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お告げの祈り(Angelus Domini)

僕は個人的に「お告げの祈り」が好きだ。というのも、祈りの言葉ひとつひとつの内容を深く黙想するといろいろな気づきを与えられる(それは「保守的」にも「ラディカル」にもどちらにも広がりがあるのだが)。また、鐘が鳴る中この祈りを唱えると「あ、これからミサだな」と心が整えられる。また、ヴァチカンのサン・ピエトロ広場から見上げたバチカン宮殿の小さな窓に現れた、今は亡きヨハネ・パウロ二世教皇様と共にそこにいる多くの人々と祈った祈りでもあるからだ。(毎週日曜日、バチカン宮殿の執務室から教皇は短い説教をしお告げの祈り(復活節中はアレルヤの祈り)を広場に集まった巡礼者と共に祈る)。

鐘だけ鳴らして唱えていない教会は唱えたらいいのに、といつも思う。もちろん教派によって必要がない場合もあるだろうが。少なくともカトリックと一部の聖公会では唱えた方がいいと個人的には思っている。もちろん、形式的にだけではなく、祈り自体の学びと黙想を伴って。

この伝統的な祈りはカトリックと一部の聖公会の人々の中で守られてきた祈りのひとつだ。聖母マリアへの受胎告知と受肉を記念する内容の祈りと聖書の言葉の間に三回の「アヴェ・マリアの祈り(天使祝詞)」をそれぞれ唱え最後に結びの祈願が祈られる。

「受肉」を強調するフランシスカン学派の影響と、フランシスカンの三回唱える「アヴェ・マリアの祈り」の習慣を合体させ、聖ボナヴェントゥーラによって広められたと言われている。

また、鐘(三回×3に引き続いて9回連打)が打ち鳴らされている間に唱える習慣も、教会でミサ中に聖変化の時にイエスがご聖体のうちに留まってくださった瞬間を町中に知らせるために鐘を打ち鳴らすようにとの聖フランシスコの命令と結び付いている。

また、大修道院で唱えられていた某大な量の聖務日課を持ち運べるサイズにして屋外や小さな教会でも唱えられるように編集したのもフランシスカンだが、ラテン語の読み書きが出来ない民衆のためにこのお告げの祈りを唱えるように奨励し習慣となったという。朝6時、昼12時、晩6時の三回唱えられる。

それぞれの節と「アヴェ・マリアの祈り」を先唱者と会衆で交互に唱える。音楽が付けられることもあり。ミサの前に(特にフランシスカンが司牧している教会やアングロ・カトリックの教会で)唱えられたり歌われる。

「主のみ使いのお告げを受けて、マリアは聖霊によって神の御子を宿された」はルカ1章26節以降の受胎告知全体を告げる祈りであり、「わたしは主のはしため、おことばどおりになりますように」はルカ1章38節のみ言葉、「みことばは人となり、わたしたちのうちに住まわれた」はヨハネ1章14節のみ言葉である。最後にわたしたちがキリストの約束にかなうことができるようマリアに神への祈り共にするよう願いが述べられ、最後の祈願のなかでキリストの約束の要約が祈られる。すなわち、受肉を知ったわたしたちが、キリストの受難と十字架に結ばれることよって、復活の栄光にわたしたちも達することができるように、との願いである。

伝統的な所作を守るのなら「みことばは人となり、わたしたちの間に住まわれた」の部分は深く頭を下げるか、跪く。というのも、インクリナツィオ・カピティスと言って受肉に関する祈りや信仰箇条を唱える時は敬意を表すためにそうするのだ。今も、クリスマスのミサの時、使徒信条やニケア・コンスタンチノポリス信条の「おとめマリアからうまれ」の部分で深く頭をさげることになっている。また「受難と十字架によって」の部分で自分自身に十字のしるしをする。ただ、第二バチカン公会議以降、ミサ中に信者が十字のしるしをするところは二箇所だけになったので、グロリアやクレドの最後の部分や赦免の祝福のところ以外にも、こういう信心業の時の十字のしるしやカピティス(お辞儀)やゲネフレクト(跪き)は減ってしまった。典礼固有の行為は大事にした方が僕はよいのではないか、と個人的には思うのだが。

一部のプロテスタントの方々が「偶像崇拝だ」という聖母への崇敬、特に「アヴェ・マリアの祈り(天使祝詞)」に表わされる教会の聖母への崇敬はエキュメニカルの観点から言ってもさほど問題ではないように思う。というのも「アヴェ・マリアの祈り(天使祝詞)」のほとんどの部分は聖書のみ言葉だ。前半部分は、お告げの祈りと同じくルカ1章26節以下の天使のマリアへの挨拶と、ルカ1章41節以下のエリサベトのマリアへ挨拶とで出来ており、後半は「神の母・テオトコス」という宣言は、ニケア公会議を認める教会にとっての共通認識である。そして、「みなさい、あなたの母です」と言われた女性に対し、天にありながらも、道を踏み外してしまうこのわたしたちと共に今「神に祈ってほしい」との願いで締めくくられている。

