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【地方紹介18】ピカルディー地方

<地方データ>
■【francerでの地方名呼称】:ピカルディー地方
■【旧地方圏区分/地方庁所在地】:
ピカルディー地方(Picardie)/アミアン(Amiens)
■【現地方圏区分/地方庁所在地】:
オー・ドゥ・フランス地方(Hauts-de-France)/リール(Lille)
■【旧地方圏区分における所属県と県庁所在地】
●エーヌ県(Aisne /02)県庁所在地:ラン(Laon)
●オワーズ県(Oise/60)県庁所在地:ボーヴェ(Beauvais)
●ソンム県(Somme /80)県庁所在地:アミアン(Amiens)
 
 ★地方概要★
 
イル・ド・フランス地方の北側に位置するピカルディー地方。パリからも比較的近くに位置するため、南部のオワーズ県にはパリから訪ねやすい観光地も多いです。起伏のある平原に、いくつもの川が豊かな水郷地帯を作り上げています。内陸側は小麦や酪農などが盛んです。ゴシック建築が発展した地でもあり、いくつもの歴史的建造物が立ち並びます。世界遺産の大聖堂や優美なルネッサンス古城がありますが、しかし、日本人にとっては、残念ながら馴染みの薄い地方ではあります。しかし、パリからもほど近いこの地方に何もないということはありません。特にパリと関わりある貴族のお屋敷やフランス王家にゆかりの町なども少なくないのです。限りある時間の中では、なかなかピカルディー地方を巡ろうとはならないかもしれませんが、時間があれば、足を延ばして訪ねてみてはいかがでしょうか。期待値を上回る感動にであえるかもしれません。

ピカルディー地方は、フランク王国のメロヴィング朝が興って以来、発展していきました。中世にはパリで生まれたゴシック建築が早々に伝わり、アミアン、ラン、ボーヴェなどで素晴らしい大聖堂が建設され、今に残ります。ルネッサンス期には、中世から続く王宮や貴族の宮殿が改装され、優美なルネッサンス洋式建築として生まれ変わります。シャンティイ城やコンピエーニュの宮殿などでは、今でもその美しい佇まいをご覧いただけます。2度の世界大戦では、国境とパリの間にあるピカルディー地方は多くの戦禍を被りますが、水と緑に彩られたピカルディーの景色は変わらず、戦争で破壊された町や大聖堂も、見事に復元されています。

城も庭園も、非常に優美な雰囲気を残すシャンティイ

★町や村★
 
世界遺産の大聖堂となったソンム川沿いに広がるアミアンが中心都市です。このソンム川の河口には、サン・ヴァルリ・シュル・ソンムという町があり、ソンム湾を形成していますが、世界で最も美しい湾の1つとも言われています。南部には未完成の大聖堂で知られるボーヴェがあり、その西には、近年バラの村として注目された美しい村ジェルブロワがあります。またオワーズ川沿いには、美しい建築物が多く点在し、ルネッサンス様式の古城を有するシャンティイ、さらにはサンリス、コンピエーニュ、ピエールフォンなどにも、古城や宮殿が残り、その美しさは、知られていないのが不思議なほど。東部はシャンパーニュ地方と接しますが、手前に位置するのが9~10世紀のカロリング王朝時代に、フランス王国の首都であったともいう丘上の城塞都市ランです。12世紀初頭に建てられた美しい初期ゴシックの大聖堂でも知られています。

大聖堂を中心に町が広がるアミアン

ピカルディー地方の中心地、アミアンは。2度の世界大戦で大きな被害を受けましたが、見事に町は復興し、コンクリートの父と呼ばれるオーギュスト・ペレによって作られた近代的な駅やペレ塔は印象的な建物です。歩行者天国地区が多く、ノワイヨン通りを進んでいくとアミアンのランドマーク、大聖堂が見えてきます。広場から見上げるアミアンの大聖堂は圧巻の一言。見事な彫刻が施されたファサードに始まり、初代司教フィルマンと洗礼者聖ヨハネの障害を表す内陣障壁、精密な彫刻が施された内陣の聖職者席と、その芸術性は見事の一言。早々と世界遺産に登録されたのも納得の大聖堂です。大聖堂の北東には、サン・ルー地区と呼ばれるソンム川が流れる地区があり、運河沿いは花々で彩られ、美しい街並みが広がります。
 
