東京都知事選挙2024から見える日本社会の劣化
東京都知事選挙2024が7月7日に終わった。結果はご存じの通り、現職の小池百合子氏が約292万票を獲得して3選を果たした。私は北海道民ながら、蓮舫氏を応援していたが、まさかの3位、約128万票にとどまったのはとても残念だった。2位の石丸伸二氏の約166万評については、後で述べたい。
この選挙は、まさに日本の劣化した政治世界をまざまざと見せつけられるものであった。3つの視点から、簡単に述べたい。
1.選挙ビジネスの暗躍
本当は、こんな写真、私の記事に貼りたくはない。。
でも、現実を直視しなければ、前に進むことはできないので、あえて貼りつけることにする。
そもそも知事になる気がない連中が、300万円の供託金没収のリスクでさえ、「広告料」と考えて、選挙ポスター掲示板をジャックして、猥褻画像や風俗の営業、ヘイトなど、選挙制度そのものを揺るがすやりたい放題のことをやっていた。さらには、「政見放送」が、バカさ加減の露出大会になっていたような感がある。
法律の抜け穴を使った悪質なヘイト等を取り締まることができるよう、選挙ポスター掲示板に関する法改正が求められる。
そもそも、今の時代に、選挙ポスター掲示板や政権放送は必要なのだろうか。今回の騒動は、現行の選挙制度の在り方そのものを問うものとなった。
2.マスコミの堕落
「政治的中立・公平」と言いつつ、小池都政8年の総括をしようとしなかった。民放もNHKも、7月7日に都知事選挙があるのをできる限り知らしめない、という何らかの圧力を受けて忖度し、イギリスの選挙の話題を出す始末。7月7日の選挙開票が始まってから、「実は~でした・・・」とアリバイ作り的に報じるのは、詐欺に等しい。開票が始まってからの選挙特番など、実は必要がない。選挙の前に、きちんと特番をすべきである。
マスコミこそ最大の裏切り者であった!
(余談だが、私は2020年から、一般の新聞の購読と、TVのニュース番組の視聴をやめた。しんぶん赤旗日曜版と日刊ゲンダイは別だが。)
3.イシマリストの熱狂~社会科教育の失敗とネット時代の選挙
今回、最も衝撃を与えたのは、2024年6月まで、広島県の安芸高田市長だった、石丸伸二氏が、突然都知事に転身しようとして出て来て、あの蓮舫氏を上回る得票、約166万評を獲得したことだろう。石丸氏の支持者を、勝手に「イシマリスト」と名付けてみた。
投票率が上がったこと、若い世代も投票に赴いたことは良いことだが、そういう若い世代を救うような政策を打ち出していた蓮舫氏ではなく、新自由主義の化身でただのポピュリスト、空辣な石丸氏に票が流れたというのは、日本の社会科教育は完全に失敗している、と思わされた。
「社会はみんなで助けあうもの・・・」
そういった価値観が、古いとされ、社会的弱者は切り捨てられ(いつ自分がその立場になるのかもしれないのに・・・)、強い者が栄える。
すべてはカネ次第。今だけ、金だけ、自分だけ・・・
芥川龍之介の短編『蜘蛛の糸』に出てくる「カンダタ」のような人が社会の大多数になってしまったのだろうか。それはまさにこの世を「地獄」にしている。
どうして、「俺も苦しんでいるから、お前も苦しめ」という発想になるのか?日本人(今回で言えば、東京都民)はなぜこんなにマゾ思考になってしまったのか。みんなで幸せになろう、共に素晴らしい世界にしよう、という発想がないのは狂気だ。
石丸氏の躍進とその分析については、このnote内で無料の良記事があったので、紹介したい。
最後に、今回の選挙での希望は、蓮舫氏を応援しに一人で立ったたくさんの人々。「ひとり街宣」と呼ばれる。
政治の話は、神学論争のような遠い世界の事ではない。簡単に言えば、税金の使われ方である。一部の金持ちにばかりメリットがある政治を望むのか、それとも、できるだけ多くの人にメリットが行き届く政治を望むのか。
今回、蓮舫氏が負けてしまったのは仕方ないが、決して無意味ではなかった。また、ネット時代の選挙戦というのも改めて考えるべき時代である。
そういう意味では、まだまだ希望を見出せた、という収獲があったと言えよう。