ちゅんちゅん話230610 違法賭博・違法営業やめましょう!
Shuffle Up & Deal, れくです。
この書き出しということはポーカーの話です。緊急でキーボードを叩いている割には大した話でもないので無料です。
結論は表題の通りです。
違法賭博や違法営業は辞めましょう!
これで満足した方はブラウザをそっ閉じてください。
アミューズメントカジノ店に立入検査
執筆のきっかけはもちろん、こちらのニュース。
当記事執筆の前月に、大阪のアミューズメントポーカー店経営者らが賭博開帳図利および賭博の容疑で逮捕されています。
そして、大阪府南警察署による市内のアミューズメントカジノ店舗立ち入り検査に際して配付されたと思われる文書(以下、ミナミ文書)がこちら。
出典:
https://twitter.com/poker_sio/status/1667085991625261057
これを見てビックリされている方がポーカー界隈に大勢いらっしゃるようで、非常に大きな反響を呼んでいます。
ですが、この文書自体は法律の条文とアミューズメントカジノ店舗に即した具体例を記述しているにすぎません。何の変哲も無い単なる事実です。とはいえ、予備知識の無い人がこのペラ紙1枚を読んでもナンノコッチャですので、ざっくりと説明をしてみます。
賭博・賭博罪とは
まず、賭博罪の「賭博」とは、勝敗が偶然の事情で決まる事項について、金銭やその他財産の得喪を争うことです。
(出典: https://best-legal.jp/gambling-crime-60581/)
ポーカーゲームの勝敗やポーカートーナメントの順位は、この「勝敗が偶然の事情で決まる事項」にあたります。そのためミナミ文書では「ゲームの勝敗や大会の順位等に応じて」と記載されており、これを行った者は賭博罪で処罰されます。これはアミューズメントカジノ店舗の客も対象となります。
金銭やその他財産、これを法律上は「財物」と呼びます。現金や有価証券、貴金属や宝飾品はもちろんのこと一般的な物品はすべて該当し、また債権や権利など経済的・財産的価値のある概念も財物に含まれます。
ただし、刑法185条(執筆当時)には例外規定があります。「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」と規定されています。これに関する詳しい話は長くなるので割愛します。
逆に言うと、アミュカジのプライズ関連で客として逮捕起訴有罪のリスクがあるのはここだけです。以降の話は店舗運営側のリスクが続きます。
賭博開帳図利罪とは
次にミナミ文書で言及されているのが「賭博開帳図利罪」です。読んで字のごとく「客に賭博となる行為をさせ利益を図った」者は処罰されます。犯罪としては利益を「図った」時点で成立し実際に利益を得られたか否かは考慮されませんので、赤字経営でも犯罪です。店舗経営者が正犯、ディーラーやウェイターなど従業員が従犯(幇助罪)となります。
[本稿とは直接関係ありませんが、客に「賭博」をさせ利益を図ることが賭博開帳図利罪となるので、客が「賭博罪に該当するか」は関係ありません。たとえば、客にジュースを賭けてポーカーをさせ入場料や手数料を取る行為は、客は賭博罪に問われない一方で主催者は賭博開帳図利罪となる可能性があります。]
アミューズメントカジノにおける賭博罪
「直接現金を賭けなくとも、チップの得喪を争い、獲得チップを換金したり、(中略)名目に関わらず第三者を経由して獲得チップに応じた金額を参加者の口座へ振り込む等する場合も賭博罪」と続きます。ここでの「獲得チップ」は前述の「偶然の事情」の一例であり「トーナメントの順位」と読み替えても成立しますので、「参加費を支払い、トーナメントチップの得喪を争い着順やノックアウト実績に応じた賞金を受け取ったり、名目に関わらず第三者を経由して着順に応じた金銭を受け取る場合も賭博罪」となります。
このことから、リングゲーム・トーナメントといったゲームの形式は問わず財物を賭けたら賭博罪となり、開催して手数料を取ろうとした店舗や主催者は賭博開帳図利罪となります。
ミナミ文書はさらに続きます。
風営法違反とは
上記に該当しなくとも、「(風俗営業許可取得済の)店内で行われるゲーム等の遊技に結果に応じて、店側から客に賞品を提供することは賞品提供禁止違反」となります。
これはどういうことかと言いますと・・・長くなりますが・・・・・・
まず前提として日本国には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という法律が制定されています。通称「風営法」や「風適法」と呼ばれるものです。(余談ですが、風営法と風適法は略し方が違うだけで全く同一の法律を指します。当記事では以下「風営法」と呼びます)
