20241111の夢/ねこ会議(Unstable Friendship)
アパートに帰ってもこいびと(?)はいなくて、ぼくはなんとなく時間をもてあましている。こいびと(?)が棲みつくようになるまえはそんなことってなかったはずなのに、どうやって時間を過ごしていたのか、思い出せなくなってるじぶんに少し驚いている。
ぼくの部屋にベランダはないので、大きめの窓をあけて、床からすこし高くなったへりのところに腰かけタバコを吸う。
煙をゆっくり吐きながら、はやく帰りたいと逸ってたのがバカみたいだな、と自嘲する。
斜面をえぐったところに建つアパートの三階の窓から下を見おろせば、一つ下の二階の高さに舗道がみえる。
日はもう落ちて薄暗い。
昼と夜のあいだ、もののかたちがはっきりせず、あらゆるものの境界があいまいになる時間帯……
舗道のどこかで何人かの話す声が聞こえる。
別に聞く気はないが聞こえるので聞いている。
「もうこれくらいでよくね? これ以上はヤバいだろ」
「うん、あんまり深入りしすぎるのもなー」
「な、感づかれて台無しになるのはごめんだぜ」
なんか不穏だなぁと思って聞いてると、「んに」と聞きおぼえのある声がする。
「もうちょっと待てない?」
「は?なんだよおまえ ひよってんの?」
「んにゃあ……そういうわけじゃないけど……」
「だったらいいだろ へんなこと言ってんじゃねーよ」
三、四人の人かげが解散してくのがみえる。暗くてよくわからないけど、みんな背格好は似ていて、(なんだよ、友だちいるんじゃん)って思い、つづけて、これは嫉妬だと気づいてへんな気持ちになる。
いつもはあえて見ないようにしている考えが浮かんできて、おさえられない。
(あいつのこと、なんにもしらないよな……)
夜が少し濃くなったころ、ぼくは部屋を出て、さっきの人かげがあったあたりを歩く。
視界の向こう、街灯に照らされた片隅に、ねこが何匹か寝そべっているのが見える。
だれかがしゃがんで、一匹のねこを膝にのせ、なでもふっている。
ぼくもねこと遊びたいが、先客がいるなら話は別。離れたところでタバコに火をつけ、ねこには気がない人のふりをする。
一本も吸い終わらないうちに、寝そべっていたねこがぼくの方にとことこ寄ってくる。一匹目が動くと、ほかのねこたちもあとにつづき、膝に乗せられていたねこも飛び降りてぼくの方にかけよってくる。
ぼくは(なんにもないのに……)と思いながら、うれしくなってる。
先客はいつのまにかいなくなっていた。
三、四匹のねこをかわるがわるなでながら、(さっきの不穏な話し声は、おまえたちか?)と空想してみる。
だとしたら、今日はまだ帰ってこないこいびと(?)も、このなかにいたりして?
「おーい、〇〇~」
いるんだったら返事しろよ、って、ぼくはほんとの名前も知らないこいびと(?)の名を呼んでみる。
返事、「するわけないか……」とことばをもらしたところで、すぐ後ろから「なにやってんの?」と声。一瞬、ビクッとなって、恥ずかしい。
「ふらん、ただいま」
「ん、おかえり」
ぼくはこいびと(?)をなでながら、夕方に聞こえた話し声について聞いてみようとは思わない。
こいびと(?)はなでられて満足そうに「えへへ」とニヤけてて、それがぼくをしあわせにさせる。
ぼくは、このままがいつまでもつづくといいな、と思っている。
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