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誰かひとりに向けて書く。

毎月書き換えをしているのが、鎌倉駅前にある不動産屋さん。

カフェと間違えて入ってくるお客様もいらっしゃるほど、
一見すると不動産屋さんらしくない。
古民家をリノベした本社家屋。

リノベなさった時に大きな窓を設置されたので、
その時からウィンドウを毎月書き換えている。

初めは社長さんも
「せっかく時間かけて書いてもらったのに、消してしまうのは
もったいない」
とおっしゃっていたのですが、

変化させることがなにより大切

ということを、それまでの現場の経験で感じていたし、
それまでウィンドウを描かせていただいているクライアントさんの
実績もあったので、そう自信を持ってお伝えした。

それから毎月毎月書き換えてきて、
今月で49回目の書き換えとなった。

今となっては、
「次はどんな柄になるのか、楽しみです」
とおっしゃってくださる方も増えたし、
実際来店客数にも影響がある、とスタッフのかたにも
おっしゃっていただくようになった。


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当然ながら毎月書き換えの際は、
まずは消すところから始まる。
最低でも4回は消している。
まずメラミンスポンジでポスカを消す。
その後水拭きして、から拭きしての工程を繰り返す。

よく
「こんなに頑張って書いたのに、消すのもったいないとか
躊躇しませんか?」

と聞かれるのですが、自分的には書いた物は作品とは思っていなくて、
変化させることの方に比重をおいているので、もったいないと
感じたことは一度もない。

消すことを前提に書いているからだと思う。

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ちなみに先月書いたものはこちらでした。

ウィンドウがかなり大きいこともあり、こちらを消すのに
今日は2時間30分くらいかかりました。
真夏だと結構きついですね。

こちらはまだ中なので良いのですが、外で書く現場もあるので
これからの季節はかなり厳しくなります。

雨の日や雪の日なんかも当然あるんですよね。
最初の頃は
「こんな寒い日に(ほんとにその日は寒かった)ウィンドウ書いていて
見てくれている人いるのかな」
なんてちょっと思ったこともありました。

けれど、外で書いていると通りすがりのかたに
お声かけられることがありました。

「いつもこのお店の前を通るのが楽しみなんです。
用事があってこの辺を歩く時は、
わざわざここの道を通るようにしているんです。
今日はまさか書いている人にお会いできるとは思いませんでした。

こんなふうに声をかけられたことがありました。

それまで
「多くの人の目に触れるように書こう」という気持ちがあったのですが、
その時から
「だれか1人に向けて書いてみよう」と考えるようになりました。

だれか1人の人を想う。
そうすると想像力が沸くんですよね。

そのほうが書いていても楽しい。
もちろん店頭演出だから、より多くの方の目に触れてもらわなければ
その役目は果たせないのかもしれないんですけど、
1人でもここの前を通って、その時に
「ああ、ここを通って気持ちがなんだか明るくなった」と
感じてもらえたならすごく良いなと。


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今月書き換えたウィンドウ。

ずっと家に閉じこもってばかりで、
気持ちがもやもやしていて、久しぶりにちょっと外に出てみたら
なんだか爽やかな気持ちになった!


と、だれか1人でもそういう気分になってもらえたら
いいな、と想像しながら描きました。
想定したのは、40代の女性。

その女性がどこかのタイミングで家探しをしたい時に
この不動産屋さんを思い出してくれると良いな。

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