欧州スーパーリーグについて思うこと(その後)


(前回の記事の続きです。この記事をお読みいただく前に、まずそちらをご覧ください)

18日に公表された欧州スーパーリーグ(SL)の構想は、早くも瓦解したようです。
参加を表明した12クラブのうち、イングランドの6チーム(マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ、リヴァプール、チェルシー、トッテナム、アーセナル)が抜けたと思ったら、スペインのアトレティコ・マドリード、イタリアのユヴェントス、ミラン、インテルもそれぞれ席を立ちました。
今やテーブルに残ったのは発案者のレアル・マドリードと、その永遠のライバル、バルセロナのみという皮肉ぶり。

そして、中心人物のフロレンティーノ・ペレスも構想の一旦停止を発表。
ここまでわずか2日間、48時間程度の出来事でした。
一体なんだったんだとしか言いようがないですが、結局こうなったかと。

今回の頓挫について、ペレス自身のコメントを引用すると、
「少し悲しく、失望している。チャンピオンズ・リーグ(CL)のフォーマットは古く、興味を持たれるのはベスト16からだ。そのため2月から始まるCLではなくシーズンの最初から欧州大会を始めたかった」

「国内リーグはアンタッチャブルであり、金を生み出すのはミッドウィークなんだ。ほかに解決方法はない。上にいるクラブの金が枯渇しながら、そのほかが私たちを通じて儲けるなど、あってはならない。上に金がなければ、金自体が存在しなくてなってしまう」

ここで少し補足しておきます。
ヨーロッパ最高の舞台であるCLは、各国のレギュラーシーズンが始まる夏頃から開始されます。前シーズンの成績から出場権を得た32チームがグループステージ(4チームを1つのグループにした合計8グループに分かれ、グループ内の総当たり戦を行う)で1・2位が勝ち抜け、16チームでノックアウト・ラウンド方式のトーナメントを行い、その王者を決するのがレギュラーシーズンが終わる5月のこと。
この方式は、微妙な違いはあるけどワールドカップにほぼ準拠しています。

ちなみに、2024年からCLのフォーマットが新しくなりますが、専門誌の記事をご覧ください。

さて、ペレスのコメントに話を戻します。

SL騒動をめぐる最大の焦点は、ご承知のとおり金です。CLやELに出場するクラブの収益と、UEFAが得る収益があまりにも透明性を欠きアンバランスである、というのがフロレンティーノ・ペレスの主張です。
しかし、これに言及するならばそれはまずUEFAの既得権益であったり、UEFAという組織の体質の問題であって、SLを開催することとは別の話だと考えます。

また、スポーツ面に関して。
CLに関しては、本当にそうだろうか。
サッカーは極めて面白いスポーツだと思います。知名度や規模で劣るクラブが、名だたる強豪を撃破することがあります。
例えばCLでも、昨年のグループステージでイタリアの古豪アタランタがリヴァプールを撃破しました。決勝トーナメントでの躍進も含め、あのアタランタのパフォーマンスは痛快でしかなかった。
確かに、グループステージよりもノックアウト・ラウンド方式のトーナメントの方が注目を集めるかもしれません。
クラブやサポーターにとって、CLは経済的な見返りも大きいことは確かですが、それと同時にヨーロッパ最高の舞台であり、名誉でもある。
このピッチに立つことができる選手はほんの一握りしかなく、サポーターは愛するクラブを必死で後押しする。リーグ戦とは違う熱量をもって声を張り上げ、クラブや選手の名前を叫び、歌い、プレーの一つ一つに一喜一憂する。勝てばともに喜び、負ければ嘆き、涙する。
それは単なる金の問題ではない、ハートやプライドの話です。
それがCLやELに出場しない小さなクラブであったとしても、同じことが言えると思います。

青臭いかもしれませんが、人間は必ずしも金だけで動く生き物ではない。損得だけでない感情があるから、文化やスポーツは人々に根付くものです。

このSL構想はまだ尾を引くかもしれませんが、まだまだ流動的であり、なんらかのことを考えるきっかけになるかもしれません。

少なくとも現時点では、人々の思いがクラブを動かし、そして誰もいなくなったということです(最後にこれが言いたかっただけです笑)。

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