動物園への遠足は涙の味がした

ある年の土曜日、海が見たくて動物園行の路面電車に乗った。
天気は晴れ。しかしこの街の、特に夏の気候は変わりやすい。
動物園に着くころには鉛色の空に変わった。
海から吹いてくるのは冷たい風。
ビーチまで歩いた。
細かい砂が靴に入る。
太平洋は荒れていた。この遠く向こうに日本がある。
この街でひとり暮らしを始めたものの英語はできない、友だちもできないということでつらい気持ちだった。
すぐに路面電車に乗り、街へ戻った。
まずはピザを食べよう。ウールワースというショッピングセンターでスライスのペパロニピザを買い、コーヒースタンドで75セントのコーヒーを買い、砂糖とコーヒーフレッシュをたくさん入れて、そのあたりに座って食べて飲んだ。
心は少しだけ晴れたが空はまだ曇ったまま。人生の中でいちばん切ない土曜日は涙の味がした。