Francis“Bolero”について語ります。M9「Bolero」
ある日、いつものようにシンセをいじっていてとても心地いい音色が見つかったので、和音を重ねながら自然と出来た吸い込まれるような循環コードを何度も何度も繰り返し弾きながらひとりで気持ちよくなっていた。それはどことなくフランス映画などで聴こえてくるような独特なリフレイン。
せっかくこんな心地いいループならばこれを元に曲にできないかと、リズムやベースを試行錯誤しながらダビングの繰り返し。次第にカタチになっていくにつれ、少しだけマーチン・デニーのようなエキゾな雰囲気も加味したくなってきた。
ということて重ねてみたピアノやマリンバのフレーズがそんなエキゾ感をブースト。そして最後にNWテイストを加えるべくデュルッティーコラム的なディレイギターでさらに80'sな雰囲気もエッセンスとして交え完成したこの曲。
ある農家の上におおいかぶさっている不吉な楡の木の元で、先妻の息子と淫蕩な後妻とが展開する愛欲絵巻、米の劇作家ユージン・オニールによる1920年代の戯曲「楡の木陰の欲望」。
一応これでも和光大学英米文学科の英米近現代演劇のゼミ生だった私。先生はニール・サイモンなどの研究をされている方でしたが、その先生の下でこのユージン・オニールからテネシー・ウィリアムズ、アーサー・ミラーなどいわゆるアメリカ戯曲の基礎のようなものを学び、最終的にはそもそも映画「パリ・テキサス」が好き過ぎて興味を持ったのがきっかけながらまさにその直系とも言えるサム・シェパード研究で卒論を書き上げ、先生からはこのまま大学に残って勉強しないかとまで言われたりも。
そのオニールによる戯曲のモチーフになる「楡の木」が持つ、家庭の中で絶対的な存在であり、欲望の象徴のように表現される姿を漠然とイメージして歌詞にも取り入れてみました。
今回アルバムリリースにあたりお世話になった方々にお礼も兼ねていち早く完成したフィジカルをお送りした中、「可愛い玩具」で最高なドラムプレイを聴かせてくれた白根賢一くんが、この曲にグッときたとコメントしてくれたのが非常に嬉しかったです。
Francisアルバム“Bolero”は引き続き絶賛発売中です。
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