わたしたちが共にミサを祝う時、天上の教会も共に祝い共に神を賛美しているのだから、聖母マリアに共に祈って欲しいと願うことは僕にとって自然なことだ。

大阪教区の和田幹男神父様がとても素敵な解説を書いて下さっている。興味のある方は是非読んで欲しい。                    年間の聖母賛歌―アンジェルス・ドミニ:お告げの祈り―

蛇足だが、このブログのタイトル「Verbum caro factum est」はこの三番目の祈願「みことばは人となり」からとっている。ちなみに「住まわれた」と訳されているhabitavitは習慣とか普段着といった意味もある。宮殿や神殿にすまわれたのではなく、地をはいずるようにわたしたちの間に住まわれた。この神の御子は、どこか高いところから降ってこられたのではなく、力ないかたちで存在したことを忘れないでいたいと思っているのでここからタイトルをとった。もの言えぬ赤子の姿でうまれ、貧しい労働者としてその人生のほとんどを過ごし、人々から引き離され見えない存在とされた小さくされた人々と共に生き、十字架で苦しみながら死に、葬られ、復活し、ご聖体で共にいてくださるイエスという人のことを。

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Angelus Domini 
御告げの祈りラテン語テキスト V.が先読み R.が会衆

V. Angelus Domini, nuntiavit Mariae:
R. Et concepit de Spiritu Sancto.

 Ave Maria,gratia plena, Dominus tecum, benedicta tu in mulieribus,
 et benedictus fructus ventris tui Jesus.
 Sancta Maria, Mater Dei, ora pro nobis peccatoribus
 nunc et in hora mortis nostrae,Amen

V. Ecce ancilla Domini:
R. Fiat mihi secundum verbum tuum.

 Ave Maria,gratia plena, Dominus tecum, benedicta tu in mulieribus,
 et benedictus fructus ventris tui Jesus.
 Sancta Maria, Mater Dei, ora pro nobis peccatoribus
 nunc et in hora mortis nostrae,Amen


V. Et Verbum caro factum est.
R. Et habitavit in nobis.

 Ave Maria,gratia plena, Dominus tecum, benedicta tu in mulieribus,
 et benedictus fructus ventris tui Jesus.
 Sancta Maria, Mater Dei, ora pro nobis peccatoribus
 nunc et in hora mortis nostrae,Amen


V. Ora pro nobis, sancta Dei Genetrix.
R. Ut digni efficiamur promissionibus Christi.

Oremus: Gratiam tuam, quaesumus, Domine, mentibus nostris infunde; ut qui, Angelo nuntiante, Christi Filii tui incarnationem cognovimus, per passionem eius et crucem, ad resurrectionis gloriam perducamur. Per eundem Christum Dominum nostrum.
R. Amen.


カトリック中央協議会から発行されている翻訳

お告げの祈り(朝昼晩跪いて唱える、主日前晩から立って唱える)

主のみ使いのお告げを受けて、
マリアは聖霊によって神の御子を宿された。

 アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、
 主はあなたとともにおられます。
 あなたは女のうちで祝福され、
 ご胎内の御子イエスも祝福されています。
 神の母聖マリア、
 わたしたち罪びとのために、
 今も、死を迎える時も、お祈りください。
 アーメン。

わたしは主のはしため、
おことばどおりになりますように。

 アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、
 主はあなたとともにおられます。
 あなたは女のうちで祝福され、
 ご胎内の御子イエスも祝福されています。
 神の母聖マリア、
 わたしたち罪びとのために、
 今も、死を迎える時も、お祈りください。
 アーメン。

みことばは人となり、
わたしたちのうちに住まわれた。

 アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、
 主はあなたとともにおられます。
 あなたは女のうちで祝福され、
 ご胎内の御子イエスも祝福されています。
 神の母聖マリア、
 わたしたち罪びとのために、
 今も、死を迎える時も、お祈りください。
 アーメン。

神の母聖マリア、わたしたちのために祈ってください。
キリストの約束にかなうものとなりますように。

祈願
神よ、み使いのお告げによって、御子が人となられたことを
知ったわたしたちが、キリストの受難と十字架をとおして、
復活の栄光に達することができるよう、恵みを注いでください。
わたしたちの主イエス・キリストによって。 アーメン。


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