20240728の夢/優先順位
後輩たちとぼく、四人でどこかの地方都市(名古屋?)を歩いている。高架道路ごしに高層ビル群がみえているが、ぼくらが歩いている緑道は人どおりも少なくて穏やかだ。
公園でかなり大勢のおとなたちがお祭りの練習をしている。横一列になった人々のうえに、肩車をしてまた列を重ね、それが何段にもなっていくらしい。たいへん危なっかしく、練習している人たちの様子も険しいので、ぼくたちは巻き添えをくわないようにさっさと通り過ぎる。
緑道を抜け表通りに出る。幅の広い車道沿いに駅へ向かって歩く。町は新しいビルもたくさん建っているが、油でギトギトになったからあげ専門店とか、カラフルなテントを軒先にはりだした謎の店舗とか、「昭和」っぽい雰囲気を残す建造物もちょいちょい残っていて、ぼくらは自分が生きたこともない時代へのノスタルジーを感じている。
あんまり暑いので、駅と接続しているビルの中に避難する。コインロッカーに荷物を預け、東京までの切符を買う。後輩が「もうすぐ出るやつありますよ」というのでぼくらは改札をくぐりホームへ向かう。
「先輩、荷物は?」と聞かれ、そういえば預けっぱなしだなと思うが、その場の進行を優先させようとするぼくは、「ああだいじょうぶ、こんどひとりで取りに来るから」と言うものの、そう簡単に来れる場所じゃないはずで、内心(完全に優先順位を間違えているな)と後悔している。
乗り込んだ電車はそれほど混んでなかったけれど、座らずに車両を移動していると、畳表のようなものが載せてある座席が目に入る。(納涼か?)と思いながら腰かけようとするが、座面が高すぎてうまくおしりをのせることができず、小さくジャンプしては滑り落ちる、を繰り返していて恥ずかしい。
後輩のうちのひとりが、「じぶんちょっと次の駅で降りるす」というので、荷物が気になっていたぼくもいっしょに降りることにする。その「東新町」という駅からもとの駅まではそう遠くなさそうだし、日も暮れて涼しくなってきたので、ぼくらは歩いて向かうことにする。
道がよくわからなくなって、Googleマップを見ていると、航空写真にさっきの人壁が写ってるのを見つけほっとする。その公園を基準にマップを確認してみると、ぼくが荷物を預けたのは、「東○○宗✕✕派総本山ビル」という宗教施設らしかった。言われてみれば道理で、黒い大理石を基調にした冷ややかなその建物には厳かな雰囲気があったよなと、妙に納得する。荷物を預けたコインロッカーが、まるで納骨堂のように思えてきた。ぼくがこの世に遺してゆくものを納めておく室―― (そんなものは、いらないな)と心のなかで呟く。
後輩は、さっき見かけた「からあげ専門店」がどうしても気になっていて、食べて帰るというのでぼくも付き合うことにする。お店近くの交差点まできて、大行列が目に入る。「これ、まさかからあげに並んでる?」って心配するぼくを後目に、後輩は「そんなわけないでしょ」と言って列を無視してずんずん進んでいく。後輩の言うとおり、行列はお店の前を通り過ぎてて、ずっと先の方まで続いているらしい。からあげ専門店の軒先には「からあげ」と墨書された赤ちょうちんが灯り、入口の戸が開け放たれている。
あとで荷物を取り忘れないよう、もういちど自分に言い聞かせて、ぼくらはその年季の入った「からあげ専門店」に入っていった。