詳しい話は省きますが、風営法において店が客へゲームの結果に応じた賞品を提供することが許可されている業態は「4号営業のうちパチンコ・パチスロ屋のみ」であります。(スマートボール屋も含まれます)
よくある勘違いとして、「麻雀屋も4号営業だから雀荘も賞品を出せる」というものがありますが、雀荘は麻雀の結果に応じた賞品を提供することはできません。同法第23条第2項にて次のように規定されています。
遊技の結果にはリングゲームのチップの他、トーナメントの着順やバウンティ獲得実績も含まれますので、これらの結果に応じた賞品を提供することは、賞品の内容や形態を問わず風営法違反となります。これは従前から変わらない単なる事実です。
刑事罰と行政処分
ところで、ミナミ文書では賭博罪や賭博開帳図利罪には「なり得ます」という幅をもたせる言い方であるのに対し、風営法違反には「該当します」と言い切っているという違いがあります。この二者には明確な違いがあるゆえの言い回しとなっており、それは「刑事罰」と「行政処分」の違いによるものです。
賭博罪や賭博開帳図利罪、風営法違反に関する懲役や罰金といった刑事罰は刑事裁判で扱われるものであり、警察が捜査を行った上で送検し、検察でも捜査を行い起訴相当であると検審を納得させ起訴し刑事裁判で争ってもらい有罪判決が下ることでしか確定しません。
一方、風営法違反に対しては営業停止や営業許可取り消しなどといった行政処分を行うことができ、これは実質的に公安委員会≒警察の一存で決定できるものとなります。送検して(中略して)罪を問うてもらうかどうかは置いといて風営法違反の行政処分を確定させることができるため、「該当します」と言い切ることができるのです。
風営法の「外」
ここで疑問になるのが、「ポーカーの大型大会は良いのか」「TCGやeスポーツの大会で賞金は出せなくなるのか」「ポーカーサークルは解散不可避なのか」ということかと思います。各類型について簡単に説明します。
大型ポーカー大会やゲーム大会等の扱い
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)という文書において、次のように定義されています。
営業とは、財産上の利益を得る目的をもって、同種の行為を反復継続して行うことを指す。営業としての継続性及び営利性がない場合は、深夜において人に遊興と飲食をさせたとしても、特定遊興飲食店営業には該当しない。
短期間の催しについては、2晩以上にわたって行われるものは、継続性が認められる。
これに対し、繰り返し開催される催し(1回につき1晩のみ開催されるものに限る。)については、法第8条第3号の規定の趣旨に鑑み、引き続き6月以上開催されない場合は、継続性が認められず、営業には当たらない。
これらをまとめると、大型ポーカー大会は「反復継続しておらず」「2晩以上にわたらず」「6ヶ月以上続けて開催しない」条件下においては風俗営業でないとされ、風営法による規制を受けないということになります。
たとえば、業界最大手であるJOPTでは24時間営業は絶対に行っておらず、午前5時から10時ごろは会場を閉鎖しています。これにより、「2晩以上にわたらない、1回につき1晩のみ開催されるイベントを複数回開催している」という扱いになっているのです(追記:運営会社が1日ごとに交代しているとか、そういう仕組みも用意しているらしいです。人伝手に聞いただけで裏は取ってません)。また、年間で数回と反復継続しておらず、一度の開催期間が6ヶ月を超えることも絶対にありません。
これにより、運営者から客にプライズを提供することは風営法違反となりません。
ここで注意すべき点として、風営法適用外であることは他の法規制とは何ら関係が無いということです。刑法186条第2項(賭博開帳図利罪)や景品表示法などの規制は引き続き遵守しなければなりません。
TCGやeスポーツの大会も、同様の条件下にて賞品や賞金つきで開催可能となります。
ポーカーサークル
遊技場ではあるものの、それが「営業ではない場合」も風俗営業許可は不要であり、違法行為にはあたりません。ここでいう営業とは、「営利目的」であり且つ「反復継続している」ことを指します。したがって、営利を目的とせず自宅に人を呼んでポーカー会を開くとか、NPO法人の事業としてポーカークラブを運営するといった場合には風俗営業許可は不要であり、風営法の規制も受けないことになります。実際にそのようにして運営されているポーカースポットも存在します。
記事冒頭の「NPO法人の理事が営業していたアミューズメントカジノ店の摘発」とは構造が全く違います。念のため。
当然、風営法5号営業許可に基づかないため深夜開催もできますし、賭博罪・賭博開帳図利罪や景表法等に抵触しない範囲において賞品提供も合法に可能となります。
