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麻めぐり

一年前、精麻のお飾り作りを習いました。

精麻とは、大麻の茎からとれた皮から表皮を取り除き、靭皮部分を取り出したもので、光沢のある強靭な繊維で、古来日本では神事信仰と深く結びついたものでした。

自作の精麻飾り

祓い清める作用があるとのことで、そのお飾り作りを体験していました。
精麻を指でしごいて柔らかくし、二つの束に分けてそれぞれを右回転させていき、そして、その二つを左回転により合わせていきます。

基本のより紐のやり方ですが、これは神社の注連縄の形状そのものです。

しめ縄形状

精麻のお飾りとは、そのより紐を様々なシンボリックな形に結ぶことで、麻のもつ祓い清めの効力に結びの力を加えるというような意味合いを持つようです。

いったいこの精麻は、どうやって作られるのだろうとその時からずっと興味を持っておりましたが、なかなか麻を育てる農家さんに出会える機会もなくいつかの機会を待っていました。

今年に入って、サステナブルを発信されているサステラさんのインスタに出会いました。そちらでたまたま栃木の麻農家さんのところで麻引き体験のワークショップを募集されていましたので、こんな機会はないと思い!参加させて頂きました。

実際に麻を育てられている麻農家さんから直接色々な話を聞ける機会を頂けたことはとても貴重な体験となりました。

麻引きお手本

一年で麻は3~4mにも成長するそうです。
その茎を収穫し、蒸して発酵させて柔らかくします。
柔らかくなった麻を皮と芯部に分けていきます。
それを今度は器具を使ってのしていきます。
それを乾かすと、つやつやな精麻の出来上がりです。

のし方 お手本
専用器具
綺麗に滑らかに

実際にやらせてもらいましたが、全くうまくできず、熟練の技が必要なものだなぁと感じました。

体験中
完成品


戦後、GHQにより大麻取締法が制定されてから、花穂と葉の所持が禁止されています。(茎と種は除外されています)
それもあり、私たちの意識の中では、大麻というととても悪であるというイメージが浸透しています。しかし、古来日本のことを知るにつけ、どれだけこの大麻という植物が特別なものとして大切に、そしてしかも生活の中で活用されてきた植物であるのかがわかります。 

神道では、無くてはならないとても貴重な神の依り代でもある精麻。
私たちの気づかないところで、日本人は実際に麻に身近に沢山触れているものです。

神社に参拝する時にいつも振る鈴の上についている縄。
天照大神のお札(神宮大麻)
お守りの中にひっそり入っているもの。

お相撲さんが腰に巻く注連縄。
神主さんの振る幣(紙垂)もかつては精麻だったそうです。

精麻自体が少なくなってきているため、今は幣も紙になっていますが、奥の方には、少しだけ精麻が入っているそうです。

「お払い箱」という私たちが何気なく使っている言葉。
かつては、祓うための精麻が入った箱のことを言っていて、それが言葉の由来となっているようです。

麻の繊維はとても丈夫なので、麻の繊維で作った衣類が日常的に着られていた時代もあり、夏は涼しく、冬暖かい、そして、非常に燃えにくい性質を持っているようです。耐火性もあるなんて驚きでした。

麻の葉模様

赤ちゃんが生まれると大麻のように丈夫に育つように麻の葉模様の産着を着せる。人が亡くなると大麻のオガラ(茎の芯部分)を松明にして魂を送る。
お盆にはご先祖様を迎えるために、ナスやキュウリに足としてオガラを差す。割りばしではなくて、かつては大麻のオガラを差していたんですね!

お盆の象徴 聖霊馬

日本の古い慣習や、信仰に意識を向けてみたときに、大麻という植物がどれだけ日本人の信仰と生活に深くかかわっていたんだろうと、大麻の見方がガラッと変わってきます。

麻農家さん自体、減っていくばかり。以前栃木では何百件もの麻農家さんがいらしたようですが、今は8件ほど。
日本全国でも30件にも満たないようです。

法律のこともあり、麻の畑にはロープが張られ、人が入れないようにしているようです。今回、実際に畑を見ることはできませんでした。

今回見学させていただいた麻農家さんは、ほとんど神社に収める用に麻を栽培しておられるようですが、日本の農家さんだけでは日本全国の神社の必要分がまかないきれないようで、実際には、中国から輸入された大麻が収められているようです。

私たち日本人は巷に出回っている情報だけではなく、本質を見極め、古来日本の伝統や文化を知り、祖先が残してくれた大切な文化や伝統をしっかりと保たなければならないのではないかと今回の麻めぐりの旅で、とても危機感を感じました。

しかも麻はとてもサステナブルな素材であることに世界が注目しはじめています。今後も麻についてまた考察していきたいと思います。

大麻博物館の方から
麻と日本文化との繋がりを沢山教えてもらいました

#精麻 #麻めぐり#日本文化#神道と麻#野州麻紙工房#ヘンプ








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