パリから列車で40分ほどの位置にあるシャンティイは、ルネッサンス様式の優美なシャンティイ城で知られます。その佇まいは非常に素晴らしくロワール古城にも匹敵する美しさがあります。城の内部は現在、コンデ美術館となっていて、素晴らしいコレクションが収蔵されています。ラファエロの「三美神」など門外不出の3部作と呼ばれる作品を筆頭に著名な画家の作品が多数ご覧いただけます。中でも、ランブール兄弟による中世細密画の傑作と呼ばれる「ベリー公のいとも豪華なる時祷書(見学できるのはレプリカ)」で知られています。また、シャンティイは馬の町としても知られ、大厩舎や馬の博物館、競馬場などがあります。馬の博物館では、馬術ショーなどを見学することができます。ロンシャンの競馬場が改装していた際には、世界最高峰の競馬レース凱旋門賞がこのシャンティイ競馬場で行われたこともありました。

邸宅美術館的な雰囲気のコンデ美術館

ピカルディー地方東部、エーヌ県の中心都市であるランは、すぐ隣にあるシャンパーニュ地方の雰囲気を残す町です。細長い丘の上に築かれた丘上の要塞都市の雰囲気をよく残しています。中世のカロリング王朝期には、一時フランス王国の首都にもなったという町には、その後のゴシック教会の礎となったとも言われる12世紀初頭から作られたノートル・ダム大聖堂があります。二つの塔が聳え一見すると、典型的なゴシック様式のように見えますが、正面の扉口や塔、ファサードなどに使われているアーチは尖塔ではなく半円形アーチで、装飾も比較的簡素。まさにロマネスクからゴシックへの転換を感じられる大聖堂です。駅と丘上の旧市街へはPOMAと呼ばれる列車で結ばれており、少し離れてはいるものの、楽にアクセスすることができます。

大聖堂が印象的なランの街

★名産品と郷土料理★
 
ピカルディー地方が、あまり知られていない地方ですので、知名度こそありませんが、ノルマンディー地方同様、酪農も盛んですので、チーズ、バターを使った料理などが多いのが特徴です。
 
郷土料理としては、フィセル・ピカルド(Ficele Picarde) が知られています。ハムやキノコ、チーズをクレープ生地で棒状に巻き、ベシャメルソースとチーズを上にかけてオーブンで焼き上げる料理です。 なかなか他では見られない料理ですが、日本人の口にも合う料理。ピカルディー風クレープグラタンともいえ、ピカルディーの森の恵みを包み込んだような料理です。

フィセル・ピカルド

またアミアンのパテは、17世紀には知られていたフランス料理でも歴史のある鴨のパテ。現在では、フォワグラを中に入れることもあり、鴨肉をメインに、豚の背油、タマネギやエシャロット、香草類を加えて炒め、パテ・アン・クルート(パイ生地で包み込んだパテ)として、焼き上げます。 一説には1643年に投獄されていたアントワーヌ・デガンドという人物が、ルイ13世とリシュリュー枢機卿を喜ばせる料理を作れたら、釈放するという約束があり、このパテで両名を満足させたといわれています。

手の込んだフランス料理のアミアンのパテ(パテ・アン・クルート)

デザートやスイーツでは、まずは、クレーム・シャンティイ(Creme Chantilly)。シャンティイという名前はついていますが、要するに、ホイップ・クリームのことです。 ルイ14世の時代、シャンティイ城の宮廷料理人だったヴァテールがこのホイップ・クリームを発明し、以後、「クレーム・シャンティイ」と呼ばれるようになりました。なお、シャンティイ城内にはレストランがあり、ホイップ・クリーム発祥の地で味わうこともできます。

クレーム・シャンティイ

ピカルディーの伝統菓子ガトー・バチュ(Gateau Battu)は、カヌレを大きくしたような独特の形状をしています。Battuは叩きつけたではなく、製造工程にある卵やバターをかきたてるというところから来ているようです。 卵黄、バター、卵白を十分に掻き立て、発酵したブリオッシュ生地を併せて焼き上げます。ピカルディー地方では、お祝い事の際などに食べることが多い郷土菓子です。

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