ただし、大前提として「非営利であること」または「反復継続していないこと」が条件となりますので、反復継続した営利活動であると認定された場合には無許可営業の風営法違反として摘発されることとなります。
この記事を読んで風営法「外」の運営を考えている方がもしいらっしゃるのなら、この点については法律の専門家および管轄の警察署とよく相談してください。筆者は何らの責任も負いません。でももし本稿がなにかのきっかけになったのならチップください。
風営法の「中」
ゲームセンター
一方、ゲームセンターのUFOキャッチャーで遊んだ結果として賞品を獲得することができます。
それを持って帰ろうとしてゲーセンの出口で警官に呼び止められたとか、UFOキャッチャーを置いていたゲーセンが摘発されたとか、そういう体験は無いと思います。
ゲームセンターにUFOキャッチャーを設置して賞品を提供することは、「一定の条件下で違法とは扱われない」です。
その条件とは、前述文書に下記記載の通り。
要約すると、ゲームセンターがUFOキャッチャーみたいなゲーム機で約800円以下のものを払い出す場合には、ゲームの結果に応じて賞品を提供したことにはならないとして取り扱うこととする、ということです。
この範囲内である限り風営法の禁止行為として取り扱わないでおいてくれているため、摘発されずに済んでいます。一種のお目溢しってやつです。ただし、これも法執行当局の解釈運用基準にすぎないため、金額や提供方式については(法規に反しない範囲で)警察のさじ加減一つで今後いつでも変更される可能性があります。
翻ってポーカーゲームは遊技の結果がカードやチップによって表示されるものであり且つクレーン式遊技機でもないので「遊技の結果が物品により表示される遊技の用に供するクレーン式遊技機等の遊技設備」には該当せず、ポーカーゲームによるプライズ提供に際しこの条項を援用することは通常できないと考えられます。
パチンコ・パチスロ
パチンコ屋では、客の出玉に応じて店が賞品を提供することができます。
そして、たまたまパチンコ屋の近所で営業している古物商店が一部の賞品(特殊景品)を買い取ってくれます。
古物商は、金地金を含む特殊景品を専門の卸問屋に売却します。
そして卸問屋は、仕入れた特殊景品をパチンコ屋へ卸します。
これらすべての行為が、風営法やその解釈運用基準書、古物営業法など各種法令・規則において規定されている範囲内で行われる限りにおいて法令違反とはならず摘発対象ともならないのです。
特に解釈運用基準についてパチンコ屋および三店方式に関する記述は多くの箇所におよび膨大で難解な解説となるため、本記事では扱いません。興味のある方は読んでみてはいかがでしょう。
筆者の見解
あくまで筆者の個人的な見解ですが、トーナメント優勝の栄誉を称えるためのトロフィー授与については、厳密には遊技の結果に応じた賞品提供のため風営法違反ではありますが、経済的・資産的価値の無いトロフィーを提供しただけで本当に営業停止にさせられ罰せられるべきなのかは疑問です。可罰的違法性という観点で争う余地はあるかと思います。もちろん、純金製トロフィーみたいな資産価値のあるものや、何者かが一定金額でトロフィーを買い取ってくれるn店方式的なヤツは当然アウトですwwww
また、パチンコ屋で実質的に賭博ができるのは現状合法だからです。
そして、パチンコ屋の方式が合法とされている理由は既得権益です。パチンコである必然性、パチンコだけが合法で他の遊技における同様の行為が違法である限局性はどう考えても何処にも無いですからね。パチンコ台の研究開発製造業などは、あくまで規制こそが生み出した後付けの産業です。
戦後復興期に朝鮮人が日本に持ち込んで営業したのがパチンコでなくポーカーだったら、今頃全国各地の駅前一等地や郊外のロードサイドにポーカールームが点在し低レートの賭けポーカーが合法に行われ、ポーカーの種目開発も盛んに行われ、代わりにパチンコやスロットが違法なゲーム機として規制されている世界線が……あったかもしれませんし無いかもしれません。歴史にタラレバはありませんので。
以上の話を総合すると、下記の通りとなります。
まとめ
☆アミューズメントカジノ店舗がプライズを提供することは、違法。
風俗営業許可を取ってしまったら、プライズ提供は一切できません。
店舗である限り、たとえフリーロール(参加費無料)でも賞品提供は違法につき不可。
☆参加費が直接的ないし間接的に充当されたプライズの得喪を争う行為は、違法。客でも捕まる。
形態や名目は問いません。警察検察と争ったら負けます。
☆風俗営業にあたらない形態のイベントでプライズを提供することは、可能。
風営法の規制を受けないだけであり、賭博開帳図利罪や景表法など他の規制に注意が必要です。詳しくはお近くの法律家および管轄の警察署にご相談ください。
また追記とか、するかもしれません。
One seat open!