フランス語コンクールに2年連続決勝に出場して、2年連続入賞した人間によるまとめ
こんにちは!
今回のこの記事では、毎年開催されている「フランス語コンクール」について自分なりの考えをまとめておこうと思います。
コンクールを終えて早めに記事を書かなければ、という気持ちはあったのですがなかなか書けず、これ以上遅らせると本当に記憶から消えてしまいそうだったのでもう書きます!
ここでは、次回以降に参加される方にとって有意義な情報をまとめます!
わたしがこのコンクールに出場するにあたって「やってきたこと」に関しては、別の記事でまとめますので、またお知らせしますね。
結果
まず、結果から先に言うと、
2023年:日本フランコフォニー推進賞(?)
2024年:百周年賞(?)
という結果です。
名称はよくわからないのですが、たぶん上級部門の三位と二位です。
(部門は「上級」と「中級」に分かれています。)
大事なことなので目を背けず言いますが、優勝を逃したということです。
わたしは2023年度開催のコンクールで初めてこのイベントを知り、2年連続の出場を決意したのですが、一応、今回でこの一連の挑戦は終わりになります。
というのも、一度航空券付きの賞をいただくと出場資格を失うからです。
よって、ここで総括をしておきます。
出場動機
まずは、参加理由から書いておきましょうか。
わたしがこのイベントに出ようと思った理由は、他のなんでもなく「自分が成長する機会を取りこぼしたくなかったから」、それだけです。
なぜ上級部門を選んだのかというと、「中級よりも上級を選んだ方がより成長できると思ったから」、以上です。
特に2023年の時点において、わたしのフランス語力はギリB2に受かる程度でしたので、中級に出ても良かったのかなとは思います。パンデミックを機にフランス語を再開したのでブランクもありました。
もしかすると、人によっては中級で参加して航空券付きの賞を手堅く狙ったり、テーマに合わせて得意な方を選んだり、という選択肢もありえるかもしれません。
一方わたしは、自分の語学力を底上げすることだけをただ考えていたので、ここは迷わず上級に応募しました。
これに向けて挑戦する過程で自分のフランス語力が上がることを妄想すると、よだれが止まらない状況でした。(一応言っておきますが比喩です)
趣味で学んでいる人が多いフランス語界隈では、少し珍しいマッチョ思考なタイプかもしれません。
あ、マッチョというのは「男性優位主義」という意味ではなく、ただの脳筋系という意味ですので誤解なきよう。
受賞に関して
個人的な分析
さて、お遊びはこれぐらいにして、本題に入っていきましょう。
まずは、終えた感想を言います。
負け惜しみでもなんでもなく、本気で思っていることを言いますが、わたしは2年とも結果を聞くまで「自分が優勝だろうな」と本気で思っていました。
なんなら全部を終えた今この瞬間でも、自分のスピーチが一番良かったのに、と心の底から思っています。それぐらい一切の妥協なく仕上げたものだったからです。
わたしもそこまでバカではないので、自分を全く客観視しない「井の中の蛙状態」でこれを言っているわけがありません。ある程度の根拠を持って言っています。
そのうちの一つが、「聴衆の声」です。
2年とも、終わった後に「あなたのスピーチが一番感動した」「優勝すると思っていた」という声のオンパレードをいただいています。
はい、もちろん、これはお世辞の可能性もあります。
でも、そこにいた人のほとんどが嘘をついていた、ということも不自然だと思うので、このデータもなんらかの参考にはなると思います。
どちらにせよ、コンクールの審査基準は明らかにされていないため、わたしの中でただただこの謎は深まるばかりでした。
審査員の分析
このコンクールは、表彰の後に懇親会があります。
去年は授賞式の後、すぐに空港に向かってその日の深夜便で上海に旅行に向かったため参加できませんでした。
今回はいい機会だと思い、わたしはこの場で審査員の方達から個別で講評をいただきました。
