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Cacharel Eden-Noa-Nemoの物語性についての考察


みなさまは、香水の名前の由来について深く考えたことがあるでしょうか?

私は本日、日がな一日考えてました(暇)。というのも、私の大好きな香水、CacharelのNoaはけっこう謎が深いネーミングなのです。私はずっと、「Noa」はノアの方舟のノアだと思っていました。Cacharelには「Eden」という香水もあり、聖書由来のネーミングなのだろうと勝手に思い込んでいたんでしょうね。でも、実はノアの方舟の表記は「Noah」。では、「Noa」とは一体?さらにその兄貴分としてリリースされたという「Nemo」とは?調べていくうちにある一つの可能性に思い当たりました。

「Eden」「Noa」「Nemo」は、一連のテーマとしてつながっている

それは「禁忌を犯した人類の滅びと再生の物語」である、と。


※この記事の半分は妄想力で書き上げており、またWikipediaの情報を参考にしている箇所もあるため厳密な正確性を担保しているとは言えませんが、よければお付き合いください。


Noa=ポリネシア諸語で「祝福」説

Noaは1998年にリリースされた、Cacharelの代表的作品です。オリヴィエ・クレスプによる、ハーバルでソーピーでパウダリーな優しくも個性のある香りです。

"noa"という言葉の意味についていろいろ調べたのですが、私はポリネシア諸語の"noa"に由来するのでは、という説を推したいです。

単体で説明するのが難しいので、まずは"noa"と対になる語である"tapu"について触れたいと思います。"tapu"とは「タブー」のことで、神聖だったり、あるいは不浄であるが故に触れたり口にしたりしてはいけないもののこと。そして、その反対の概念が"noa"だそうです。まだよくわかりません。こんな説明がありました。

Noa is the opposite of tapu, and includes the concept of ‘common’. It lifts the ‘tapu’ from the person or the object. Noa also has the concept of a blessing in that it can lift the rules and restrictions of tapu.
(https://www.iponz.govt.nz/)

the concept of ‘common’がよくわからなかったのですが(「共通」の概念?)、"tapu"の禁忌や制約といったものから解放してくれるもので、祝福という言葉が使われていることから、ポジティブな意味で使われていそうですね(ポリネシアの文化的背景はちょっと調べただけでは理解するのが難しかったのですが、すっごい興味深い。わかる人いたら教えてほしいです)。

確かにNoaはポジティブな香りです。元気いっぱい!とは違いますが、柔らかくて清潔で、後ろ暗い印象は全くありません。"tapu"が犯してはいけない、守らなければいけない厳格なものだとするならば、対になる"noa"は赦しや癒し、になるのでしょうか。

ただ、なぜ急にポリネシア諸語で香水の名前を?という疑問については、二つの仮説があります。一つは、ポリネシア諸島の一部がキャシャレルの本拠地であるフランス領であることから、創作のヒントやテーマが得られやすかったのではないかということ。もう一つは、次に説明するNemoの由来とリンクするからなのではと考えています。

Nemo=「ポイント・ネモ」説

Nemoは2000年に、Noaの兄貴分的な位置づけとしてリリースされました。Noaは世界的に売れ続けていますが(特にスペインでは人気なよう)、Nemoは早々に廃盤になってしまいました・・・。でもとてもいい香りなんです。

nemoはラテン語で「誰もいない」という意味。そして、太平洋真ん中に存在する「ポイント・ネモ」は、大陸から最も遠い到達不能極と言われるある地点のことを指します。そこは人間の居住地区から遠く離れ、保護すべき生態系も少ないことから人工衛星の落下地点として使用されており、2018年までに250-300機に及ぶ人工衛星の破片が水没しているのだそう。

「ポイント・ネモ」に最も近い3つの島のうち、ピトケアン諸島とイースター諸島に最初に移り住んだのはポリネシア人だったようで、これが先述のNoaとNemoとを関連付ける根拠です。根拠うす!

「ポイント・ネモ」を調べていて、科学技術が暴走して文明崩壊した後の『風の谷のナウシカ』的世界を想像してしまいました・・・。XXXX年、ポイント・ネモから人工衛星をサルベージした人類は当時の技術力の高さを目の当たりにして、みたいな・・・。

Eden-Noa-Nemoでつながる物語

と、ここまで色々調べていて、Cacharelのいくつかの香水には関連するテーマがあるのではないかと思い当たりました。

それが最初に述べた「禁忌を犯した人類の滅びと再生の物語」です。NoaとNemoの前にEden(1994)がリリースされているのですが、その3つをリリース順にくっつけて考えてみたいと思います。

Edenはその名の通り、聖書に出てくる楽園です。以前、EdenについてこんなTweetをしました。

私はEdenの持つ切なさが、楽園そのものの香りではなく、楽園追放の香りだと解釈しました。ところでアダムとイヴが楽園追放された理由はあまりにも有名ですよね。そう、神に食べることを禁じられていたリンゴを食べてしまったから。つまり、タブーを犯しているわけです。

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しかし、この罪はNoaの祝福によって赦されます。禁忌を犯し、神の定めたルールから逸脱しても、自分たちの力で生きていっていい。神の庇護から脱却し、人間自身の力によって生きていく創作は世の中にたくさんありますが、そんなイメージです。

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ですが、神を捨て、行き過ぎた力を行使した結果が滅びにつながりはしないでしょうか。「ポイント・ネモ」に落とす人工衛星の破片だけではなく、核廃棄物や無計画な都市開発・・・ちょっと考えれば、近い将来何倍の災厄となって返ってきそうなことばかり人間は行っています。知性を得ることも、神からの脱却も私は賛成ですが、周りを顧みることなく暴走し続けた結果、nemo=誰もいない状態になるのはごめんです。

滅びの果てに、また神の世界へと回帰する・・・という創作はこれまた多そうです。しかし、私の中で屈指の名作だと話題になり、奇しくも香水と同じ名である『EDEN~It's an endless world!~』という漫画にこんなセリフがあります。

「戦争・差別・不平等・暴力・破壊 確かに人類はろくでもない」「だからと言って我々の進化や進歩を勝手にショート・カットさせる権利が誰にある?」「お前の主人に言っとけ 『人類は憎しみと殺し合いの果てにいつか宇宙に進出する』と」

きっと人類は、「ポイント・ネモ」や地球の至る所にゴミを垂れ流し続けながら、大小様々な破壊と再生を繰り返して、それでも自分たちの力で生きていく、そう思わずにはいられません。


・・・Cacharelが好き故とはいえ、よく妄想に近い根拠でこれだけ書けたもんだ。この記事だとNemoの香りが全くわからないと思うんですけどすみません。

最後に。たなたろさんがこんなこと仰ってたけど、

私はキャシャレルが何かしらのバックグラウンドと結びついてるんじゃないかと思う。ゲルリナーデならぬ、キャシャレナーデあると思う。それくらい、共通して好き。でも、何の記憶に結びついているかがわからないのだ・・・

※ポリネシアやポイント・ネモについてはさっと調べた程度なので、間違い等あったらすみません。ご指摘いただけると幸いです。

参考


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