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20241026の夢/順逆ロード

おとなになったぼくは職場へ向かうためいつもの道を自転車をこいでいる。道幅が狭いわりに交通量が多く、自転車も歩行者も多い。多少危ないまねでもしないと……「なにちんたら走ってんだボケ〜!のけ〜!!ぇ〜ぇ〜ぇ〜」と後ろから爆走してきたチャリがぼくを追い越し、ドップラー効果の尾を曳きながら去ってゆく。(…んだよ!あぶねぇだろうが!)だが、あれくらい爆走しなきゃ遅刻しちまうのも道理だ(ぜ……!)と思い、ぼくも爆走を試みる(もちろん安全には最大限気をつけて)。

いつも同じ時間、同じ場所ですれ違うひとたちの顔はおぼえてる。マスク越しでも、背格好や髪型、服装などは記憶にのこる。落ち葉を掃いてる地元のひと。停留所でバスを待ってるひとびと。ぼくとおなじく自転車で通勤・通学するひとびとや、歩行者たち(スマホ見ながら顔をあげずに歩いてる歩行者はみんな〇ね)。

爆走を試みてからというもの、いつもとおなじ通勤路のはずなのに、日に日に見知らぬ道路のように感じられていって、ふとしたときあまり使わない脇道に入ったりすると、(え?  あれ?  ここ、こんなんだったっけ?)ってくらい雰囲気が変わってるので、ぼくはおどろく。その影響はぼく自身にも起きていて、「会社に向かうためにスーツを着てきてた」はずなのに、いつのまにか「高校に向かうために学ランを着てきて」いる。

(は?  これ、時間、遡ってんじゃん?!)と思ってると、いつもすれ違う人たちはぼくとは反対に時間がすすんでいる。手を繋いで登校していた姉弟はもう手を繋がなくなっているし、高校生だった女の子は職場へ向かう格好になっているし、清掃してた年配の方は姿が見えない。学ランのぼくはとうぜん職場ではなく、むかしの通学路をたどって学校に向かうべきなんだろうか。

信号待ちしてるとまたもや後方からおたけびをあげながら迫る爆走チャリおねえさん。こんどは遅れないように(つまり、ドップラー効果を発生させないように)後を着いてってみようと思い、ペダルに力を入れる。ぼくのまえを爆走でいく派手なジャージ姿のおねえさんはあいかわらず「のけのけのけのけ〜〜〜おら~~~!!!!」と叫びながら爆走してゆくので、後をつけるぼくは向かってくるひとや自転車をよける手間が省けるが、なんだかちょっと恥ずかしい。そういやこのおねえさんは見た目、変わんないな。

ケンタッキーの前の、なかなか青にならない押しボタン式の信号から脇道に入る。そこはもうアスファルトじゃなくなってて、戦後を舞台にしたフィクションで見るみたいな雰囲気の街並みがある。小さな劇場には宣伝の張り紙がしてあり、「〇〇〇〇の初舞台!!」と書かれてある(〇〇〇〇はいまでは大御所の俳優だ)。

このまま爆走通勤(通学?)をつづけていると、ぼくはどんどん時間を遡って、さいごには生まれるまえにまで戻ってしまうんじゃないかと心配したりしたけど、帰りも爆走することで相殺されてるらしく、「ただいま」って顔見せても家族からはなにも驚かれたりしていない。

でも、仕事にいってるはずの時間、ぼくは学校にいっているので、そのあいだのことはどうなってんのかよくわからなかったが、まぁいいかって深く考えるのはよした。

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玻名城ふらん(hanashiro fran)
ちゅーる代