見出し画像

さいきんのへびろて3選【ボカロ】㉗

kiichi | 夢中の夢中 (feat.初音ミク)
ニコニコ動画 2012/7/3 (クロスフェード)
YouTube 2020/4/4

ゆらぐ声と音に意識をたゆたわせていると1:10からのリズムにやられる。
それでもゆらめきはやまず、流れつづけて、ぼくをどこか遠いところへと連れ去ってしまいそうだ。(夜雨に溶けるホタルイカの航跡を追うようにして?)

なぜかこどものころのぼくは、「ここではないどこか」へ行ってしまいたいという欲をつねづねもっていて、いつもの通学路の建物と建物のすきまや見慣れたまちなみの裏側を覗いては、隠された異世界への扉がないものか、ほんきで探していた。
そんなものはもちろん見つかりっこなく、ぼくは順当におとなになり、いまだ「ここ」にいる。

もしほんとうにそんな通路があったとして、こわがりで心配性だったぼくがそこを辿ってゆけるとは思えないけれど、おそらくこどものぼくは、ただ単に「いま」「ここ」ではないどこかへ行きたかったのだ。だれも知らないぼくだけの場所というやつをもっていたかったのだ。

「いま」「ここ」からの逃避や、ひみつの場所にひきこもることは、かえっておとなになったいまのほうが簡単にできる気がする。
だから、ぼくは妄想する。あのころの幼い「ぼく」のまぼろしを連れ去って、夢のなかへと隠してしまい、もう二度とかえしてあげないって。

「朽ちゆく道筋 勇気を持ってないから 夢中をただ辿り続ける」


Gyr0 | 通行可能はあなただけ / ナースロボ_タイプT
ニコニコ動画 2024/12/3
YouTube 2024/12/3

「私」に通じる道があるとして、その通行を「私」が制限できるとしたら、「通行可能はあなただけ」だとぼくも言いたい。

いま現に通行のある「あなた」へのメッセージだとすれば、それは「あなた」への思いの告白であると同時に、「あなた以外」への牽制ともとれる。

もしすでに「あなた」の通行が途絶えてしまっているのなら、ふたたび「私」への道をたどってきてほしいという切なるねがいだ。

だって、「私」は「あなた」が通行してくれる(通行してくれた)ことによって生かされているのだから。

「あなたが通過した影が
    あなたと通過したいくつもの光が
    生きてる私の中心部を

    通行する」


呆 Akire | 偏光: / 呆feat.初音ミク
ニコニコ動画 2025/2/1
YouTube 2025/2/1

原曲(2020/8/31)の再構築。
原曲もよかったけど、洗練された音の感じと、ときどき打たれる鐘の音がむねに響く。
すべての音とミクのやわらかな声がここちよい。

「偏光」は、ばらばらに拡散する光ではなく、レーザーみたいに時間的・空間的に規則的な振動をしながら進行する光のこと。
だからこれは、ある特定の対象(だけ)に向けられた、伝えたい思いの込められた「光」なんだろう。

無数の解をもつ「キミ」に伝える。
疎通の数だけ大人へと変わってゆく「キミ」を迎える。
はじまりのメスを入れるから、お目醒めのキスをするから、だから全部忘れて、っていう。

「僕」と「キミ」はまだ出逢っていない。
けれど、てんで理解不可能なような愛の仕組を幻想じゃないと言い切ってしまえば、逢った「僕」と「キミ」の鼓動を聴けば、いつかおなじ言葉で語り合える気がする、という。
それが「新しい進化論」だというのなら、ふたりはそういう存在のしかたでなければ結びつくことができないふたりだ。

「暖かいキミの手
    機関は無くとも何か感じとっている」




いいなと思ったら応援しよう!

玻名城ふらん(hanashiro fran)
ちゅーる代