フランス語の音声変化と綴字法(14世紀〜15世紀)覚え書き
前回はフランス語ができる少し手前の俗ラテン語について書いてみましたが、今回は古フランス語* を飛ばして——というのも、どこかでちゃんと書いてみたいので——中世後期のフランス語** について書いてみたいと思います。
* 11世紀から13世紀を想定
** 16世紀ルネサンスの手前までを想定
発音
① hiatus の減少
②子音に続く語末子音は発音されない(母音に続く場合や休止の前では発音される)
③ e は r の前で a に変わった
merchant --> marchant
per --> par
④口蓋音に続く ie は i が消える
chief --> chef
⑤ z と綴られていた [ ts ] は [ s ] になり s と z に違いはなくなった
⑥ oi は [ oi ] から [ wɛ ] と発音されるように*
[ oi ] --> [ we ] --> [ wɛ ]
* 12世紀の古フランス語では [ oi ] と発音。16世紀には活用語尾と幾つかの語で [ ɛ ] と発音される(alloit, foible)もちろん foi のような語は [ wɛ ] から [ wa ] に変わっていった。
⑦ on が ou になることもあった
convent --> couvent
⑧語源に基づいた余計な文字は読まない
escripvre の p など
綴字法
①ラテン語に基づく綴り
erbe --> herbe ( < herba )
eure --> heure ( < hora )
dit --> dict ( < dictum )
lais ( < laisser ) --> legs ( < lego )
doit --> doigt ( < digitus )
vint --> vingt ( < viginti )
②二語を区別する
uit ( huit ), uit ( vit ) --> huit, uit ( vit )
* この時代 u と v は区別されない。
③子音であることを示す
deuoir --> debuoir ( devoir )
④判読しやすくする
i --> y( j'ay など)
un --> ung
* i が二つ並んだものと u, n は判別しづらい
⑤アナロジー
prent --> prend * prendre にあわせて
grant --> grand * 女性形と同じく
tems --> temps * temporel に関係して
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