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20240322の夢/Tと気を練る人びと

近所の道を友人のTと歩いていると思ったのにいつの間にか知らない商店街を歩いている。その商店街の一角に古びた民宿風の建物があって、そこがTの家だった。
玄関の引き戸を開けるとたたきがあり、框の奥に廊下が伸びている。Tとぼくは靴を脱いで下足箱に入れ、框を上がってすぐの階段をのぼる。Tの部屋はかんたんなキッチンが備え付けられていたり、冷蔵庫が置いてあったりして、もとは従業員の休憩室につかわれていた部屋かもしれない。

敷きっぱなしになっていたおふとんでぼくがごろごろしているとTがふざけて背中に覆いかぶさってくる。ぼくはからだを敷きぶとんに押し付けるようにしてガードを固めるが、Tはぼくの肩の横から手を差し込んできて鎖骨の下あたりを触ってくる。それ以上下にきちゃったらどうしよう、ぼくの胸は他の男の子とはちがうのだ……と焦っているうちにTが背中からいなくなる。

ぼくはテーブルにナイススティックが置いてあるのをみつけて、これたべていい?とたずねる。いいよ、とT。同じフロアのどこかからにぎやかな声が聞こえている。宿泊客の宴会だろうか、カラオケもしている。ふと部屋のテレビ画面をみると、そこにはモニターされた客室の様子が映し出されていた。

「ていうか、こんな環境で勉強なんてできんやろ?」って聞いたら、「だからギリ家帰らんように粘ってる。おまえんちに住まわせてくれるならいつでもいくけど?」っていわれて、「うーん、、ごにょごにょ」とごまかすぼく。

ふたたびおふとんでごろごろしてると隣室から、〇〇のユタが死んだらしい、強いまじむんを道連れにしたらしい、練り上げた「気」の半分を消耗したけど実はこっそり練っていた「気」をもっとすごい人(統括本部長)に送っていたらしい、統括本部長がそれをうまく分配してくれてるおかげで今カラオケできてる、とかなんとか――    そう、ぼくらの世界は「気」をエネルギーとして動いている。「気」はそれを「練る」ことを生業とする人たちによって練られ、分配会社によって配られる。むかしは生まれつきそういう力をもってる人が代々受け継いでやってた仕事だけど、いまは専門学校とかもあって、進路選択のひとつになっている。

ぼくは部屋と廊下を仕切る薄い板壁の下側に空いた隙間から、くちばしが黄色い白い鳥のぬいぐるみを外に突き出して様子をさぐろうとするけど、見つかったらまずいかと思いすぐ引っこめる。
「〇〇のユタとか統括本部長とかって 誰なん?」とTに聞いたら、「めっちゃすごい人たち」って言ってタブレットを見せてくる。そこには「気を練る人々」の紹介が書いてあって、誰がいくら練り上げたとか、誰がどこにどれだけ分配しているとかの数字も並んでいてすごい。「おれがつくった資料」とさりげなく言い添えるT。おまえすげぇな。

さっき話に出ていた〇〇のユタのことも書いてあったが、統括本部長自身が練っている「気」はさらにその何倍もあり、とんでもない人なんだとわかる。統括本部長はユタが亡くなることも、その直前にいくらかの「気」を残すことも事前に察していて準備しておいたからいま何ともないんだよ、とTが教えてくれる。
タブレットの紹介にはさらに高出力の人たちも掲載されていて、この世界やべー。

キッチンで冷凍うどんをゆがきだすT。オーバーアクションぎみな湯切りをして、それが当たり前であるかのようにひとりで食べはじめる。え、ぼくの分は?と内心思ってるがそれは甘え。さっきナイススティックもらったし。
うどんを食べ終えたTが「回復できた」とかなんとか言ってるが、ぼくはその回復を惜しいと思っている(ずっと弱っててほしいと思ってた?)。

「出かけるから」とT。
「じゃあ帰るわ」とぼく。
階段を降りて、靴をはこうとするがすぐに見つからず、あったと思ったらめっちゃ小さくて、よく見ると似たようなデザインでサイズの異なる靴がたくさんある。やっと自分の靴をみつけてはきながら、めったにないデザインだと思って気に入ってたのにな、、と少し残念な気持ちになる。

外に出る。まだ明るいからよく分からないけど、たしかに誰かが練った「気」が途絶えることなく供給されているから街は平穏なんだ、あの人たちのおかげだと知っているのはTと自分くらいじゃないのかと思うと何となくしんみりする。

Tと別れて帰宅。トイレに入ってると姉から着信。ビデオ通話で取りかけて慌てて音声通話に切り替える。え、なんて?ライブ会場から電話してるって?
「たまたま誘ってもらっちゃってさぁ、アンタも行きたかった?ごめんね、ひとりで行っちゃった!ちょーよかったよ!あっ、あと1曲くらいで終わるから!」ってこっちが何も言わないのに姉はひとりでまくしたて、通話の切れ際に聞こえてきたのは話に出たライブの演者とはぜんぜん別の、往年の大物シンガーのはずで、は?と思う。
てかそんなタイミングで電話してこないだろフツー、と呆れるぼく。

姉が帰ってくるとまたうるさくなるから、家の中が平穏なうちにやれることやっとくかと思う。


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玻名城ふらん(hanashiro fran)
ちゅーる代