【夕陽のガンマン】名無しの男が帰ってくる…黒づくめの男が待つ!
初めに
こんにちは、Wes.Ternerです。
1本目はセルジオレオーネ監督作品「夕陽のガンマン」です。
私が初めて買って観た西部劇で、今でも非常に印象深い作品です。
まだ覚えていることは多いですが、これを忘れたらコトだぞってことで早いうちに書いておきます。
※ネタバレしかしません。
あらすじ
ざっくりとです。元軍人のダグラス・モーティマー大佐と謎の男モンコ。
二人の賞金稼ぎは$10000の賞金首のエル・インディオを追うという目的の一致から一時の協力関係を結びます。インディオ一味に潜り込みますが、賞金稼ぎだとバレてボコボコにされます。その後、インディオの策略で開放されます(金を山分けしたくない→主人公たちと部下たちで殺し合いをしてもらう→残った方を自分が始末する)。そこから銃撃戦が始まり、最後は王道の決闘で幕を閉じます。
思うところ
二人の主人公が協力し合うものの、常に自分が上手だと言わんばかりに腹の探り合い、出し抜き合いをしているのが面白いです。また主人公たちの装備品や日用品などが対照的になっていて、考察が捗る材料になっています。
モンコは流れ者らしく、銃身長5.5inchのピースメーカーを一丁しか持っていません。終盤でヴォルカニックライフルを持っているシーンがありますが、おそらくインディオのアジトから拝借したものでしょう。服装もラフアウトのブーツ、羊革のベストにポンチョという出で立ちです。
一方でモーティマー大佐は元軍人ということもあり、全身黒のスーツスタイルです。ベストだけやたら派手なのは意外とオシャレ好きということなのでしょうか。いいねポイントです。拳銃はモンコと同じくピースメーカーなのですが、銃身長がやたら長いです。おそらく10inchほどはあるかと思います。射撃時はそれにショルダーストックを取り付けて狙撃します。モンコは早撃ちなのに対し、こちらは狙撃スタイル。戦い方も対照的なんですね。
その他にも大佐は武器を携行していて、ウィンチェスターライフル、ポンプアクションライフル、主武器のそれよりもさらに長い銃身長のピースメーカナーなど、歩く武器庫状態です。なお、劇中でこれらの武器が全て使用されるわけではありません。火を吹いて欲しいとも思いますが見せるだけ、という監督の粋(?)な演出もたまりません。
ちょっとした持ち物にも違いがあって、大佐は単眼鏡にパイプ。モンコは双眼鏡に紙巻きタバコといった具合で、描かれているのも気づくと面白いですね。
悪役のインディオにも目をやって見みましょう。カウボーイ、ガンマンというよりはメキシカンな出で立ち。ハットも被らず、ガンベルトも肩から下げてショルダーホルスターのように吊り下げています。言ってしまえばだらしない格好なのですが、それがかえって大悪党の貫禄すら感じさせます。ピースメーカーは銃身長7.5inchのものを…と思っていたのですが、最近海外のサイトを物色しているとあれは8inchほどの銃身長のものであるとの記述がありました。見直してみると確かにそんな気もします。どうなんでしょう?
また、彼は決闘のスタイルにこだわりを持っていて自前のオルゴールをかけて、音楽が止まったら銃を抜け。と是非もなく自分のスタイルで決闘を仕掛けます。前述の通り荒くれ男感満載なのですが、不思議と上品に感じてしまいます。そして彼にはクスリで紛らわせるしかないような苦い過去があり、それがモーティマー大佐との因縁に繋がってきます。
襲った女性が自殺?銃の暴発?劇中の描写でははっきりと分かりませんが、ベッドの上で、目の前で死んでしまいます。この場合、殺してしまったというべきでしょうか。このことがトラウマになっているのか、インディオは欲望の赴くままではなく、思慮深く、疑り深く行動しています。それを象徴するセリフがありまして、
「カネは盗むよりも、使う方が難しい。」
強盗に成功した後で、部下を嗜める際に放った一言です。
部下にも賞金がかけられていますが、インディオのそれとは桁が違います。
やはり悪党としての格が高く、上品さも伺え、カリスマ的に写るのはこうした演出あってのことなのかなと思います。
実は殺してしまった女性はモーティマー大佐の妹で、インディオが持っているオルゴールは彼女から奪ったものでした。そして大佐も同じものを持っていて、物語の終盤でそのことが判明します。大佐とモンコはインディオ討伐という目的こそ同じでしたが、その理由は全く別で、モンコは報酬。大佐は復讐のためにインディオを追っていたのでした。何から何まで対照的だった二人は目的までも違っていたのです。実は伏線は張られていて、序盤インディオの手配書を見るカットがあるのですが、モンコは賞金の額を見ていて、大佐はインディオの名前を見ていたのです。こう言った伏線があるとまた見返したりして、その度に新しい発見があったりします。そういうのも面白いですよね。
音楽もこの作品を語る上では外せません。イタリアの巨匠、エンニオ・モリコーネの旋律は荒れた大地と容赦のない暴力性を感じさせつつ、一抹の儚さや裏寂しさを感じさせます。中でも「Il Vizio di Uccidere」は特にお気に入りで、インディオの暴力性と見え隠れする弱さがメロディに現れていているように感じます。
終わりに
さて、備忘録ついでに書いてきました。なにぶん初めてということもあって、ここまで読んでいただいた方には感謝と申し訳なさでいっぱいです。
これからも不定期的に西部劇の感想を綴っていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
Wes.Terner
作品概要
邦題:夕陽のガンマン
原題:Per qualche dollaro in più(英:For a Few Dollars More)
監督、脚本:セルジオ・レオーネ
音楽:エンニオ・モリコーネ
公開:伊:1965年12月18日
米:1967年5月10日
日:1967年1月27日
出演:クリント・イーストウッド
リー・ヴァン・クリーフ
ジャン・マリア・ヴォロンテ