セレブ離婚特有の問題 持ち分なし医療法人の財産分与について最高裁判決の予想
これから、前提がないとわからない硬い記事はノートにすることにしました。ただし一定期間ABテストとしてブログと両方投稿してみます。
平成18年の医療法改正によって、現在は、医療法人を設立するには持ち分のない医療法人しか設立することが出来ません。
持ち分のある医療法人については、平成26年の大阪高裁判決が一つの基準となっており
・持分について財産分与の対象となる
・評価基準は純資産方式(そもそも収益還元法か純資産の争いであって類似業種比準方式は問題となっていなかった??)
・ただし、評価は一定程度減ずる(判例で3割減)
・寄与分の修正もあり(判例では6対4で医師に多め)
ということになっていますが、
持ち分のない医療法人については最高裁判例はありません。
この点について、松本哲泓(弁護士・元大阪高裁部総括判事)著「離婚に伴う財産分与〜裁判官の視点に見る分与の実務」新日本法規 初版 97頁は、
「持ち分のない医療法人については財産分与の対象とならない」
としています。
しかし、例えば離婚の直前まで1億円持っていて、離婚しそうだから医療法人を設立してしまえば5000万円分与しなくて良くなるということを裁判所は許さ無いでしょう。
かといって、持分が存在しないという医療法上の規定を無視して財産分与の対象と評価することも難しいでしょう。
そこで、裁判所としては、
別居の前日に、多額の預金を持ち分のない医療法人に出資したというような、持ち分のない医療法人制度を利用して財産分与を潜脱しようとしたと評価できる特別の事情がある場合においては、財産分与において裁判所が考慮する「一切の事情」に含めて実質的に考慮することは許される。しかし、考慮の度合いは、持ち分のある医療法人について評価される基準以下とされるべきである
とすると予想しています。
こうすることによって、医療法との衝突を避けながら具体的な公平性を維持しようとするのではないでしょうか。また、財産分与が訴訟手続きではなく非訟手続きであることとのバランスからも良い解釈かと思います。
持ち分のない医療法人の財産分与をめぐる攻防としては
・医師側は、将来の離婚時のリスク、離婚によって医業経営が危機に陥る(個人事業だと評価が純資産そのままである)を排除(一定の評価損を受けられる)するのであれば、早めに医療法人化しておく。また、MS法人を利用した医師個人以外への資産分散も考えておく
・医師の配偶者側についても、様々な要素の検討が必要です(現在進行中の事件にがあるので手の内を明かしたくないのでこれ以上は書きません。)
最後に、宣伝になりますが、当事務所は医療法人をめぐる財産分与で多くの経験を有しているので、医師側も、医師の配偶者側も、ご相談されることをお勧めします。
2020年3月9日追記 扶養的財産分与として考慮する可能性もありです。