住まいの不安への対応
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おひとりさまの老後や相続のご相談をお受けしていると、家の問題が必ず出てきます。
賃貸で借りられている方であれば、高齢の単身世帯であることから現在の家の更新について懸念を示されたという話を聞きます。
では、別の賃貸物件を探そうか、としても高齢であることを理由に断られることがあるそうです。
持ち家なら安心かというと、ご自身が亡くなられた後の家について、相続してくれる人がおらず空き家になってしまう不安を口にされます。
遠方であっても相続人がいれば、その人とお話しして今後をあらかじめ考えることも出来ますが、兄弟もいない一人っ子で相続人不存在の場合もあります。
生前のうちに売却することを考えると、今度はその後、亡くなるまでの住まいについて賃貸となるため、先ほどと同じ問題が出てきます。
リバースモーゲージの様な仕組みもありますが、マンションが対象外となるケースが見られたり、想定よりも長生きした場合に家がなくなり、借金が残るということもあります。
貸主や不動産会社にとって高齢者単身世帯に賃貸するリスクも分かります。
特に、誰にも気づかれず室内でなくなる「孤立死」の場合、部屋の消臭や消毒といった特殊清掃やリフォームが必要になるケースがあります。
また生前であっても認知症などを原因としてゴミ屋敷になったりすることもあります。
新聞で紹介された「R65不動産」の山本遼さんは65歳以上の部屋探しを専門で行う不動産会社を創られました。
その中で明らかになったのは、貸主の一定数は高齢者に貸しても良いと考えていることと、不動産会社が貸主に確認する前から忖度して断っているケースがあることです。
これまでは、若年層ほど人口が多く、学生時代のワンルームから会社の社宅、結婚して賃貸の大部屋、そして一戸建てと住宅を変更していく層が多くいました。
現在は若年層が減少し、高齢者層が増加しているのですから、規模が大きい方を狙って市場を構成するのは自然なことです。
貸主や不動産会社の不安を払拭するために、不動産取引に関する自然死の指針が作られたりして、告知の必要性などの基準がハッキリとされました。
また孤立死を防ぐために一日一回や週一回、高齢者の安否確認の連絡を取り合う団体が出来たり、電気の使用量の増減がない場合に緊急事態の可能性を考えて連絡が行く仕組みなどが出来ています。
どれも完璧ではありませんが、時代の動きに応じて対応策が少しずつ出来ています。
高齢者だけでなく40代以上の単身女性も住宅による問題に直面しています。
生活費に占める住居費の割合が大きいため、生活費に余裕がなくなっているという調査結果が出ています。
また高齢者と同様に孤立死を不安視され身元引受人を求められるケースがあるそうです。
こうした問題解決のために、記事の各識者は、住宅政策を社会保障の一環として位置づけろ、といっています。
ただ地方公共団体はかつての住宅政策から撤退しているところがほとんどです。
公営住宅造りは大きな投資が必要で、維持費も大きくかかります。
また、生活を守るための社会保障であるということは、住宅からの収入は大きくは見込めないということになります。
それでなくとも国全体の大きな方向性としては、地方公共団体が持つ公共施設を少なくする方向で進んでいる中で、新たな住宅建築に舵が切られることはないでしょう。
一方で、民間の住宅メーカーは一戸建てにせよ、集合住宅にせよ旺盛な建築が続いています。
建築系の方に話を聞くと、リフォームでは大きな利益が上がらないのでどうしても新築中心になってしまう、との声はあります。
ただ資金を持つ一般の方、新しく建てたい住宅メーカー、その住宅を利用した社会保障政策が作りたい地方公共団体で上手い仕組みが作れないものだろうか、と感じます。
一朝一夕には行かないでしょうが、国や地方公共団体だけが生活を下支えすることはもはや難しいので、社会の動きと合わせた中で何とかならないか、と感じます。