そこで言われたのが、「コミュニケーションに対するもっと深い考察が必要だった」と指摘されました。もちろん、この批判点にわたしは納得します。
(あ、この年の上級部門のテーマは「コミュニケーション論」でした)
ただ、それでいうとわたしは去年のスピーチ内容(思考の深さ)に自信があったので、その点も追加で質問してみました。
そうすると、「評価はあくまでその年の比較になる。自分のスタイルを変えない方がいい」と謎すぎる回答をもらったので、あまりコミュニケーションが取れないと思い、それ以上の質問はやめました。
この瞬間に、その時感じていた悔しさがスッと消えました。
審査員の方の権威に影響するので名前は挙げませんが、2年連続審査員をしていた方なので、ネットで検索すれば出てくると思います。
少なくとも、この方は「どこまで問いに肉薄できているか」を(その年によっては)審査対象としているということでした。
これを聞いてわたしが率直に思ったことは、「コミニュケーションに対する深い考察を測るんやったら論文審査でええやん」です。
もちろん「問いにどこまで深く肉薄できるか」も重要ですが、スピーチなので、あくまで聴衆にどれだけ印象を残せるのか、発音やフランス語力など、重視すべき観点はいくらでもあります。
それらに対する言及が一切なかったので、この点を踏まえてもう少し総合的にコメントがあればいいのになと思いました。
いずれにせよ、ここでもまだわたしの疑念は晴れない状態です。
志村さんの分析
なんと、このイベントの2日後にフランス語コンクールマニアの志村さんと会う予定がありました。(勝手にマニア呼びしてすみません笑)
フランス語コンクールマニアという肩書だけではなく、フランス語教師や翻訳者としても活躍中です。(あ、逆かもしれません)
ここで、この疑問は解決方向へと向かいます。
実は、彼には去年から2年連続でこのイベントの後日、コンクールのフィードバックをもらっています。
去年は「あなた以外の人のスピーチはそもそも思い出せない」と言ってもらい、今年は授賞式の前に「おそらく優勝していると思います」とハッキリと言っていただけました。
そんな彼に改めて「良かった点が2点ある」と言ってもらいました。
それは、「発音」と「ユーモア」です。
もちろんわたしはスピーチの中にもユーモアを入れており、締めでしっかりと笑いを取りました。そこに関しては貪欲なので。
(ユーモアをスピーチに組み込んだ参加者が他にいなかったのは残念)
加えて質疑応答でも、基本的にはジョークを入れながら適切な分量で返答しました。
まぁ、わたしがどれだけ笑いに貪欲か、という話は一旦置いておきます。
ここでのポイントは2つ目で、わたしのフランス語の「発音の良さ」です。
実際に優勝された方を「チャンピオン」だと予想していた観客はほとんどいなかったことから、わたしは、彼のコミニュケーションに対する深い考察を理解できていた聴衆はほとんどいなかったのではないかと予想しています。
一方、わたしのスピーチをいいと思ってくれていた方がこれほどいて、オチの話で笑いが起きたということは、聴衆はわたしのスピーチの内容をきちんと理解できていた、ということです。
これは、発音の差が如実に出ている点であり、まさにこの点が聴衆と審査員との評価のギャップです。
なるほど、やはり鋭い指摘と分析をもらえて非常に良かったです。
そして、発音の鬼である志村さんに発音の良さを褒めてもらえたことは何よりも喜びです。
改めて個人的な分析
ここで改めて個人的に振り返ると、確かにこの指摘は頷けます。
もちろん聴衆のフランス語力には差がありますから、一概にみんなが登壇者のスピーチの内容を理解できるとは限りません。
しかし、もしかしたら事務局やスタッフの方なら高いフランス語力をお持ちだと思うので、コミュニケーションに対する彼の考察を理解していたのかな、と思ったのですが、これもそうでもありませんでした。
(事務局の方とは結構長い間お話しさせていただきました。)
