軽作業募集中
ネットの求人サイトでよく見る文言だ。
楽な仕事だったらジムに行く代わりに行ってみようかと思って応募すれば地獄を見る。
結論から先に書くが、この世に「軽作業」という楽な作業は存在しない。
私はまだ売れる前にいろいろアルバイトを経験した。その中で誰でも雇ってもらえてすぐに金になる仕事といえば、工場か倉庫での仕事だ。
ヤマト運輸と佐川急便の仕分けには何度か行ったことがある。品川駅港南口から送迎バス、通称護送車に乗せられて湾岸地区の倉庫街に行くと巨大な倉庫がある。ヤマト運輸と佐川急便は道を挟んで並んでいる。
最初に行ったのは佐川急便。昼の仕事を終え、夜の7時から11時までの契約だったと思う。派遣会社別のTシャツと軍手を買わされて、仕事の説明もなく持ち場につかせる。仕事内容は10tトラックから荷物を降ろす。ただそれだけ。この仕事に男も女もない。一つのトラックに10人くらいがいたと思う。ひたすら荷物を降ろす。それを佐川の社員が監視していて常に怒鳴り声が響いていた。怒鳴られるのは派遣のアルバイトだけではない。社員のドライバーも、下請けのドライバーも常に怒鳴られていた。
その仕事は1日で辞めた。
次にヤマト運輸の新東京ベースという拠点基地に行った。ここはまだマシだった。朝礼があり、体操をして、仕事の指示をしてくれる。安全靴とヘルメットも貸与してくれる。しかし作業は過酷だった。ベルトコンベアに荷物を載せる「流し」、それぞれの行き先別に仕分けする「シューター」というのが代表的な作業だった。
ここに「雑貨」というポジションがある。きっとサンリオなどの可愛い雑貨を扱う部門かと思ったら、なんとスキー板のような長い物や重量物を扱っていた。ここに回されていたら、間違いなく死んでいた。
ヤマト運輸は佐川急便と違って遠隔監視だった。そして作業スピードを上げるように、仕分けを間違わないように放送で怒鳴っていた。ベルトコンベアの速さも遠隔操縦できるようで、一気にスピードが速くなり、目が回るくらいに忙しくなった。まるでチャップリンの『モダン・タイムス』の世界だった。
このように、軽作業募集中ということで応募しても、決して軽作業ではないことを経験を踏まえて書いた。仕事のキツさは給料の支払いサイトに反比例している。つまり、日払い、週払いはいわば機械の代わり。自動化出来る作業を機械を入れるよりも人を雇ったほうが安上がりということで捨て駒のような扱いになる。これが月払いになると、少しは仕事は楽になるが、正社員よりもきつい。一番ラクなのは指示だけを出している正社員だ。ただし、これは作業系の仕事のことだ。他の仕事では事情も違うだろう。
結局の所、弱者は常に搾取される運命にある。それが嫌なら上に行けということになるが、学歴や技術、経験やコネなどがないと日本社会では上に行けない。
この話は随分前のことを思い出しながら書いた。その後、何度か佐川急便に別の派遣会社から行ったが、かなり民主的になっていた。ヤマト運輸のことはわからない。その他、大日本印刷、山崎製パン、サントリーで地獄を見た話はまた別の機会に。
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