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緩徐抽筒とは

62式機関銃について語るうえで欠かせません話題といたしましては、緩徐抽筒という機能についてお話したいとおもいます。

この機能については完全に誤解されたところが多いように感じる次第でございますから、どこかで解説をいたしたいと思っておりましたので、この場をお借りする次第でございます。

そもそも抽筒とは何か

まずそもそも抽筒とは何か、についてお話をすることで話がしやすくなるように思いますので、そのお話からさせていただきます。

自動でない火器のほうが概念を語るうえでは便利でございますから、とりあえずまずはこの動画をご覧くださいまし。

抽筒とは、発砲の後に行われるもので、槓桿を手力で後方に引くときに遊底の部品である抽筒子によって薬莢が薬室から引き抜かれる作用のことを申します。
発砲後に槓桿を起こし遊底と尾筒(あるいは薬室)との閉鎖を解いて槓桿を引いて抽筒、抽筒の最終局面で蹴子によって薬莢は蹴出されるという一連の流れが重要なのでございます。

薬莢が存在する銃である以上、この抽筒というものは決してなくなることはございません。ところで、薬莢の役割というものをご存じでして?
もしわからなくとも恥じることはございません。日常では何ら役立つ知識ではございませんから、知らずとも当然です。
なので、ここですこし解説いたしましょう。

薬莢の役割とは

薬莢の役割はいくつかございますが、まずは1つに内部の装薬や雷管を外乱から守ることが挙げられます。これは見た目からもそれがうかがえますわね。

そして、もう一つの役割が「緊塞」という役割ですわ。
緊塞とは、発砲したときに発生する火薬の燃焼ガスが後方に抜けてこないように塞ぐ、とても大切な役割ですわ。

発砲時に真鍮でできた薬莢は内部の圧力によって拡張し、薬室に密着することによってガス漏れをふさぐのです。
後込めの銃で薬莢を持たないとき、銃側に特殊な装置が必要になることもあります。
例えば幕末の「シャスポー銃」でしたら、銃の遊底にゴム栓があり、それによって緊塞がなされておりました。
以下のサイトが参考になると思います

緩徐抽筒とは何ぞや

ここからようやく本題となります。
手力で動かす銃でしたら、薬莢から内部の圧力が完全に抜けてから抽筒になりますので、薬室と薬莢の間の張りつこうという力は失われ、簡単に抽筒できる次第でございます。

しかし、これが機関銃や自動小銃となりますとそうは参りません。ガス圧作動式にせよ反動利用式にせよ、それよりも早いタイミングで抽筒が始まってしまいますので、場合によってはまだ薬莢に薬室と張り付いたままでいさせようとする圧力が残った状態で抽筒が行われてしまうことがあります。
我が国の機関銃が保式機関砲が薬莢切れを多発させ、三八式機関銃では弾薬筒に油を塗って解決させたのも、そのところが原因でございます。

緩徐抽筒とは、この抽筒の作用の立ち上がりを遅延し、あるいは緩徐にすることを指すのであって、決して他のいかなる挙動を指すものではございません。

例えばブローニング機関銃などはショートリコイル式と申しまして、銃身も遊底などとともにある程度まで下がることで抽筒の開始を遅延させております。
これも一種の緩徐抽筒の作用といってもよいかもしれません。

また、89式小銃のガス筒とピストンに関するであろうモノの特許でもそのような作用を果たすべき構造とすることが書かれております。
当該する特許のリンクは以下に付します。(PDF表示モードをお勧めいたしますわ)

以上の事柄から、緩徐抽筒は62式機関銃独特のものでない、ということがいわかりいただけましたかしら。
お判りいただけたら幸いです。

62式機関銃の銃尾機関については、またの機会がございましたらお話させていただきたいと思っております。


では、ごきげんよう!

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フランチェスカ・ゴッテンベルク
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