる変化もなく、高校生になった
ただ、高校の担任と気が合わなかっただけだ
俺の出身校は県内でもトップの偏差値の私立だった
そして、俺の学校は医者の息子・娘が多い学校だった
私立というのは残酷で、親の立場によって教員の態度が目に見えて違うものだ
俺の両親は二人とも公務員だった
俺が10秒遅刻をしたら、クラス全員の前で説教
10分後に医者の息子が颯爽と遅刻をしてくると、"気をつけろよ"の一言
俺が憮然とした表情を浮かべると、"10秒の遅刻は10分の遅刻よりも悪い"と理解のできない説教が飛んできた
翌日10分遅刻していった
死ぬほど怒られた
学年が上がる時に、"前のクラスの自分のロッカーの整理をしておけ"とクラスに注意喚起があった
午後の集会の後に片付けようと思っていた俺は、集会に向かう列の中で急に教員に呼び出された
呼び出しに向かうと、教員は俺の胸ぐらをつかんで、壁に押し付けこう言った
"お前ロッカー片付けてないよな?"
俺は、"はい、すみません"と一言言った
集会の後片づけに向かうと、クラスメイトの何人かがロッカーの整理をしていた
"呼び出された?"と俺が聞くと、"いや、何も言われてないよ"とみんなが口を揃えて言った
こんなエピソードは極一部で挙げ始めたらキリがない
いつの頃からか、俺は教員への口答えを一切しなくなった
"目の前に立っているのは、人間ではなくゴリラだ"
"ゴリラに人間の言葉で反論をしても挑発行為としか捉えてはもらえないだろう"
"だから、何も言わずに嵐が過ぎ去るのを待とう"
今思えば、俺は学校生活のことなんか親に話さなかった
俺の親は、晩飯が必要かどうかさえ連絡していれば、俺が朝帰りしようが全く首を突っ込まずにいてくれる人たちだった
きっとそういう俺の性格や親との関係性を、教師は分かっていたんだと思う
そんな生活の中で、高校生の俺は理解してしまった
これが社会なんだと
この頃の俺は、大人を完全に信用できなくなっていた
この頃は、覚えたての麻雀にどっぷり漬かっていた時期でもあった
俺の友人が下宿していたので、友人宅で徹夜で麻雀をして、昼過ぎに学校に向かう生活になっていた
"何をやったって、大人は何かと理由をつけて俺を否定するだけだ"
そう考えていた俺は、麻雀を言い訳に、朝や帰りのHRの出席を避け、授業だけ最小限の出席をすることで、担任との接触を避けるようになっていた
こんな俺に好意を寄せてくれた女も何人かいた
いわゆる告白イベントも何度か経験した
でも、俺は基本的に全部断っていた
自暴自棄になっていた俺は、"君みたいな子が俺なんかと一緒にいたらダメだよ"という思いが根底に深く根を張ってしまっていたからだ
それでもという子と何人か付き合ったが、学校にすら碌に行かず麻雀ばかりやっている俺とは、やっぱりウマが合わなかった
大学受験も最初はする気がなかった
"高校がこんなもんなら、大学も会社も同じことだろう"
"それなら親に、大学に行くはずの金で2年ぐらい海外に行かせてもらおう"
"外国で日本語教師をするか、帰ってきて日本で外国語教師をすれば食っていくことぐらい可能だろう"
本気でそう考えていた
親にもその話をして、ニュージーランドがいいんじゃないか?というところまで実際に話は進んでいた
ただ、
"現役の年だけは受験してみるといい"
と言われ、第一志望を一応決めた
受かれば進学するけど、落ちたらニュージーランドという条件で受験をした
センター試験はあまり上手くいかなかったが、二次試験ですこぶる調子がよく、合格してしまった
大学は国立大学だったが、ここで俺は自分の視野の狭さを知った
きちんと課題を提出していれば、教師は文句を言ってこない
ゼミの研究をしっかりすれば、教授は少し褒めながら、成果を認めてくれる
今考えると当たり前だが、俺は大人が自分を認めてくれるという当たり前に至極感動した
俺はサラリーマンになった
会社で最初に与えられたタスクは、とある業務自動化ツールの仕様調査と導入支援だった
周囲にそのツールの知識がある人は皆無だった
というか日本に導入事例がなかった
普通の人は、"誰にも教えてもらえずに出来るわけねえだろ"で終わるかもしれないが、俺は死ぬ気で調べた
"俺みたいな人間は、ほかの人間よりも圧倒的に成果を出して、初めて対等に認めてもらえる"
大人への信用がまだ完璧でなかった俺は、その認識で死ぬ気でやった
気づけば俺はそのツールの知識で日本トップクラスになっていた
周囲の人間全員が俺の存在価値を認めてくれた
今はそこまでの気力は無くなり、テレワークも相まってサボりながらやっている、、、
SNSでの俺のイメージは、もしかしたら明るいよりなのかもしれない
でもその裏側には、"他人なんて自分を認めてくれないのが当たり前"という認識がある
"どうせ何やったって駄目なら、せめて自分の思うカッコいい人間でありたい"
それが俺の行動原理であり、それは今後も揺らぐことはないのだと思う
ということで、俺はカッコいいので、これを読んだ女性のフォロワーはDMください!
お待ちしております!🐸