ここで、審査員と聴衆(スタッフ含め)との大きな違いを話します。
それは、登壇者のスピーチを「聞く時の姿勢」です。
ここに大きな乖離があり、この点がまさに評価を分けるポイントなのではないかと考えています。
聴衆は、よっぽどでない限り「登壇者の方を見て」話を聞きます。
わたしは全く緊張しないタイプですので、ほぼ全員と壇上で目線を合わせており、その光景を思い出せます。
一方、審査員は「手元の原稿を見て」話を聞きます。
わたしは壇上から彼らの姿を見ていましたが、全員が同時に顔を上げることは一瞬たりともありませんでした。時々顔を上げますが、スピーチ全体の約2割程度の時間だと思います。
わたしは発表中に審査員の一人が「トクピシン」と言ったところで線を引くところが見えたので、この点を質問されるんだろうなと思っていたら案の定そうでした。
つまり、原稿があればこそ(少々乱暴な発音でも)理解できることがあるため、内容の思考の深さの方に比重がのります。
一方原稿を持たない観客は、その人が発話する発音の良さが、彼らの理解力に大きく影響を与えます。むしろ、その場での演出などの方が比重は高くなるでしょう。
この聞き方を鑑みれば「コミュニケーションに肉薄できているか」という点が大事なのも頷けます。
皮肉的にも、「コミニュケーション」というテーマにおいて、まさにスピーチを介した「コミニュケーション」における超えられない乖離が、聴衆と審査員との間にはあったのです。
改善点
ここで、提言をさせてください。
わたしは、個人的には今回のスピーチがみんなの心に届いていたのならそれでいいですし、これ以上望むものはありません。
ただ、審査員に多様性がないのが一つ問題としてあると思います。
もちろん性別とか国籍とか目にみえる多様性はありますが、結局はフランス語教師か○○大学教授、といった方達です。
こういった偏りが今回の審査基準にも影響を与えていると思いますが、このイベントの目的はあくまで「アカデミックな面」だけではなく、「フランス文化の発展」「日仏間の文化交流の促進」ひいては「フランス語学習者の増加」ではないでしょうか。
このイベントを継続させるためにも、やはり財源が尽きたら終わりです。
イベントの資金面に関してどういった運用をしているのか分かりませんが、仏検なんて未だに寄付を募って運営しているわけです。
フランス語学習者の人数は、右肩下がりで減る一方です。
芥川賞だったら、名だたる有名作家に認めてもらえるという権威があります。M1グランプリだったら、レジェンド芸人に評価されるという権威があります。
でも、このコンクールは審査員に権威があるというより、ぶっちゃけますが賞に航空券がついていることがある意味、参加者を呼ぶ大きな役割を果たしています。
だからこそ、いつかわたしを審査員にしてください。笑
おそらく肩書としては「言語学者」でも「文学研究者」でもなく、「冒険家」とかその辺りだと思いますが、かなりコンクールの発展に寄与できると思います。
この文章を見るだけでも、非常に生意気な人間だということは明白ですが、思ったよりはフランス語を取り巻く現状について、危機感と「なんとかせねば」という気持ちを持っていると思います。
こんな貴重なコンクール、絶対になくしてはいけません。
フランス人を含めたインバウンドの観光客が増える一方なのに、フランス語を学んでも「雇用がない」なんて状況、どう考えてもおかしすぎるでしょう。
英語でガイドされているフランス人を街中で見るたびに、「この現状は誰のせいなんですか」と本気で思っています。
アカデミックレベルにフランス語を極めたのに、就職を探すのに苦戦している友人も多くいます。
だからこそアカデミックな面に最大限のリスペクトを払いつつ、もっと違うアプローチでフランス語学習者を増やさないといけないと思います。
やばい、気づいたらかなりの分量を殴り書きしてしまっていました。
すでに5000文字を超えています。
ここまで読んでいるあなたは、すでに変わり者です。
以上、全部冗談でした!!!
※ 追記